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セブンイレブン/永松社長が語る「コミュニケーション改革」最前線

2020年01月28日 16:50 / 流通最前線トップインタビュー

セブンイレブン/永松社長が語る「コミュニケーション改革」最前線

セブンーイレブン・ジャパンにとって、2019年は、24時間営業問題、店舗経営指導員による商品の無断発注など、さまざまな問題が顕在化した年となった。今回、永松文彦社長に、問題が起きた背景、現在進めているコミュニケーション改革などを語ってもらった。

「ワンフォーマット」「トップダウン」が世の中の変化にあっていない

――24時間営業問題などさまざまな課題の根本的な原因は何ですか。

永松 セブン-イレブン・ジャパンが、セブンイレブンを日本に展開して、45年になります。これまでコンビニエンスを日本に根付かせるために、レイアウト、営業時間、商品構成などをワンフォーマットでスピードを持って展開することで成長しました。

一方で、少子高齢化や、働く人の減少、IT化、働き方改革とか、世の中が、急速に変化している。店舗数が2万店、社員も9000人を超えて、店舗も北海道から沖縄までという時代になり、ワンフォーマットを全国に徹底する形が、合わない部分も出てきています。また、規模が拡大することで、コミュニケーションが希薄になっていると非常に感じました。

マネジメント形態もある意味、ワンフォーマットでした。全国から東京に来て、OFC(オペレーションフィールドカウンセラー・店舗経営指導員)会議で、一つの指示の下に、徹底する。マネジメント形態を含めて、世の中の変化に、いろんな形であわない部分が出ている。それが、さまざま形で問題として、出てきたと認識しています。

――今後の改善策を教えてください。

永松 大きな意味で、トップダウンからボトムアップ、権限移譲を進めます。それぞれの地域、地域にあったマネジメント形態、商品構成を、立地別、エリア別、個店別という形で、やっていかなければいけない。

――コミュニケーション改革ではどんなことを考えていますか。

永松 フランチャイズビジネスでは、コミュニケーションが非常に重要だと認識しています。加盟店オーナーさんとのコミュニケーション、そして社内でのコミュニケーションが重要です。コミュニケーションには、「方針を理解するという意味」でのコミュニケーションと、「情報を共有するという意味」でのコミュニケーションがあります。

――「方針を理解するコミュニケーション」の施策を教えてください。

永松 創業以来、全国から四ツ谷本社に人を集めて、トップがいろんな方針や考え方を話してきました。ただ、今は、四ツ谷本社でも数千人の社員が入り切れないという問題があり、テレビ会議になる社員もいて、伝えきれない部分もあります。

今後、幹部、経営陣が、それぞれのエリアに直接行き、100人、200人の単位の中で、いま考えていることを(各地区の)ディストリクトマネジャー(DM)、OFCに伝える機会も増やしていきます。方針や考え方といった政策の理解は、幹部が各エリアに行くことで、改善できると思います。でも、政策だけでは情報は足りません。そこで、情報を共有することが必要になります。

※セブン-イレブンでは、7~8店を担当するOFC、約100店の責任者であるDM、約1000店の責任者であるゾーンマネジャー(ZM)の3階層で加盟店を支援している。

――「情報を共有するコミュニケーション」では何をしますか。

永松 今年度中に、オペレーション、商品部、リクルートといった営業担当者全員に、タブレット端末を持たせます。基本的に、四ツ谷本社の勤務者以外には、タブレット端末を持たせます。四ツ谷本社では、マネージャー以上に配布します。タブレット端末によって、北海道でも九州でも、情報共有はよりスムーズにできると思います。

現在、携帯しているパソコンは、作業や操作に優れていますが、「情報を伝える」「見る」「見せる」という点では、タブレット端末が優れていると思います。

セブンイレブン永松社長2

――タブレット端末を導入するきっかけは。

永松 私は、7-Eleven, Inc.取締役も兼ねていますので、アメリカの取締役会に出張で行きます。すでにダラスと四ツ谷の中で、情報交換は常にリアルタイムにタブレット端末でやっている。IRでも、非常に活用しやすいと感じていました。

そのため、加盟店オーナーさんに何か説明する時に、ペーパーやパソコンよりも、タブレット端末を使った方が、非常に効率的だと感じました。

考え方は、フェーストゥフェースで理解する。一方で、他店のいい事例、売れている商品、月次の商品情報などは、いつでもどこでも見られるタブレット端末を活用する。幹部、経営陣が各エリアに行くこととタブレット端末を活用することで、OFCのコミュニケーション強化を図りたい。

加盟店とのコミュニケーション、本筋はOFCのカウンセリング力

――加盟店オーナーとのコミュニケーション施策を教えてください。

永松 昨日(2019年12月26日)、東東京地区と西東京地区のオーナー様意見交換会を実施しました。10月に広島、11月に北海道で開催し、全国の4地区に行ってきました。各地区で約15人のオーナーさんと2時間、3時間といろんな議論をしました。オーナーさんからは、最後に、本当に今日の会議を有意義に過ごせたという声をいただきました。

――オーナーと直接、会う機会が少ないのではという声もありますが。

永松 毎月1回、役員で店回りをやっています。1回につき4~5店、1店あたり1時間くらい話をします。ただ、10地区回っても50店です。私は今年、4地区の商品展示会に行き、50店くらいのオーナーさんとお会いしました。その場でいろんな話も出てきました。展示会を含め、数百店のオーナーさんにはお会いしています。

