アダストリア/EC「アンドエスティ」流通総額1000億円へ、原宿の旗艦店とシナジー
2025年04月24日 13:54 / 経営
アダストリアグループのアンドエスティは4月24日、東京・原宿に「and ST TOKYO(アンドエスティ トーキョー)」をオープンした。ECモール「and ST(アンドエスティ)」の旗艦店という位置づけ。アンドエスティでは旗艦店を軸に外部ブランドとの協業を進め、ECとリアルを相互に活用した拡大戦略を描く。その見据える先とは──。
2030年2月期に流通総額1000億円へ
アダストリアは今期(2026年2月期)からの「中期経営計画2030」で、2030年2月期には流通総額(GMV)1000億円を掲げている。直近の2025年2月期の流通総額は403億円のため、5年で2.5倍の規模に高める計画だ。
流通総額に占めるグループ外の比率(外販比率)については、現状の3%から40%まで高めるとしており、1000億円のうち400億円が外部ブランドによる販売となる。ちなみに、今回オープンした「アンドエスティ トーキョー」では、オープン時で売場全体の約35%を外部ブランドが占めている。
このように外部ブランドを扱う「オープン化」を進めるアンドエスティ。今後はECモールとリアル店舗が連動して、他社との協業・連携を加速し外販比率を高めていく。すでに旗艦店「アンドエスティ トーキョー」でその動きが始まっている。
例えばECモール「アンドエスティ」に出店している「PAUL & JOE(ポール&ジョー)」が、旗艦店でポップアップストアを出店。あるいは、英国発ブランド「Cath Kidston(キャスキッドソン)」は旗艦店のオープンに合わせて一部の商品を販売しているが、6月末にはECモールへも出店する。
こうしてリアルとEC双方の強みを生かし規模拡大を狙うアンドエスティだが、今回の旗艦店をどのように活用しEC事業をどう拡大していくのか。同社取締役CBOの小林千晃氏に聞いた。
「仲間集め」始まった段階、年間50ブランド誘致へ
──今回の旗艦店では年間の目標集客人数を100万人とする一方で、売上目標は特に掲げていません
小林 旗艦店「アンドエスティ トーキョー」では、アダストリアのブランドをたくさん並べるのではなく、他社さんとつながって展開することを重視しています。そのため、何十億を売ろうといった目標を掲げるのではなく、まずはお客様にリーチしてもらう。その結果、100万人を達成できれば自然と数字はついてくるのではないかと考えています。
──他社ブランドとの協業をかなり意識しています
小林 今回の旗艦店をきっかけに出店が増えれば、家賃収入などでアンドエスティとしての売上も伸びます。逆に旗艦店の売上を何十億と見込んでMD戦略を練った場合、店舗単独では売上を達成できるかもしれませんが、アンドエスティ全体で見た際のシナジーはありません。そういった意味で、店舗単独での売上拡大というのは優先していません。
それよりも、旗艦店を通じてECモール「アンドエスティ」に出店したいとなればありがたいです。我々としては今、「仲間集め」が始まった段階なのです。
──ECモール「アンドエスティ」への出店誘致はどのくらい進めていく予定ですか
小林 現在、33ブランドが出店していますが、年間50ブランドくらいは誘致したいです。その際に我々が得意とするカテゴリーとのつながりを重視したいと考えています。あるいは、下着やアクセサリーなどこれまでできなかったり踏み込めていなかったりする分野も強化したいです。
そのほかにも当社と同時に買われている他社ブランドにも出店してもらいたいです。「アンドエスティ」内で一緒に購入できたほうがお客様としてはありがたいですから。
──ある種ライバルであるブランドとも連携していくと?
小林 そうなります。そこに振り切っていこうと思っています。例えば「アンドエスティ」に出店いただいている「Classical Elf(クラシカルエルフ)」さんなども、お客様が当社と先方のECサイトでそれぞれ購入しているのであれば、「アンドエスティ」内で同時に購入できたほうがポイント連携もできるし、同梱されて納品されるので便利です。このように「アンドエスティ」の中で経済圏を作っていきたいと考えています。
──その場合、在庫はどのように持つのでしょうか
小林 他社ブランドさんの商品も当社の倉庫で保管します。ただし、今後は他社ブランドさんの倉庫と在庫連携する取り組みも進めます。
というのも商談を進める中で、当社の倉庫で商品を保管できない会社さんもあります。そのため他社倉庫と連携し、「アンドエスティ」に発注が入ると外部倉庫から当社の倉庫に商品が送られ、同梱してお客様のもとに送るという流れになります。そうなると、当社の倉庫に商品を入れなくても「アンドエスティ」で販売できるようになります。
──取引先の倉庫からいったんアンドエスティの倉庫に送られ、それから顧客先に送られると。その場合、購入から受取までのリードタイムが長くなってしまうのが難点ですね
小林 それもあって現状は当社の倉庫に商品を入れてもらうのを条件にしているのです。とはいえ、そのやり方では取引ができないメーカーさんもあるので、その企業さんのために在庫情報をデータ連携していく仕組みを準備しています。
在庫預かりだけでなく、在庫連携にも対応し、ほかにも我々が扱っていない業態のアイテムにまで幅を広げていく準備も進めています。そのような対応をしなければ1000億円というGMVは目指せません。
──やはり流通総額1000億円へのエンジンとしては、外部ブランドの販売が肝になるのでしょうか
小林 非常に大事になります。今後はブランド別の「ランク」や、飲食、家具、コスメ・ビューティー、キャラクター、ライフスタイルなど「カテゴリー」に分けてECモールを整備していきたいと考えています。
リアル店舗やスタッフの発信で「ゾゾタウン」と差別化
──そうなるとベンチマークは「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」になりますか
小林 意識はしていますが、「ゾゾタウン」には我々も出店し、大きな売上を出しているので、そこは今後も大事にします。
我々と「ゾゾタウン」の大きな違いは、リアル店舗があるという点と、当社のスタッフによる情報発信という点です。「ゾゾタウン」はDXが素晴らしく、便利さという点では我々も参考にする点が多いです。我々はそこまではできないので、リアルの場を持ち、スタッフが投稿ツール「STAFF BOARD(スタッフ・ボード)」などで他社さんの商品も紹介します。
先日も「DEAN & DELUCA(ディーンアンドデルーカ)」さんの食レポをしたり「キャスキッドソン」さんの商品を当社の「LOWRYS FARM(ローリーズファーム)」のスタッフが紹介したりといった発信をしています。
──たしかに「ゾゾタウン」などのファッションEC専業とは立ち位置が違いますね。ECモール出店料は他社のECモールと比べて違いはありますか
小林 相場に近いと思います。特に安いわけでもないですし、逆に高くもないです。ただし付帯サービスとして、当社のスタッフがアイテムを紹介すると広告料をいただきます。
先日もイトーヨーカ堂さんと一緒に展開している「FOUND GOOD(ファウンドグッド)」というブランドについて当社のスタッフがプチプラ特集で紹介した際は、メディア収入をいただいています。
──メディアというと、直近では会員向けに「and ST MEDIA(アンドエスティメディア)」を始めました
小林 まだスタートしたばかりですが、今後多くの人にリーチできるようなものに育てていきたいです。
取材・執筆 比木暁
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