トップインタビュー/岩崎社長に聞く30年度売上3000億円目指すマミーマートの挑戦

2024年09月27日 10:00 / 流通最前線トップインタビュー

マミーマートは2023年9月期に既存店の大型改装を実施し、新フォーマット「生鮮市場TOP」「マミープラス」を強化している。現在、収益力拡大に向けた投資フェーズを迎えており、関東を中心に新フォーマット2業態を拡大する。岩崎裕文社長に、2030年に売上3000億円を目指すマミーマートの挑戦を聞いた。

足元商圏は「マミープラス」、広域商圏は「生鮮市場TOP」

――主要3業態マミーマート、生鮮市場TOP、マミープラスの特徴をお聞かせください

岩崎 わかりやすく言うと、マミーマートという元々のオリジナルのお店に関しては、俗に言う普通のスーパーです。そこから派生した2つの新業態はエッジを効かせようと考えました。

生鮮市場TOPは生鮮強化型で、比較的ディスカウントに近いスーパーです。マミープラスは、全体的に商品価格を安くしてローコストオペレーションにするという形です。マミーマートというスタンダードに対し、生鮮側を強くした生鮮市場TOPと、ディスカウント型のマミープラスの2つに分けています。

<生鮮強化とディスカウントに派生>

――業態の住み分けはどのように考えていますか

岩崎 生鮮市場TOPはファミリー層向けで、比較的、量目を大きくした商品開発、要は大パックみたいなものが多いです。毎日来てもらうというよりは週に1回来ていただいて、ある程度しっかり買い物してもらうような構成にしています。ある程度、商圏が広く取れるような幹線道路沿いであったり、駐車場がしっかりとある、アクセスの良い立地が生鮮市場TOPに適していると考えています。

一方で、マミーマート、マミープラスというのは、量目的にはそんなに大きくないので、足元にお客様がいるところに出店しています。

特に「プラス」は非常に値段を安くしていますので、出店先の想定は都内ですが、駐車場がなくても足元にお客様が徒歩・自転車で来てくれるような場所があれば出店できる。価格の優位性を持ってお客様のシェアを上げていくことで、どうにか採算ラインには乗ってくるかな、というような感覚でいます。

郊外でマミープラスをやっても上手くいくのではないかという気もしますし、まだこれから色んなことを試しながら考えていきたいと思っています。

総菜のオリジナル商品が人気

<国産豚肉の粗びき肉焼売(6個)>

――総菜が人気ですね。その工夫は

岩崎 スーパーだけではなく、百貨店であったり、外食であったり、そういったところの中で商品を調査した上で開発は結構していますね。ちょっとひねったような商品が多くて。

コロッケとかトンカツなどの商品もありますが、例えば、シューマイでも普通のものより一回り大きくして、中に「くわい」(埼玉などを産地とする水生植物)を入れて食感を良くしたりだとか、少し変わったような、オリジナリティーを出す工夫は常にしていますね。結局、ただのギョーザだけで勝負をしようとすると、違いはそこまで分かりづらいと思います。食べて楽しいかが大切です。

<彩裕フーズ第一工場>

総菜の6割、7割ぐらいは彩裕フーズ(グループ会社)から出している商品です。今となっては皆さん、総菜工場を持ってはいますけど、うちは30年以上前からやっています。昔からやっていたことで、自前で素材から作るとなると、味のオリジナリティーは出しやすい。あと、自分たちがこういうもの作りたいというものはそのままできる。揚げ物・焼き物は、店内で仕上げています。

――生鮮市場TOPの品ぞろえが魅力的です。特に売れているものはありますか

岩崎 生鮮市場TOPは「料理好きの人が週1回通いたくなる店」というコンセプトで、ある程度豊富な品ぞろえにしていますが、実際に売れているものを見ると比較的調理のしやすい養殖魚や味付け肉が多いです。お客様の大半には、そこまで料理に時間をかけずにフライパンですぐ調理できるような即食商品が売れています。普通に世の中で売れているものが一番人気ですね。

