なんばパークス/屋上公園「パークスガーデン」都心の森として生物多様性に貢献
2024年08月23日 15:42 / 経営
大林組と南海電気鉄道は8月21日、大阪市で運営する商業施設「なんばパークス」の屋上公園「パークスガーデン」が都心の森として生物多様性の保全に貢献していると発表した。
このほど、「パークスガーデン」において、生物調査を実施したところ、全国的に個体数の減少が危惧されているスズメの繁殖が確認されるなど、多様な生物が生息し、繁殖していることを確認した。
鳥類調査は、パークスガーデン内なんばパークス敷地内の街路樹に複数の調査地点を設置し、5分間で観察できた種類と数を記録する方法(スポットセンサス法)により、渡り期(春・秋)、繁殖期、越冬期において、年12回実施した。
昆虫類調査は、パークスガーデン内の複数の地点において、目視調査および捕虫網を使った調査を5分間実施した。調査は5月から8月と10月に月1回の頻度で行うほか、9月には日没後に虫の鳴き声を聞き取る調査をした。
定量調査では、パークスガーデンで多く確認された鳥類が11種であったのに対し、街路樹で確認された鳥類は5種のみだったことから、パークスガーデンの存在が鳥類の多様性の向上に寄与していることが確認できた。全国的に個体数の減少が懸念されているスズメは、幼鳥が虫を採食している姿も見られ、パークスガーデンがスズメの繁殖地になっていることを確認した。また、ヒヨドリなどがパークスガーデン内の実を採餌している姿も見られた。
定量調査以外に確認した種も含めると、5目16科25種の鳥類を確認し、その中には、キビタキ、メボソムシクイ上種などの渡り鳥が含まれており、パークスガーデンが渡り鳥の中継地になっていることが示された。パークスガーデン内の意図的に緑地管理が行われていない場所では、藪を好むウグイスやアオジなどが確認されたことから、生物に向き合った運営管理が鳥類の多様性に良い影響を与えていることが考えられる。また、パークスガーデンに隣接するパークスタワーでは、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(VU)であるハヤブサも確認できたという。
昆虫類の調査では、9目64科171種の昆虫類を確認した。その中には、羽化から日が浅いと思われるショウジョウトンボや、大阪府レッドリスト2014の準絶滅危惧(NT)であるマイコアカネも含まれている。また、都市では局所的にしか見られないネジロハキリバチ、トモンハナバチ、アオスジハナバチなども確認できた。これらの種は人を自ら刺すことはなく、受粉により地域の生態系を支える重要な役割を担う種でもある。
また、雑木林などでよく見られるテングチョウの日本本土亜種などが確認できる。秋の夜には、ハラオカメコオロギ、カネタタキ、シバスズの鳴き声が、風情のある雰囲気を作り出していることを確認した。
藪や水場などの多様な環境、約500種類10万株の豊富な植物、生物に配慮した長年の運営管理などが、パークスガーデンの生物多様性に大きく貢献していると推察できるという。
両社はパークスガーデンにおいて、設計段階から湿地や草地などの多様な環境を設け、鳥類の飛来促進のため、実をつける樹種を豊富に植栽するなど、生物多様性に配慮した取り組みを行ってきた。また、農薬を使わない管理や、本来駆除対象であっても鳥の餌になる昆虫類を一部残すなど、20年以上にわたって生物や植物に向き合った管理を行っている。
2009年度から2011年度には、生き物環境、熱環境、CO2固定量について調査を行い、「人、都市、自然がもっと一つになるためになんばに森をつくる」の施設コンセプト通り、人と環境に優しい豊かな緑へと成長していることを確認している。
大林組と南海電気鉄道は、今後もパークスガーデンの緑地管理と定期的なモニタリングを継続し、大阪難波の”都心の森”を維持することで、生物多様性の保全に貢献する。
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