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東京オリンピック/延期で2兆1000億円の経済的な機会損失

2020年03月23日 18:00 / 経営

第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは3月19日、マクロ経済分析レポート「五輪延期シナリオの検討~万一の備えとしての経済対策~」を発表した。

レポートによると、万一、五輪延期となると、日本経済は最大の経済対策を失うことになる。2020年度の実質GDPは、本来、東京五輪開催による経済効果2兆1000億円の見込みがなくなり、マイナス2兆1000億円(GDP比0.39%減)と下振れして、コロナ・ショックの悪影響マイナス3兆8000億円(GDP比0.72%減)に加えて、GDP成長率マイナス1.1%減以上の押し下げ効果に増幅してしまう。有効性の高い経済対策は、そうした万一の状況に対する備えとして必要になると指摘している。

図表1<景気シナリオの修正>
景気シナリオの修正
出典:第一生命経済研究所マクロ経済分析レポート(以下同じ)

東京五輪が延期されると、2020年度に予定されていた需要拡大の見通しが狂ってしまう(図表1)。3月の日本経済研究センターが集計したESPフォーキャスト調査によると、2020年度の実質成長率(GDPとほぼ同義で、企業収益と賃金の上昇率)見通しは平均マイナス0.16%だった(2月の予測平均は0.45%)。

この結果を延長して試算すると、延期の場合、見通しがマイナス0.39%ポイントほど下振れして、2020年度の成長率見通しはマイナス0.55%までマイナス成長の幅が広がってしまうとみている。

また、新型コロナによる景気悪化は、すでに 2019 年度の実質成長率をマイナス0.72%ポイントほど押し下げるインパクトがあるとみる。仮に、コロナ・ショックが東京五輪の開催を後らせることになれば、マイナス・インパクトはさらに大きくなり、マイナス1.11%(=マイナス0.72%+マイナス0.39%)という計算となる。

なお、ここでは、新型コロナの悪影響が 2020 年度の成長率に及ぼす効果は十分には織り込めていない。悪影響の長期化が蓋然性を高めてくれば、コロナ・ショックの惨禍はマイナス1.11%以上に増幅されるという。

図表2<経済イベントごとの成長インパクト>
経済イベントごとの成長インパクト

2019年度、2020年度における経済ショック・経済イベントの効果として大きいものを並べてみた(図表2)。主なものでは、1.消費税増税の反動減、2.コロナ・ショックの打撃、3.東京五輪開催の刺激効果、4.2019年12月に決まった大型経済対策の効果、が挙げられる。

これらのインパクトは、消費税増税の反動減マイナス2兆4000億円、コロナ・ショックの打撃3兆8000億円、東京五輪開催の刺激公開2兆1000億円、大型経済対策の効果2兆1000億円であると計算できる。

以前、新型コロナの影響がなかった段階では、増税のダメージを東京五輪と大型経済対策で相殺することが予測されていた。しかし、コロナ・ショックによって、トータルの成長見通しが大きく下振れする。

万一、さらに五輪延期が加わると、成長シナリオはさらに下振れすることが懸念される。経済は元々成長するポテンシャルが備わっていて、その力によって経済成長は安定(+4兆3000億円の押上げ、0.81%)するが、今回のショックはそれをほとんど食い尽くしてしまう可能性がある。

押上げを実数で表すと、コロナ発生前は、トータル6兆1000億円、コロナ発生後は2兆3000億円、五輪延期の時は2000億円まで小さくなる。これは重大な危機だ。筆者は、万一の五輪延期に備えて、事前に何らかの経済対策を用意しておくことが合理的判断だと考えているという。

レポートでは、最後に東日本大震災の教訓を生かし、個々の人々が感染終息後に消費を活発化させる必要があると指摘している。

■五輪延期シナリオの検討
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2019/kuma200319ET.pdf

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