ただ、中にはブロック肉を使って煮込みメニューを作る人も当然いますから、月に何回か手の込んだ料理をする人の需要にも耐えうる売場作りをしています。

<牛肩ロースバーベキューブロック>

――生鮮市場TOPのラインアップが充実している理由は

岩崎 生鮮市場TOPは、3年前までに出来た店には、鮮魚と精肉に関してテナントを入れていました。青果と総菜だけを自前でやって、例えば、角上魚類さん、肉の大久保さんが入っている店もあります。専門店だと、ある程度品種・アイテム数を増やす売り方があって、そこが弊社の中でも比較的売れている店になります。

その事例を見た上で、料理好きな人が週1回来てくれる広域商圏型店舗に業態を刷新するときに、肉においても、ただ単に薄切りの肉、切り落としの肉が置いてあって安いというだけだと、今のコンセプトには合わない。やはりブロック肉というのは、料理をする人たちにとっても、非常に料理のしがいのある商材だと思います。冷凍食材の売場も広げました。

また、「牛1頭買い」や和牛の「内臓1頭買い」をやると、必然的にいろんな部位を売ることになります。買い手の人からしてみても「ああ、こんなの食べたことないから食べてみたい」という購買意欲が湧くだろうなという狙いもありますね。他社がやっていないことを導入することで、そういった物に興味のある人がうちに来て下さると考えています。

このほか、カットフルーツのスイカやパインは、うちの売り方を見ていただいたら分かると思うのですが、ちょっと量目を多くしてあります。ボリューム感を出すこともお店の特徴になっています。ですが、中にはご老人や小食の方など、ここでは買えないという人もいるとは思います。

<旗艦店「コーナン京葉船橋インター店」>

――8月10日に旗艦店をオープンしましたね

岩崎 今回、確かにフラッグシップ店という形で出店していますが、大きな意味ですごく変わったところは、正直言うとそこまでないです。ただ新たなお店であって、基本は新しいことを急にやるなと言っています。今回、これまでそんなに扱っていなかったラム肉の売場を6尺ほど設けており、新たな売場を作ったりはしました。

なるべく既存店でやっていることを少しずつ入れているという感じですね。今後オープンする新店でも基本は同様です。

EDLP施策で顧客を確保

――低価格品も充実していますね。EDLP(エブリデイ・ロープライス)を重視する理由は

岩崎 お客様がスーパーを選ぶ理由は大きく3つしかありません。1つはアクセス面。車が停めやすい駐車場だったり、通いやすさなどですね。あとは価格と品質。この3つが一番大きい。それ以外の店内の明るさ、雰囲気の良さなどの影響は比較的小さいです。そのため、まずはこの3つをしっかりさせています。

毎日の売上をなるべく平準化させることがすごく大事で、オペレーションが乱れる要因は特売が一番大きいと思います。特売の日替わり品を入れる場合、前日から特売日の朝までに一生懸命、売場を変更することになりますが、EDLPにするとその必要がなくなる。売れた分だけ品出しはしますが、売場変更を極力しなくて済む。発注が楽になりますし、オペレーションもある程度予定が組みやすくなる。

特売でお客様を呼んでいたりすると、特売日に雨がどんと降った場合に、翌日には違う企業の特売に顧客が流れてしまいます。平準化することで、発注の乱れも少なくなる。天気によって売れ行きは変わりますが、いつも安く売り続けることで、大雨の後も、お客様がまた帰ってきてくれます。

――販促はどのように取り組んでいますか

岩崎 そんなに大きく効果的な販促にはなりませんが、最近はSNSを地道にやっていますね。従来型のチラシであったり、ポイント施策は抑える方針です。ネットで見ている人が圧倒的に多くなって、新聞を買って見ている人が本当に少なくなっています。全部がネットで、というわけにはいかないためチラシも出しますが、うちのチラシはどの業態でも週に1回です。

<販促にインスタグラム活用>

生鮮市場TOPはインスタグラムをやっています。そこで新しい商材だとか、総菜の新商品も打ち出します。そこに料理の、例えば旬の商材と言うと、素材からこんなものを作れますよ、みたいなものであったりだとか。「あなたの推し肉は何ですか」とか、お客様参加型のファン投票企画もあります。

当然、全体のお客様の母数からしてみたら、参加者は少ないですが、お客様に参加意識を持っていただく狙いですね。ファンを広げやすいということも含めて取り組んでいます。

ただ僕は、基本的に広告だとかそういう販促で一番良いのは口コミ効果だと思います。実際に来ていただいて、お店のここが良いと思ってもらえれば通ってもらえるようになりますし、お客様の口コミで広まるのが一番良いと思っています。

