コンビニ/「時短営業=売上減」加盟店収益改善で各社が支援策模索
2019年04月15日 16:50 / 経営
コンビニ大手4社は、経済産業省がフランチャイズ加盟店オーナーとの共存共栄に向けた自主的な行動計画の作成を求めたことに対応して、非24時間営業に向けた実験を開始することや非24時間営業の契約パッケージがあることを明確にするといった対応を進めている。
各社とも非24時間営業に向けた対応を進めているが、これまでの実験では、営業時間を短縮すれば加盟店の売上が減る傾向があり、売上が減少しても加盟店の収益改善につながるのか、その見極めが課題となっている。
先行してフランチャイズ加盟店で時短営業を認めているローソンの竹増貞信社長は、「時短営業による収益改善は、人件費、売上、チャージ(ロイヤリティ)の兼ね合いになる」と指摘している。
すでにコンビニ各社は、駅構内やオフィスビル内など、非24時間営業の店舗が存在し、そのための契約パッケージも用意されている。
一方で、現在、各社で主力となっている契約パッケージは、フランチャイズチェーン本部が店舗の土地・建物を用意する契約体系で、路面店を中心としたこの契約体系内での非24時間営業が問題となっている。
加盟店の収益は、チェーン本部へ支払うロイヤリティに大きく左右され、各社とも24時間営業店舗が有利となるロイヤリティ体系を持っている。
最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、24時間営業の場合は、ロイヤリティが2%減額となる。
ファミリーマートでは、営業時間によるロイヤリティの変更はないが、24時間営業の場合は、月額10万円・年間120万円の24時間奨励金を支給している。
ローソンは、時短営業では、ロイヤリティが3%増となる契約となっているが、現状では、個店単位で柔軟な運営をしているという。
ミニストップは、本部が土地・建物を用意する契約では、非24時間営業を前提とした契約がないが、土地・建物を用意する契約では、非24時間のロイヤルティを規定。24時間営業に比べて、ロイヤリティが3%増となる。
経済産業省が3月26日に発表した「コンビニ調査2018」では、アンケートに回答したフランチャイズ加盟店の61%が従業員が不足していると回答し、人手不足に起因する24時間営業の課題が指摘されていた。
同時に、加盟店オーナーの39%が、コンビニに加盟したことに満足していないと回答し、「想定よりも利益が少ない」「労働時間/拘束時間が想定していたより長すぎる」といった声が紹介された。
非24時間営業では、人手不足という物理的な課題で、店舗を24時間開けられないという問題のほか、営業時間を短縮した場合、閉店した時間だけでなく、本来の営業時間である昼の売上も落ち込み、加盟店収益を圧迫する可能性がある課題がある。
ローソンでは、2006年から2007年の時に、時短実験をエリアでやったところ、競合が24時間営業していたこともあり、昼間の売上も落ちた。24時間に戻したいといって、24時間営業に戻したオーナーの店は、24時間営業にしても売上が戻らずに、そのまま閉店した店もあったという。
セブン-イレブン・ジャパンの松永文彦社長は、「私が1980年に入社した当初は16時間営業で、それを24時間営業にする取り組みがあった。24時間営業にすると、深夜帯だけでなく昼も夕方も、お店が空いているという安心感もあり売上が上がり、売上があがることで収益も高まることを目の当たりにした」。
「トレーニングストアでは、まだ2週間くらいしか実験をしていないが、売上は下がっている。なので、そういったリスクもあるということ、商圏がどうであるかということを踏まえながら、オーナーと話し合って決めていく。我々としては、オーナーの経営を守るという責務があるので、加盟店の収益が下がらないためにアドバイスをしている」と語っている。
ファミリーマートでは、2017年に直営店とフランチャイズ加盟店を含め数店で、時短営業や夜間無人営業の実験をしているが、広報部は、「まだ実験の結果を申し上げる段階ではない。店舗を閉めた売上の影響だけでなく、日商・コスト・収益への影響を見極めたい」という。
ローソンの竹増社長は、「どうしても競合が24時間でやっているところは、夜間の売上だけでなく(昼間の売上も)下がる。場所によっては、ポツンとやっている店もある。例えば、東日本大震災で被災した東北の沿岸部で、人が住んでいなくても、復興の工事があって、ずっと工事需要があったが、工事が終わってしまって、人もなかなか戻って来ないような地域にあるところは、時短を選んでもらっている」と現状を解説している。
実際、コンビニ調査2018では、約50%の加盟店オーナーが売上が減少したと回答しており、店舗の競争環境は年々、厳しくなっている。
競争が激しい地域で、1店舗だけ営業時間を短縮すれば、売上への影響は避けられない状況にある。
加盟店収益に改善のカギとなるロイヤルティについて、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、「チャージ(ロイヤルティ)減額はいま全く考えていない。むしろ、1店あたりの売上をどうやって伸ばすかということを主眼に考えて1店舗1店舗の経営基盤を強化していきたい」と語った。
一方で、セブン-イレブンのCタイプ契約では、開店後、満5年経過した開店月の翌月から最大3%チャージを減額するインセンティブ・チャージを用意しており、売上を取れる加盟店の収益構造を支援する仕組みを取り入れている。
ファミリーマートの澤田貴司社長は、「24時間奨励金を、最低賃金額の上昇率に合わせて毎年改定し、増額する」と表明し、ロイヤルティではなく、店舗の経費構造を支援する取り組みを発表している。
また、ファミリーマートでは、これまで加盟店負担だった、店舗従業員の健康診断費用を本部が負担する施策も打ち出している。
竹増社長は、「24時間営業を続けるための店舗の省力化投資を本部としてしっかりやる。その上で、どうしても時短営業が必要な加盟店には、個別に対応したい」と述べている。
人手不足は、全産業に共通する課題で、24時間操業の工場、深夜配送のトラックドライバーの確保など、サプライチェーン全体の課題ともなっている。
コンビニ各社は、現時点でも非24時間営業店舗を運営しており、1店舗、2店舗など数店舗単位では、イレギュラーな配送に対応できるだけのインフラを持っている。
竹増社長は、「41店舗で(時短営業を)やっているが、弁当工場、物流、すべて24時間を前提にして組まれている。個別事情で個別対応しているところは、特別対応を行っている。これが増えてくると、特別対応では済まないことになり、サプライチェーン全体の見直しが必要になることも視野にも入っている。その時には、基本24時間ということについて、向き合わないといけない時だ思うが、現状では、個別対応で回せているのが実情だ」と現状を解説する。
現時点では、競合店が多い都市部では、時短営業が加盟店の収益改善につながらない可能性が高い。今後、各社で時短営業の実験結果や運用結果を踏まえた、フランチャイズ加盟店オーナーとの共存共栄に向けた自主的な行動計画が示される予定だ。
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