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キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(マーケティング編)

キリンビールが3月13日から発売した新ジャンル「本麒麟」が好調だ。発売から約3カ月で年間目標の5割を超える1億本(350ml缶換算)を突破した。一方で、消費者の低価格志向から、アルコール度数が9%程度のストロング系チューハイが市場シェアを伸ばし、ビール、発泡酒、新ジャンルで構成するビール類はシェアを落としてきた。

若者のビール離れも言われる中で、なぜ「本麒麟」が売れているのか。キリンビールの新ジャンル史上2番目の販売スピードで、「キリン のどごし<生>」以来の13年ぶりの大型新商品となった「本麒麟」開発の経緯やマーケティング手法について、マーケティング本部マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当の木村正一ブランドマネージャーに聞いた。

<キリンビール木村正一マネージャー>
キリンビール木村正一マネージャー

■妥協して飲む「新ジャンル」から脱却

――「本麒麟」開発の経緯を教えてください。

木村 まず、キリンビールの新ジャンルへの取り組みが、No.1ブランドの「のどごし<生>」に背負わせすぎていた面があります。新ジャンルユーザーの中でもいろんなニーズが多様化している中で、「のどごし<生>」で全部カバーしようとしましたが、もともとニーズが全て違うので、ひとつのブランドでは無理がある。ニーズをしっかりと棲み分ければ、カニバリは防げるという公算があり、自信をもって発売したのが、「本麒麟」ですね。

※「のどごし<生>」は2017年にブランド合計で4110万ケース(1ケース633ml×20本)換算を販売したキリンビールのNo.1ブランド。

――どんなニーズがあると想定したのですか

木村 ビールユーザーの声を聴くと、週末はやっぱりビールを飲みたい。とはいうものの、このご時世なので、「ビールは経済的に毎日、飲むわけにはいかないね。妥協して新ジャンルを選んでいる。仕方なく選んでいるんですよ」というのがインタビューで分かりました。「安いからしょうがないよね」と思われるのは、企業努力不足で、比較的安い価格帯でも、満足していただけるものを、開発するのが僕らの務めだと思いました。

そこで、妥協して飲んでいるのを是正し、新ジャンルの中においしい商品を出すことによって、お客様のニーズを埋められると考えました。お客さんの日常を踏まえて、デイリーに楽しんでいただけるものを出しました。

――消費のトレンドをどうみていますか

木村 基本的な消費全般のトレンドとしては、低価格×高品質というのが全般的なトレンドです。例えば、当社では「のどごしストロング」(アルコール度数7%)という低価格×高品質の商品を出している。高品質に求めるのがストロングの場合はアルコール度数、いわゆる酔いの部分です。

「本麒麟」の場合は、新ジャンルユーザーが最も求めているニーズを、ビールらしい味覚だと捉え、高品質=ビールらしい味覚と考えました。お客様を起点に考え、ビールらしさを突き詰めた結果、「本麒麟」のコンセプトである「力強いコクと飲みごたえ」にたどり着きました。

<スーパーのチューハイ売場>
スーパーのチューハイ売場

――酔いを求めるユーザーもいる中で、ストロング系チューハイが好調です。チューハイユーザーを取り込む狙いはありましたか。

木村 チューハイユーザーではなく、大きくビール類というカテゴリーの中で、お客様のニーズを探しました。「本麒麟」は、アルコール度数をやや高めの6%に設定しているんですけど、これはRTDで高アルコール商品に勢いがあるから、決めたわけではない。コクと飲みごたえという特徴を作る上で、適正なアルコール度数は何度かを検証して決めました。高アルコールニーズを体現するから6%を選択したわけではありません。

※RTDとは、Ready to drinkの略語で、栓を開けてそのまま飲めるお酒の意味。缶チューハイのほか、ビン入りのカクテルなどを指す。

■ビールらしさを「ホップ」で訴求

――本格的な味わいという点で、いま好調のクラフトビールを意識しましたか。

木村 クラフトビールを特に意識したことはありません。ただ、別に狙っていたわけではないんですけど、「キリンラガービール」からヒントを得たという点があります。「本麒麟」は、新ジャンルなので、麦芽使用比率50%未満という制限がある。

ビール類では、商品で麦を訴求することが多かったんですけど、「果たしてビールの良さって麦だけなの」と考えた。麦ももちろん大事だけど、ホップもすごく重要な要素だよねというところで、今回、「キリンラガービール」と同じ、ドイツ産ヘルスブルッカーホップを使用しました。ヘルスブルッカーホップは、希少なものではありませんが、ドイツ産の正統派のホップです。

※現在、新ジャンルの主流規格は、酒税法上「リキュール(発泡性)」となっている。リキュール(発泡性)は、麦芽比率50%未満の発泡酒にスピリッツを加えたものでエキス分が2%以上のものとなっている。

――コンセプトの一つである「力強いコク」は、どう実現したのですか。

木村 長期低温熟成という製法を採用しました。低温熟成というのは、昔からキリンビールにある雑味を取る伝統的な製法で、それを長期化させることでコクが分かりやすくなります。ただ、自社都合でいうと、長期化することによって、貯蔵工程が増えるので、生産効率は落ちるんですね。でも、商品開発過程でのお客様の声で、長期低温熟成を採用した商品は、いいものの味がするとか、いいものの価値が伝わるという声がありました。お客様にとって価値があるものならば、この製法を採用したいと、生産の方にも理解してもらいました。

<スーパーのビール類売場>
スーパーのビール類売場

――2004年に日本初の新ジャンル商品「サッポロドラフトワン」が発売されてから、新ジャンルの歴史は13年を超えました。すでに、本格感のある商品も出ていますが、どうやって本格感を訴求していったのですか。

木村 開発では、ど真ん中の、ビールらしい、おいしいものを作ろうと意識しました。今回、商品開発の中、新規性とか、奇抜性みたいなところは追わないと決めました。新規性や奇抜性は、分かりやすい独自性につながりますが、しっかり本質を貫こうとした。

多分、営業からすると「本麒麟」は、売りづらい商品なんですよ。僕も昔、営業だったんですけど、売りづらいと思います。ど真ん中のコンセプトなんで、商談で、この商品は何が違うのと言われた時に、「おいしい」ですとしか言えない。でも、しっかり本質を貫こうと、主要メンバーの中で話をした。商品の特徴として、絶対的なおいしさを打ち出しました。

――商談では、どのように商品を訴求していったのですか

木村 商談していて流通企業さんから教えていただいたことがあります。我々は、商品の特徴を長く説明してしまうんですけど、もっとシンプルに、やってくれと言われました。「お客さんに商品の価値を伝える際は、店舗スタッフが説明するのに、いまのあなたの説明ができると思う?長いでしょう」と言われました。

それで、ポイントを3つに絞って、「本麒麟」は、なにが違うのか資料作りを工夫しました。「ドイツ産ヘルスブルッカーホップによる爽やかで上質な苦み」「長期低温熟成による雑味が取れた調和のある味わい」「アルコール分6%による適度な飲みごたえ」の3つを打ち出しました。

営業部隊には、商談をする時にバイヤーさんにもきちんと飲んでもらうことをお願いしました。商談の中で、飲んでいただくってハードルが高い面もある。でも、商談では、どんどん試飲をしてもらって、非常に高い採用率でスタートできたのが、一番、大きな成功のポイントだと思います。そのために、ブランドチームも本部で商品説明会を実施したり、必要であれば、ブランド開発チームが商談に同行することもありました。

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