DX推進で業務改革、ネットスーパーも開始

――DX施策について教えてください

岩崎 AIを活用した自動発注システムを導入して1年以上経ちました。AI自動発注は、まだそこまで精度が高くなくて、手を加えていきながら改修して、3年~4年目くらいで、ある程度ものになるかなという感覚で見ています。

業務改革と並行してIT化を進めていくことがすごく大事だと思っています。そこでITを上手く活用しながら社内の効率化を図り、スーパーの運営そのものも変えていくため、今年の8月から新しく「業務改革室」を組織しました。元DX推進担当を室長にしています。本格的なDXはこれからだと思います。

これまでにもRPA(Robotic Process Automation=事務作業の自動化)みたいなものを数多く取り入れ始めたりしていますけど、RPAも含めて「今やっているものをどう自動化するか」みたいな話だけなので、改革まではいかないですよね。もう一回ゼロベースで業務設計を変えるよう組織を新たに設置しました。

良くも悪くも、今使っているITやインフラがベースになっているので、業務設計を変えないと直らない部分も結構あります。インフラ整備は課題ですね。

――サービス面での取り組みは

岩崎 まずはネットスーパーですね。1店舗で実験を始めて、そろそろ1年経ちますが、やっぱり最初は苦戦しました。その店舗で採算ベースに乗らないうちは、ほかに広げないつもりです。

今後、需要はまだまだ上がってくるでしょうから、ノウハウをしっかり持っておくのは大事だと思ってやっています。だんだん数字は改善しています。

場所によると思いますけど、社会の変化に相まってまた需要が伸びると思うのでチャレンジすると思います。ただ、ピックアップ時にお店のスペースをある程度使うため、そのスペースが用意できないところだと難しいですね。こういうサービスの需要の高い南関東からやっていくべきだと考えています。

関東一円を中心に30年度3000億円を目指す

<関東一円に出店を広げる>

――将来の出店計画を教えてください

岩崎 彩裕の工場の範囲内ということも含めて、まずは関東一円に出店します。そこからほかの地域を考えるには、何かのきっかけがないとなかなか難しいと思いますね。M&Aみたいなものが出てきたときに一気に考えていくのか。どうしても遠距離になればなるほど地の利が分からないですし、人や食生活も変わります。

今、70%ぐらいのスーパーマーケットが1つの県に留まっているというのが事実です。共存共栄みたいなところがあって。日本という国も人は結構いる国なんでしょうけど、そんなに大きくない。そういう意味では、僕も関東だけではなくて、本州ぐらいまでは視野に入れておいてもいいだろうな、という感覚はあります。

――今後の出店も生鮮・ディスカウントの2業態が中心ですか

岩崎 関東圏の強いスーパーと、どう差別化を図るか考えた時に、通常のスーパーマーケットだとなかなか難しいということで、「TOP」や「プラス」業態を開発しました。今、マミーマートの既存のお店に関しては、適宜どちらかに改装をしている形です。今のところ総体的にはTOPのほうが多いです。将来的には全店TOP・プラスに業態転換する可能性もあります。

2030年ぐらいまでには売上高3000億円を目指します。順調にいけば15年後には7~8000億円ぐらいまで届くという感じはします。その時には当然、出店エリアの拡大もしていると思っています。

やはり店舗の独自性、差別化というのがすごく大事ですね。今、新しく始めた生鮮市場TOPであったり、マミープラスもそこを狙ってやっています。ほかの企業との競争よりかは、商品・価格の両面で全く別物を作ることによって支持を得ていこうと考えています。

■岩崎裕文氏略歴
1998年10月:マミーマート入社
1998年12月:取締役
1999年1月:取締役営業副本部長
2001年4月:取締役総合企画室長
2002年4月:常務取締役経営企画室長
2002年10月:常務取締役管理本部長
2003年10月:常務取締役営業本部長
2006年10月:常務取締役業務統括本部長
2006年12月:代表取締役副社長 兼 業務統括本部長
2008年12月:代表取締役社長

取材・執筆 古川勝平

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