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プロント/おしゃれカフェとキッサカバ「二面性」でブランド大刷新

2021年04月15日 15:20 / 流通最前線トレンド&マーケティング

昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けた外食業界。中でも、ビジネスパーソン向けのランチ、夜のバー・居酒屋需要中心に運営してきた業態は軒並み業績を落としている。まさにランチ、バー・居酒屋需要双方を取り込むことで成長してきたプロントコーポレーション(以下:プロント)も大きな業績の落ち込みを経験した。しかし今春、20年ぶりにブランドを刷新、巻き返しを図る。「二面性」をキーワードに驚きとおいしさでブランドを一新するプロントの挑戦について聞いた。

プロント片山氏トップ写真

コロナ禍で露呈したプロントの弱み

「コロナ禍により、プロントの業態の本質的な弱みが露呈しました。今のままではコロナ後の世界で他社と戦っていけない。当社の抱える課題の根本的解決策として、リブランディングに踏み切りました」と片山義一取締役 プロントカンパニー長 ブランド戦略部長は言い切る。

プロントコーポレーションは1988年、サントリーとUCCの共同出資で設立。イタリアのバールをモデルに、昼はカフェ、夜はバー利用と1日中利用できる店舗として、駅近・ビジネス街に展開してきた。新型コロナウイルス感染症の影響も昼、夜と別シーンでの利用方法があるため、売上の落ち込みもそこまで大きくないと思われたが、「昨年は他の外食企業同様、落ち込みと回復の繰り返しでした。特に夜(バー利用)の落ち込みがひどかったです。プロントはちょい飲み利用など、少人数で騒がず飲めるので、競合より客足の戻りが早いと思っていました。しかし、ふたを開けると客数が全然回復せず、コロナ禍によって業態、ビジネスモデルの弱さが露呈しました。今回のリブランディングは脱コロナの戦略だけでなく、業態の抱える根本的な問題を解決するためのものです」と片山氏は話す。

2020年取締役に就任した片山氏は、サントリー酒類入社後、外食企業への営業を通じて、多数の業態開発に従事してきた。2017年に社内ベンチャーで渡米し、サンフランシスコにて抹茶カフェSTONEMILL MATCHAを開業。2018年CEOに就任し、行列のできる人気店に育てるなど長年外食産業にかかわってきた。その中で、特にカフェ業態における「ブランド力」の重要性を痛感したという。「カフェで勝つにはブランド力、デザイン性が必要というのはこの20年の流れです。今後、プロントがどこで戦っていくかというと、大前提としての利便性を追求しながら、デザイン性、つまりブランドを作っていくことが大事だということを社内で共有することから始めました。コロナ禍の中、小手先の販促や値引き、メニュー変更では、顧客は戻ってこないし、新たな客層も呼びこめない。社内でうすうすわかっていたことを、外から来た私だからこそ客観的に会社を見ることができたのではないでしょうか。プロントでは若者向けの尖った商品を出しても売れない時期が長く、新しいことをやっても売れないからやらない、という負のサイクルに陥っていました。その原因こそがブランド力であり、何を売るかよりどこが売るか、ということです」と片山氏。

消費者調査でプロントのイメージは「パスタの店」?

同社が抱えていたプロントの課題としては、ブランド力の弱さ、カフェ&バー業態を開始した時にファンになってくれたロイヤルカスタマーの存在は大きいものの、若い世代へのアプローチがないということがあった。同社の行った消費者調査では、プロントのイメージを「パスタの店」と挙げる人が多く、ランチ需要取り込みのため、15年ほど前からパスタに力を入れてきたことが裏目に出ており、カフェ&バーという業態の魅力が伝わっていなかった。この現状に危機感を抱いた同社は、2021年1月には「プロント」、「ワインの酒場。ディプント」、「その他ブランド」と業態ごとにカンパニー制を導入し、各部門においてカンパニー長が経営者として、責任を明確化する組織変更を開始。プロント業態では片山氏が、ブランド改革にナタを振るうこととなった。

片山氏は、リブランディングにあたり、驚きのある大胆な業態開発を目指した。プロントは利便性を売っている業態であり、ファストフードのように単品のフードが売りではないことに着目。テイクアウト、宅配で単品の販売数を伸ばすのではなく、既存顧客の居心地の良さとともに、新規に20~30代の顧客を取り込む、店舗をコンテンツ化する新たなブランド強化戦略に舵を切った。

<昼はおしゃれなカフェに一新>
プロント昼はおしゃれなカフェに一新

今回のリブランディングでは、従来のカフェ&バーの「二毛作」の経験を活かし、「二面性」をキーワードに、昼は20~30代の感度の高い、働く若い男女に向けたおしゃれなカフェ、夜はネオ酒場の要素を取り込んだ「キッサカバ」という全く違う業態の共存に刷新した。「昼に顧客がカフェに行くのは、食事需要はもちろんですが、そのブランドが好き、好きなブランドで休憩したいという目的があると思います。一方、夜のニーズは、食事はもちろん、お酒を飲むことを楽しみたいということでしょう。今までのプロントでは、昼と夜のニーズを分けてとらえておらず、マーケティングが弱かった。新しく20~30代を取り込む要素は昔のプロントにはなかったのです。そこで、店舗そのものがコンテンツとなる、SNSで撮りたくなる、つぶやきたくなる要素をメニュー、イメージキャラクターなどでちりばめました。かっこいいカフェ、面白い酒場はどこにでもありますが、その2つが同じ店で完結している驚きと違和感、昼と夜では店の顔が大きく変わる『千と千尋の神隠し』のような世界観を目指しました」と片山氏はいう。

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