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有隣堂/松信副社長が語る「誠品生活日本橋」運営への挑戦

2019年09月27日 16:30 / 流通最前線トップインタビュー

1909年創業の有隣堂は、書籍・文具販売から、2018年に居酒屋、理容店、アパレルショップなどを複合した店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」を東京ミッドタウン日比谷にオープンするなど、書店の形に止まらない新しい取り組みを続けている。9月27日からコレド室町テラスで、110年の歴史で初めてライセンシーとして「誠品生活日本橋」運営に挑む、松信健太郎副社長に新規事業の展望と今後の展開を聞いた。

※インタビューは9月24日、「コレド室町テラス」の関係者向け内覧会で実施した。

<松信健太郎副社長>
松信健太郎副社長

――「誠品生活日本橋」はどのような店舗なのでしょうか。

松信 「誠品生活日本橋」は、「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」がコンセプトです。「誠品書店(書籍)」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の4ゾーンで構成されています。台湾で1989年創業された「誠品書店」は、台湾・中国・香港で49店舗を展開、この日本橋の店で、50店目になります。米国CNNの「世界で最もクールな百貨店14」に選ばれるなど、独自の観点で、読書文化を形成しています。書店だけでなく、イベント、ギャラリー、映画館など多種多様な文化コンテンツを提供する場を運営しています。

<誠品生活・創業者呉清友氏関連の書籍>
誠品生活・創業者呉清友氏の関連の書籍

――「誠品生活」運営開始の理由を教えてください。

松信 書籍が売れない時代となり、書店運営だけでは、経営環境が厳しくなっています。自社だけで、従来の発想での事業展開に限界を感じていました。その中で、「誠品生活」とのコラボレーションの話があり、その経営理念に感銘を受けました。本を売るだけでなく、文化の中での書籍の重要性、書籍を通じて、国家、地域を良くしていくという考え方も一致し、今回の挑戦となりました。(三井不動産と誠品生活は、日本における誠品生活事業のライセンスを保有する合弁会社誠品生活MFを設立。有隣堂がライセンシーとして運営する)

<日本選書と台湾選書が並ぶ>
日本選書と台湾選書が並ぶ

――「誠品生活日本橋」と今までの書店運営の違いとは。

松信 書籍の選定から違います。日本の書店は、新刊の発売時期に左右される売り方になっていますが、「誠品生活」の中で書籍を扱う「誠品書店」では、新刊、既刊を問わず、今紹介すべき本をしっかり提案するというやり方をとっています。目利きのスタッフが選んでおり、日本の書店で店の顔として並ぶラインアップとはだいぶ違います。日本選書と台湾選書が並ぶのはここだけですし、オリジナリティの高い本の見せ方をしています。

<独自の視点で書籍を選定>
独自の視点で書籍を選定

――書籍は何人で選定していますか。

松信 有隣堂では書籍の選定スタッフが4人で、台湾の「誠品生活」からは2~3人で選んでいます。本を紹介するだけでなく、本に加えてちょっとでも新しい文化を提案しよう、紹介しようという気持ちがとても強いです。また、物販・レストランもありますので、台湾から常時約10人が応援にきています。展示物の設営一つとっても、台湾のスタッフはそれぞれの担当部署においてプロ意識が高く、学ぶことが多いです。

<初の大規模の物販>
初の大規模の物販

――大規模の物販・レストラン運営は初めてですね。

松信 当社でこれだけの規模(店舗面積約2800m2)での取り組みは、初めてです。私の直轄プロジェクトとして、新規に3人雇用し、アルバイトなども新たに入ってもらっています。書籍、雑貨、食物販がそろい、(台湾を代表する建築家クリス・ヤオ氏が手掛けた)内装も、こだわっています。お客様に楽しんでいただきたいですね。

<食物販も充実>
食物販も充実

――「誠品生活」を既存店に導入しますか。

松信 まだこれからの店なのではっきりとした予定はないですが、誠品生活で好評だったイベントなどは、今後、既存店と連携したいです。東京ミッドタウン日比谷で展開している「HIBIYA CENTRAL MARKET」で人気の物販などは、既存店に取り入れています。

<こだわりの内装>
こだわりの内装

――他社とのコラボレーションで社内の意識は変わりましたか。

松信 書店マーケットの縮小について、より危機意識が高まりました。一方、日本で今ある人気のパッケージを取り入れるのでなく、さらにオリジナリティの高い「誠品生活」を運営することにより、書店の未来の可能性も感じられているようです。

――自分たちはこのままではいけない、危機感があると。

松信 書店マーケットは縮小を続けている。でも、どう変わっていいかわからないというのが正直ありました。それでも、経営理念に反しないものなら、どんどんやってみようと思い、クリエイティブディレクーの南貴之さんの力を借り、本を売るだけにこだわらず、理容店や雑貨などを扱う「HIBIYA CENTRAL MARKET」にチャレンジしました。現状自分達だけでは変革が厳しいですが、外部の手も借りて挑みます。今回の「誠品生活日本橋」の運営では、さらに有隣堂は変わるという意気込みを発信していきたいです。

<多種多様な文化コンテンツを提供>
多種多様な文化コンテンツを共有する場

――「誠品生活」のどのような点に一番感銘を受けましたか。

松信 組織としてのブランドを守り抜く力、スケジュール通りに仕事をやり抜く力です。彼ら従業員の力があって、あの台湾での繁栄なんだなと思いました。良い意味でプライドがあり、ブランドを守ることに対して、一切妥協がない。書籍、雑貨といったMD編集だけでなく、彼らのマネジメント力を経営者として尊敬しています。

<中国茶を使ったカクテルも提供>
中国茶を使ったカクテルも提供

■松信 健太郎氏略歴
2007年有隣堂入社。2009年店売事業部長、2012年店売事業本部長、2015年専務、2019年9月より現職。

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