それでも、2万店のうちの数百店でしかありません。本来的には、やはりラインであるZM、DM、OFCがコミュニケーションするべきだと思います。特に、OFCと加盟店オーナーさんとのコミュニケーションの質と量をいかに高めていくか、これが本筋だと思っています。

オーナー様意見交換会に参加できる店舗は、数十店に1店の割合です。広島のオーナー様意見交換会から感じていますが、大切なことは、普段からOFC、DMなど、現場の担当者、責任者が議論をするべきだと感じました。

そのためには、我々の持っている考え方を、地区の責任者や担当者に伝えることが非常に重要だと考えて、役員がエリアに出向くことにしました。現場のOFCのカウンセリング力を高めるということが本筋だと思っています。

セブンイレブン永松社長3

――社長自ら、加盟店とダイレクトにコミュニケーションする意味は何ですか。

永松 私は、全オーナーさんとコミュニケーションをとるのは困難だと思っています。ただ、OFCから上がる報告やオーナー相談室に入ってくる報告をより理解するために、ダイレクトコミュニケーションをしています。オーナーさんから直接、話を聞くことで、なるほど、こういうことを報告しているのかという肌感覚があります。ダイレクトに話を聞けるのは、数が少ないですが、報告をより理解するために、ダイレクトなコミュニケーションは続けます。

――OFCに相談しにくい加盟店にはどう対応しますか。

永松 OFCと加盟店のコミュニケーションが本筋ですが、これだけでは、聞こえてこない悩みなどがあるかもしれません。そこで、オーナー相談室を拡充しました。オーナー相談室に、営業の責任者をやっていた取締役をつけて、人員を強化して、OFCに言えないような悩みなどを聞けるようにしました。オーナー相談室で、OFCへの不満も、拾えるような形にしています。

OFCはメッセンジャーじゃない「自分の言葉」で加盟店に話すべき

――現場のOFCに一番伝えたいことは何ですか

永松 本当にその商圏で商売するためには、何をやるべきかを、「自分の頭で考え、自分の言葉で加盟店オーナーさんにアドバイスする」ことです。私は、「会社の方針です」「上司が言ってます」「契約書に書いてあります」を三大禁句だと言っています。OFCには、「会社の代表として、自分で考えてしゃべる」ということを言っています。

エリアのお客様のニーズがどこにあるのか、商圏の特徴を把握する。それを客観的に見て、オーナーさんの商売にプラスになる方法をどれだけアドバイスできるかが大切です。

――社長自身がそうされてきたということですか。

永松 私は、OFCをやった後に、全国のOFCを育成するトレーナーを3年間やっていました。その時に、OFCの心構えとして「自分の言葉で話すことが、非常に大事だ」と伝えてきました。

「上司が言ってます」とか、「会社の方針です」とかは、単なるメッセンジャーでしかないわけです。メッセンジャーじゃなくて、「本当にここでは何をやるべきなのか」「どうすべきなのか」を自分の言葉で伝えるべきです。それは、自分で考えなければなりません。

セブンイレブン永松社長4

――OFCの無断発注問題にはどう向き合っていきますか。

永松 フランチャイズビジネスは、お互いの役割分担を徹底することだと思っています。ここの考え方を社員一人一人に、良く理解をさせるということが一つです。

また、これまでは、共通して良い物を作って、それを売ることでチェーン全体の強さができました。そうやって世に出した商品はいっぱいありますが、これは商品軸からものを発想しています。

そうではなくて、より個店軸からものを考えるのが、エリア別、立地別という考えになります。個店にとって、何が大事なのか、いまこのお店では何をやらなければならないのか、売上を増やすのか、経費を減らすのか、従業員管理を強化するのか、問題は個店ごとに相当違っています。その優先順位を考えるのは、担当OFCとオーナーさんしかいないと思います。

これを全店共通の目標でというと、優先順位が若干、変わってしまう可能性がありますので、優先順位を個店から発想する。ですから、2020年からは「個店行為計画」を軸に仕事をするということで、いま準備を進めています。

■永松文彦(ながまつふみひこ)氏のプロフィール
1957年1月3日生まれ
略歴
1980年3月:セブン-イレブン・ジャパン入社
2000年9月:オペレーション本部ゾーンマネジャー
2004年5月:執行役員業務本部長代行
2005年5月:執行役員業務本部長
2012年1月:執行役員オペレーション本部ゾーンマネジャー
2014年2月:執行役員企画室付
2014年3月:ニッセンホールディングス代表取締役副社長
2015年3月:セブン&アイ・ホールディングス執行役員社長付
2017年5月:同社執行役員人事企画部シニアオフィサー
2017年12月:セブン-イレブン・ジャパン執行役員人事本部長
2018年3月:セブン&アイ・ホールディングス執行役員人事企画本部長
2018年3月:セブン-イレブン・ジャパン取締役人事本部管掌
2019年3月:セブン-イレブン・ジャパン取締役執行役員副社長、営業本部長兼オペレーション本部長、決済・アプリ利用促進プロジェクトリーダー
2019年4月:セブン-イレブン・ジャパン代表取締役社長

■セブンイレブン/永松社長が語る「飽和市場論を破る」商品政策
https://www.ryutsuu.biz/column/m010008saizan.html

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