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日本生命の物流不動産開発戦略

2017年07月07日 10:48 / 流通最前線トレンド&マーケティング

長期保有し、安定オーナーとなる

―― 物流投資の基本方針は。
田中 キーワードは「長期保有」です。日本生命では、オフィスビル開発でもそうですが、開発してすぐに転売するようなことはせずに、自ら開発したものを、長期安定オーナーとなる方針をとっています。これは、運用資金が、超長期にお預かりする生命保険料をベースとしているため、必然的に、長期安定の資産運用を行わなければならないからです。これまでオフィスでは、テナントに長い期間、安心して入居して頂くことをコンセプトにやってきました。そのコンセプトを、物流施設にも適用したいと思っています。長期保有できるだけの、しっかりした施設を作っていきます。

―― 最近、新規開発用地が奪い合いと聞きますが。
田中 たしかに、土地が高騰する昨今、物流適地の土地を入札で買おうとすれば、極めて高値にならざるを得ません。一方で、日生の物流施設開発の特徴として、「借地」でも開発を行う点があります。過当競争には加わらずに、着実に投資開発を進めていきたいと思っており、「借地」はその方策の一つと考えています。

荻野 「借地」は、別の視点では、親密な企業さんの遊休地の有効活用、「CRE戦略のお手伝い」といった面もあると考えています。各企業とも、遊休地の取扱は頭を悩まされていることが多いかと思います。個別に、さまざまな状況がありますので、単に売却するだけが、必ずしも最適な解決策ではないと考えています。

―― ソリューションを提案しつつ、それに伴い案件獲得されるということですね。
田中 はい。それを目指して、日々、色々な企業さんに、具体的な提案に回っています。

荻野 借地以外にも、セール&リースバックなど、さまざまな提案ができますので、この記事を読まれた、企業遊休地の管理担当者の方は、ぜひお気軽に問い合わせ頂ければと思います。

―― 地主企業からすると、日本生命が借地人となるのは安心感がありますね。そのあたりも差別化ポイントになっているのでしょうか。
田中 そういって頂けると大変有難いです。手前味噌ですが、地主さんからも「日本生命に貸すのは安心感がある」というコメントを、実際に頂いています。弊社の先人達が積み上げてきた社会的信用を、上手くビジネスに繋げていければと思います。

―― 立地面ではどのような考えですか。
田中 立地条件の良し悪しは時代に伴って微妙に変化していくと思います。その都度見極めながらやるしかないですが、物流で、今後も長期的に重要なポイントであり続けそうなのは、「高速道路アクセス」「接道が広く、できれば右折IN可能」「24時間稼働」「雇用確保」といったところでしょうか。なお、「24時間稼働」「雇用確保」の2点は、「住宅から遠い/近い」と、相反する面もありますが、可能な限り、両立された土地を探したいと考えています。

―― 建物の構造的な面では。
田中 まずは一般的な基準、「高さ5.5m、床荷重1.5t/m2、柱間距離10m」を最低限確保し、マルチテナント対応も可能な施設を原則とします。あまりカスタマイズすると時代の変化に対応できない可能性がありますし、建物機能として陳腐化しないことを基本としています。

荻野 一方で、仮にニーズが十分に見込め、かつ制度的・予算的制約もクリアできるような場合は、一般的基準を超える、例えば床荷重を2t/m2とする、あるいは天井高を6.5mにするような取組も、今後検討していきたいと考えています。

―― 開発の地域的な範囲は。
田中 今のところ、東京、大阪の2大都市圏を中心にしています。物流は人口集積があってこそのものですから、その人口集積の分厚い2大都市圏をターゲットにしています。あとは、よほど希少性の高い土地があれば、中京圏・福岡圏も検討するつもりです。

荻野 具体的な立地の話をしますと、首都圏であれば少なくとも圏央道の内側で、圏央道沿いであれば厚木・久喜・八王子など特に競争力の高いポイントに限定。関西であれば内陸で、大阪中心部に近く、特に希少性の高い立地に限定して、と考えています。

