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「杉玉」運営F&LI/木下社長「アルバイトから社長への道のり」働く仲間を喜ばす

2022年09月29日 10:00 / 流通最前線トップインタビュー

入社2カ月で店長就任、競合店に苦しむ中で学んだもの

――現場経験で、最も経営に役立っていることを教えてください。

木下 私は、入社して2カ月ぐらいで店長になりました。その頃は、本当に小さな会社ですし、私もアルバイトを3年半続けてきました。アルバイトの時点から社員と一緒に、いろんな仕事をさせてもらいました。就職すると決めてからは、社員になることを前提にいろいろと指導をしてもらいました。あとは早い段階でやりなさい、ということでチャンスを持ちました。一方で、私が初めて店長になった店舗「洞ヶ峠店」(現在は閉店)は、本当に小さい店舗だったんですが、店舗の100mぐらい先に、すごい最新設備を入れた競合店がオープンしました。私の店舗は、客席や設備も旧式でした。競合店は、新しく設備が整っていたので、一気にお客様がそちらに行かれて、競合店の駐車場に入る車列が、自分の店舗の前を通り過ぎてしまう、しかし自分の店舗は空席、といったことが実際にありました。

その中で本当に一つ一つ店舗のマニュアルを見直して、オペレーションを見直して、商品を見直して、アルバイトさんを教える、本当に苦しい日々が続きました。新人で経験がない中でいろんな人に相談をしました。少ない売上の中でどう収益を残すのか、いろいろと挑戦しました。そうしたら数カ月たった時、お店を開けていたら「今日忙しいな」って思いながらぱっと顔を上げたら、今まで全然満席にならなかった自分のお店が満席になっているのを見ました。本当にすごくその瞬間が、うれしくて、私は、その時、涙が出てきました。横を見たら向こうでパートさんが、私の顔を見て笑っていて、そしてパートさんも泣いているというシーンを覚えています。

そういう経験があったので、飲食店の難しさもあるけども、やりがいとか、スタッフの大切さとか、協力してくれるスタッフのありがたみとかを大切にしています。日頃、何も言ってくれないけど、なんか目と目が合ってうなずくみたいな、体験をしました。私も会社にいる中で、苦労する時期もあり、当然慣れない仕事だってあります。でも、ずっと自分が、この会社にいて頑張りたいと思っている一番の源泉になる経験の一つだと思っています。

<スシローの店舗>
スシローの店舗

――現場に思い入れもある中で、営業から離れて管理部門に行く抵抗はありましたか。

木下 もちろんありましたよ。自分がお店を回したらと思う部分もありました。でも今考えると、あんまりそこは大きな問題じゃなかったのかもしれません。おそらく会社のマネジメントというのは店舗のマネジメントとは、やはり大きく異なる部分がある。会社経営の一翼を担う経営陣として、一人前になるには、営業や店舗の経験だけでは、なかなか実現できない部分があったかなと思います。当時の社長とか経営陣から見るとやはり、私はちょっと経験不足なところもあった。その中で、私の経験が生かせて、さまざまなことを学べる場所として、人事の仕事をいただいた。例えば、ITや財務では、まったく別の専門性が必要です。でも、私の経験が生かせる場所を選んでいただいたと思います。

当時、本当にそう考えたかどうかは、分からないです。いま振り返ると、もともと人に喜んでいただきたいという思い、価値観があった。スシローでは、本当にたくさんのお客様が来ていただけるとか、自分が働く中でスタッフに喜んでもらえたとか、この会社であれば、数多くの人に喜んでいただけるという体験があった。だから、営業だとか、人事だとか、総務だとか、ポジションや領域は私の中で大きな問題ではなくて、この会社で最終的にお客様に喜んでいただけるということ自体が私の目的だったと思う。

やっぱりこの会社でやれることの価値とか、本当に多くのお客様に喜んでもらえる仕事であるというところに関しては、たぶん入社する前から、入社してからも全然ぶれていない。それがどうすれば維持していけるのか、どのように維持していくのか、本当にぶれずに考えることができた。これまで、大きな災害や大きな事象に対応することもありましたが、そんな時でもその思いがあったのでやりきれた。本当にできるだけ私が感じてきた思いを、現場の多くの人に感じてもらいたい想いが私の中ではあったので、管理部門で頑張れたと思います。

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