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流通最前線/IT・デジタルの新拠点「ニトリデジタルベース」トップインタビュー

2022年07月29日 15:20 / 流通最前線トップインタビュー

なぜシステムを内製化するのか。内製化の極意とは。

――これまで、ずっとシステムを内製化していますが、なぜ外部委託しないのですか

佐藤 システムを内製化するというのは、大変なんです。全ての責任が自分ですから。作るのも大変だし、責任を持って運用していくのも大変だし。それもあって、僕は2003年から10年まで情報システム室の室長だったんですけども、その時に本当に外部にシステムを出しちゃえないかなと思ったことがあります。弱気になった時期で、このままやるのは無理じゃないかなと思っていろいろと調べたり、いろんなところと組んで検討した時期がありました。

結局、その時にやっぱり外部に出すのは無理だな、外部のソリューションじゃうちの会社は回せないなというのが分かりました。似鳥(昭雄)会長も話していますが、数年前に結構、ばく大な金額を投入したのですが、ダメでした。損失を出しつつ、いろいろやってみて、やっぱり内製でいくしかないんだっていうところに、かじを戻したのです。

――外部委託してうまく行かなかった最大の要因はなんですか。

佐藤 ひとつは、ニトリグループのビジネスモデルです。外部委託先には、まず、ニトリグループのビジネスモデルを教えてあげなきゃいけない。最上流から最下流まで一貫して自分たちでやって、バリューチェーンをつながった状態で実現できている会社って、ほとんどないんですよ。

一個一個に対しては、もしかしたら知見があるのかもしれないんですけども、これをどうつなげていって、要するにここで発生することがここに影響が起きるよな、そういう考え方が難しい。要は、ここで何かが起きる、その原因ってここにあって、だからここでこんな対策をしなきゃならない、みたいなことを、全工程を通して理解してないと、たぶんシステム設計ってできないんですよ。その全工程を一人の人間で理解しているかというと、例えば、有名な大手システムベンダーさんでも無理なんです。外部委託をやってみましたけど、彼らは歯が立たなかったですね。

<ニトリデジタルベースの事務所があるニトリ目黒通り店>
ニトリデジタルベースの事務所があるニトリ目黒通り店
――システムを内製化するメリットを教えてください。

佐藤 やっぱり、商品開発や店舗、配送といったビジネス側と一緒になってIT化を進めていけることです。どんなシステムにしたらいいのかを、発注側と受注側みたいな感じで分けて考えるのではなくて、一緒になって考えている。会社の規模が小さかった時には、要件定義※はほとんどなかったですね、もう瞬間的にユーザー(システムの発注者側)とこれ困っているからどうしよう、じゃこのシステムを作ろうよって、みたいな流れでした。だから、基幹システムを開発した時は、要件定義だとか、今でいう設計思想だとか、ほぼ時間をかけてなかった。要するに内製化のメリットの一つとしては、要件定義フェーズ、設計フェーズが、非常に圧縮されるはずなんです。例えば、外部に発注して作ってもらう時って、もうかっちりしたものを作らないと受けてもらえないのです。

※要件定義とは、システム開発などのプロジェクトを始める前の段階で、必要な機能や要求をわかりやすくまとめる作業のこと。いつまでに、どんな機能を完成させるのか、そのために人は何人必要で、何時間かかるのかなどの基礎となる概念。

でも、システムを社内で内製化すると、別に要件定義が甘くても、途中で方向転換が発生しても、若干お金は多めにかかるけど、別にそれで契約を結んでやっているわけではないので方向転換が柔軟にできます。1年もかかるような大きなプロジェクトだったら、スタートした時の状態と1年後って、会社のビジネスががらっと変わっていることもあるので、途中その変化に合わせて軌道修正しながらやっていくことができる。でも、外部に発注するとそれは絶対できない。かっこよく言うと自由自在に変えながら、ビジネスを回して、課題をつぶしながらシステムを変えていくことができるというのが、社内で内製しているアドバンテージだと思っています。

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