田中 世間一般よりも、かなり厳しい目線だと思います。ただその一方で、実は、実際にそうした有望な土地情報を、独自の情報ルートで、水面下で複数確保できています。しかし、テナント情報の探索が、少し後手に回ってしまっていますね。

―― 成長・新規領域で1.5兆円の予算と聞きましたが、物流不動産では。
田中 具体的な方針があるわけではありませんが、中長期的には、1000億円程度の規模を目指したいとイメージしています。ただ、無理に数字目標を作り、それに縛られるようなことのないように、市況等を見ながら柔軟に対応したいと考えています。

希少立地の開発3棟

―― 具体的な物件の概要ですが、開発が確定しているのが3棟です。
田中 大阪松原の2期工事と、横浜町田、東大阪ですね。このうち、当社で最大規模となるのが、横浜町田です。この場所は三機工業さんの工場用地の再編で生じる空きスペースの活用です。敷地面積が約1万2500坪、延床面積が約2万9100坪、5階建てとし、ダブルランプウェイ構造としています。

―― 地図を見ると、駅が近いので、人口集積地の近くということですか。
田中 その通りです。田園都市線の中央林間駅、つきみ野駅から1㎞、小田急線の南林間駅からも1㎞圏内です。周辺人口調査もしておりまして、従業員募集に非常に有利な立地と確信しています。

―― 大阪松原は1期棟が2016年に完成し、2期棟が2018年竣工予定です。
田中 大阪松原は、1期棟・2期棟ともに、合通さんへの一棟貸しとなっています。1期棟は、既に稼働しており、今後完成する2期棟と合わせ、日本最大級のお菓子専門の共同配送センターとして、合通さんが活用することになっております。合通さんには、多くのお菓子メーカーさんから、共同配送の問い合せを頂いていると聞いています。また、現在でも、空室が無いかと、オーナーの日本生命宛に問い合わせを頂くことが頻繁にあります。

荻野 この周辺は、航空写真では空き地が多くあるように見えるのですが、実はその大半が市街化調整区域ですので、弊社施設のような敷地面積7000坪クラスの開発用地は、非常に希少価値が高いと考えています。その後、周辺で新たに土地が入札で出てくるような噂もありません。

―― そういう意味では東大阪も、よくこのサイズの土地がありましたね。
田中 東大阪はタカラスタンダードさんの倉庫跡地で、敷地面積は約5000坪です。すぐ近くに東大阪ジャンクション・東大阪トラックターミナルがあり非常に利便性が高く、かつ希少価値の高い立地となっています。

荻野 航空写真で見ても、東大阪JCT周辺はまとまった空き地がほぼ無く、中小の建物がびっしりと密集しており、閉鎖予定の大規模工場も無い、そもそも大規模工場自体が少ないですから、弊社案件と同規模のまとまった土地は、めったに出てこないと考えています。一方で、東大阪エリアは高度経済成長の頃に官主導で関西物流の中心としてインフラ整備された歴史もあり、関西で最も物流ニーズが強いエリアで、しかも空室率は過去10年間ほぼ0%に張り付いている、特殊な需給バランスにあるエリアです。極めて強いニーズが見込めると考え、投資決定に踏み切りました。実際に足元では、東大阪周辺の物流会社さんなどから、予定延床面積をはるかに上回る、大変多くの問い合わせを頂いています。

―― いずれも希少性の高い立地ですね。盤石ですね。
田中 ありがとうございます。弊社では、確実に入居が見込めそうな立地に厳選投資しています。建物では、そもそも「汎用性」が最重要項目であることもあり、なかなか他社さんとの大きな差別化はできませんが、立地は、今後もこだわりぬきたいと考えています。

<ニッセイロジスティクスセンター大阪松原II期パース>
ニッセイロジスティクスセンター大阪松原II期パース

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