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キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(商品開発編)

2018年06月20日 17:30 / 流通最前線トレンド&マーケティング

■リスクを取って、商品名に会社名を付した「本麒麟」

<本麒麟の商品パッケージ>
本麒麟の商品パッケージ
出典:キリンビールプレスリリース

――なぜ、商品名に「本麒麟」を採用したのですか。

木村 これもお客様視点で考えました。例えば、メーカー視点で見ると、もしこの商品が売れなかった時に、会社名を冠しているのでダメージも大きいよねといった考えもあります。

今回、お客様の調査の中で出てきたのが、新ジャンルだから、メーカーも本腰を入れていないんじゃないのという潜在的なものがあるんですね。どこかやっぱり、手を抜いているんじゃないの、みたいな、ということを思うお客様もいらっしゃいます。

だからこそ、新ジャンルだから、メーカーは本気を入れていないのかというのを、埋めなきゃいけない。お客様はキリンに対するブランドイメージを持っていただいているので、あえて会社名を使いました。もちろん、これは、会社として、お客様の視点からは必要なことだということを、認めてもらって、という話ですね。

――「本麒麟」に決定するまでにどんな経緯がありましたか。

木村 先ほど、申し上げたように経営としては、リスクも考えなければいけないわけですよね。もちろん、リスクも加味した上で、ただ、お客さんにキリンの新ジャンルの本気度を認めてもらうには、この商品名が必要だというジャッジをしてもらった。

この商品名になるまでは、なんでこんなのが出てきたのかというのも含めて、無数の候補がありました。お客さんにとって、この商品のブランドとして相応しい名前は何か、リスクだけではなく、本当にお客様のことを考えて、この商品名を決定しています。

――商品のネーミングはいつ決定するのですか。

木村 商品のネーミングは、商品開発と並行しながら決定します。コンセプトの段階から、ネーミングは並行して考えていきます。子どもの名前と一緒で、いざ、商品が完成した時にやっぱりこうだよね、と決める面もあります。

本みりんとかにもあるように、アルコールと「本」の親和性って結構、高いのかなという話をしていて、本質を突くということを含めて、この「本」を企業名の頭につけようと決定しました。

「本麒麟」の本は、本物、本質、本格という意味です。お客さんからは、キリンの本気という言葉もいただいています。麒麟という漢字については、誰も読めないのではという声もあったのですが、調査すると普通に読んでもらっています。

――キリンのラベルをつけたのは、どんな意味があるのですか。

木村 今回、このラベルというのは、聖獣というキリンの代表的なシンボルと合わせて、ビンビールを彷彿とさせるような本格感みたいなものを表現しました。本質、本格感を伝える上で、ビンビールを彷彿させるデザインというのも面白いので採用しました。

<コンビニの酒類売場(イメージカット)>
コンビニの酒類売場(イメージカット)

――販売チャネルで特徴的な動きはありますか。

木村 いろんな販売チャネルで扱われています。エリア別の構成を見ても、西日本に比べると東日本のほうが比較的強いのかなというところがありますが、基本的に全国で平均して愛されています。都市や地方でも売れ行きに差はありません。

――男女比率はどうですか。

木村 もちろん、男性というのもありますけど、女性の方も広く、飲まれています。女性の方に聞いてみると、シンプルなデザインというのが、女性の方から評価をいただいている。

■酒税法改正を見据えロングランブランドを目指す

――酒税法改正により将来は、ビール、発泡酒、新ジャンルの税率が縮まりますが、なぜ、いま新ジャンルで大型新商品を開発したのですか。

木村 確かに、酒税法改正によりビール、発泡酒、新ジャンルの税率が縮まりますので、新ジャンルというカテゴリーは当然、シュリンクすると思っています。ただ、価格差が縮小したとしても、やっぱり少しでも安く、少しでもいいものを飲みたいというニーズは絶対に残ると思っています。そういう時こそ、やっぱり本格的なものや本質的なものが残ると思っていますので、そういうことも含めて「本麒麟」は開発しています。

タイミングの見方によっては、なんでこの時期に新ジャンルを本気でやっていくのと思われるかもしれませんが、我々としては、酒税法改正により価格差が縮小しても、新ジャンル、いわゆる低価格のビールへのニーズは残り続けると思っています。ロングランの商品として考えています。

おそらく税制改正で価格差が縮小すると、残るブランドというのは少なくなっていくはずなので、それまでにきちんとしたブランドを作る。今後、3年でブランドを育成していくことは大切なことだと思っています。

※酒税法は改正が予定されており、2026年10月まで、段階的にビール、発泡酒、新ジャンルの税率が統一される見込みだ。現在は、350ml缶1本あたり、ビール77円、発泡酒47円、新ジャンル28円の税率が適用されている。2020年10月には、ビール70円、発泡酒47円、新ジャンル38円に、2023年10月にはビール63円、発泡酒47円、新ジャンル47円となる。2026年10月には、ビール、発泡酒、新ジャンルとも54円の税率が適用され、税率が一本化される計画だ。

■プロフィール
木村正一
マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 本麒麟ブランドマネージャー
2004年4月:キリンビール入社
2004年10月:近畿圏統括本部京滋支社京都支店(エリア営業)
2010年10月:広域販売推進統括本部 広域販売推進第1支社営業1部(外食チェーン本部担当)
2016年10月:マーケティング部
2017年10月:マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 本麒麟ブランドマネージャー

※ビール・発泡酒・新ジャンルの定義
出典:『日本のビール・発泡酒・新ジャンルと税2016年』ビール酒造組合・発泡酒の税制を考える会

ビールは、麦芽・ホップ及び水を原料として発酵させたもの。麦芽・ホップ・水及び麦その他政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の十分の五を超えないものに限る

発泡酒は、麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有するもの。麦芽以外の原料の使用料が3分の1以上なら発泡酒となる。

新ジャンルは、その他の醸造酒(発泡性)は、糖類・ホップ・水及び大豆・えんどう・とうもろこし等を原料として発酵させたもの。リキュール(発泡性)は、麦芽比率50%未満の発泡酒にスピリッツを加えたものでエキス分が2%以上のもの。

■本麒麟
http://www.kirin.co.jp/products/beer/honkirin/

■キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(マーケティング編)
https://www.ryutsuu.biz/column/k061540.html

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