サミット 服部社長インタビュー(前編)/スーパー激戦時代に「競争軸を変えていく」
2025年12月24日 11:00 / 経営
まいばすけっと、トライアル、ヤオコー、そしてバロー……。首都圏でスーパーの陣取り合戦が激化している。この激しい競争下で、サミットはどのように生き残っていくのか。12月の合同記者会見で、好調の要因やサミットが目指す姿などについて服部哲也社長が語った。主なやり取りを2回に分けて紹介する。
──サミットは都内に101店舗あるが、まいばすけっとの拡大やトライアルゴーの出店など低価格を武器とする小商圏勢力が出てきています。また、ヤオコーが23区に、バローが神奈川に出店するなどサミットの商圏に新しい企業が進出する中でどのように対応していきますか
服部 どんどん首都圏に来られるので困ったなというところではあるが、当社としては競争軸を変えていきたいと考えている。
今までは、価格・品ぞろえ・サービスといったお客様が来店した時に目に入る部分でスーパーマーケット業界は競争してきた。そこは当然おろそかにせず、そこに加えて目に見えないところでお客様を惹きつけるものを磨くことで、少し違う競走軸ができないかと考えてずっとやっている。
例えば「向き合う接客」に変えた結果、お客様とのアイコンタクトが進み「すごく感じがよくなった」と言ってもらえている。そういうところに来店動機が生まれている。
店長たちも数年前までは「そんなことをやって効果があるのか」と懐疑的だったが、今は自分たちの武器の一つになってきている。そこを磨きながら、価格・品ぞろえ・サービスといった点もできる範囲で対応し、勝ち負けよりも「サミットが一番好き」と言われるようなところに持っていければ、結果的に生き残っていけるのではないか。
──既存店客数が伸びている要因は
服部 お客様が競合店に行く回数をある程度減らして、うちに来ていただいているのかなと思う。そういうことが起きてる理由は、先ほどお伝えしたような競争軸を少し変える取り組みが来店動機につながっている。
青果、鮮魚、精肉など物を売る部門はお客様に満足いただけるように取り組んでいるが、そうした売り場を作って売る部門ではないチェックスタンド(レジ)部門も、お客様がもっとサミットを好きになるようなことができないか、一生懸命考えてくれている。
店内放送やコトポップの掲示、さらには接客時に目を見て「またお待ちお待ちしております」と送り出しをすることなどによって、お客様と会話が生まれ、「あなたがいるから来るのよね」と言っていただけるケースが増えている。
これは本当に実感としてあり、そうした点が客数の維持につながっているのではないか。
──今期、売上総利益(粗利)が改善しているが具体的に行った取り組みは
服部 商品設計は売上総利益率を上げるためというよりも、原材料や資材がどんどん上がっているので、やらざるを得なくて見直しをしている。
見直しをする際に、売価の付け方も「サンキュッパ(398円)」でないと売れないと思っていたのが、仕様を変えることで「ヨンキュッパ(498円)」でも売れる。そうしたことが結果的に売上総利益率の上昇につながっている。
ほかには、DX推進室が作ったAI値引きの仕組みは、実際に作業的な負荷が減り、数字の改善にもつながっている。
──ヤオコーやバローなどがM&Aによってグループを拡大している
服部 当社の親会社である住友商事はすでにマミーマートにも出資をしており、サミット単体で今後もやっていくという意思ではないと理解している。(M&Aに関する)いろいろな情報があった際には内々に相談されることもある。
ブルーゾーンホールディングスのやり方、つまり従来のようにヤオコーの下にぶら下がる形ではなく、各事業会社が横並びになるやり方であれば、サミット独特の社風や組織風土、企業文化をうまく生かせるような気もする。
──来期以降の新店と改装の予定は
服部 来期は新店は3店舗を予定している。ただ、27年度、28年度のほうが決まっている物件数は多い。改装は来期の予算づくりの中で各種コスト上昇を踏まえ、どこまでやるかを決めていく。
ここ2年ぐらいは年度末が近づくと駆け込みで改装をしていたが、年度の初めからスケジュールを組んで進めるやり方に変えている。年度初めに行うことで、投資回収がその年度内で完了することもある。
(後編につづく)
取材・執筆 比木暁
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