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「杉玉」運営F&LI/木下社長「アルバイトから社長への道のり」働く仲間を喜ばす

2022年09月29日 10:00 / 流通最前線トップインタビュー

新業態開発子会社の社長に就任、業態開発の壁とは

――2019年にスシロークリエイティブダイニングの社長に就任したきっかけは何ですか。

木下 正直、分かりません。ただ、現場上がりですが、相当長く人事総務という立場にいたので、(水留浩一F&LC社長CEOが)まったく違った観点からこの会社を見ることが必要だと、考えたと思っています。FOOD & LIFE INNOVATIONSの前身のスシロークリエイティブダイニングの社長になる時、水留から、「PL責任(収益性の管理責任)をしっかり持ちなさい」という言葉を頂きました。私自身スシローしか経験がありません。国内のスシローだけだったのが、当時は海外にもスシローが出店しました。新しい事業がいろいろ生まれてくる中で、スシロー以外の事業があり、しっかりと、いろんなものを見る上で、この仕事が最適であると判断されたと思っています。

――2015年1月に新業態「ツマミグイ」を出店し、同年11月にツマミグイを一新して「七海の幸」を出店し、両業態とも閉店しました。当時の新業態開発の課題を教えてください。

木下 ツマミグイも七海の幸も、もともとスシロー以外の成長の可能性を探るために、新しい業態にチャレンジしたと思っています。ただ、簡単に言うと、新しい業態を作るということは、スシローでやることと全く違うことであるにもかかわらず、しっかりとノウハウを持っているメンバーがいなかった。使う食材が同じで、同じすしの業態でも、やることが全く違う。ツマミグイも七海の幸も基本的には社内でスシローのリソースを使ってやりました。2018年3月に開始したスシローコノミ(カウンター席と持ち帰り寿司の併設業態・現在閉店)に関しても、スシローと非常に近しい業態ではあったため、スシローのメンバーが中心でした。

――一方で、大衆寿司居酒屋の杉玉は好調ですね。

木下 2017年8月から開始した杉玉に関しては、飲食店の業態開発を手掛けるスパイスワークス様の力もお借りしています。新業態開発には、プロの専門的なノウハウが必要で、そこをどうスシローのリソースの中に取り込むのかが課題でした。スシロークリエイティブダイニングという新会社ができることによって、スシローとは違う法人、組織体で、スシローとはまったく違う新しい業態を立ち上げることに特化した社内外の体制を構築しました。それが一つずつ進み始めて、杉玉が生まれ、それが拡大した。現在のF&LIは、業態開発専門のメンバーもいますし、社外のいろんなコミュニケーションができる、業態を作る方との関係性構築もしている。社内には、出店専門のメンバーもいて、業態に合わせてフレキシブルにいろんな出店を探っています。メニュー開発専門のメンバーもいますので、業態に合わせて業態開発をする、スシローとは違う体制となっています。

<F&LIの本社>
F&LIの本社

――F&LIでは、社外の人材も多く取り入れていますか。

木下 グループの外から、社外の人材も採用しています。社内の人間と社外の人間と半分半分ぐらいでチームを作りました。特に業態開発や出店、立地選定は、スシローとのノウハウがあまり共有されない独自性のある領域なので、社外の人間を起用しています。一方で、食材の供与、調達、店舗運営みたいなマネジメントや管理系に関してはもともといたグループの人材をあてています。その辺りを組み合わせることによって一つのチームにしました。また、2020年の10月ごろにF&LIの本社を東京に移転しました。やっぱり新しい業態を作る中で、人口の集中やマーケットの大きさ、新しいものが生まれていく点において、やはり東京でしっかりと新しいチャレンジをすることが、非常に有効的かなと考えて、本社を移転しました。

――新業態開発の方向性を教えてください。

木下 ここは社名変更によって変わったところがあります。スシロークリエイティブダイニングは、スシローグローバルホールディングス(SGH)時代の子会社でしたが、SGHがFOOD & LIFE COMPANIESに社名変更した際に、FOOD & LIFE INNOVATIONSに社名変更しました。おいしいものを安く売るということがグループの価値観なので、新業態でも、いかに日常的に使ってもらえる業態であるべきかが重要です。日常で月何回も使ってもらえる業態にしたい点は変わっていません。一方で、F&LCになって、京樽や回転寿司みさきが加わり、スシロー以外の寿司も加わったこともあります。また、F&LCは、「日々の食を美味しくすることで、お客さまの生活や人生までゆたかにしたい。」という想いがあります。社名に寿司とないように、F&LIに関しても、すしの以外のカテゴリーも考えています。

――いま、スシローではカフェ部がありスイーツを強化しています。F&LIでカフェをやる可能性もありますか。

木下 当然、あると思います。グループ全体の裾野を広げるほか、今グループにあるものをより進化させる、深める、高めることもやります。F&LIが関わることで進化する部分があれば、それもやっていきたい。ただ、スシローのカフェ部に関しては、今まではスシローのすしと合わせてどう満足していただくのかを考えています。もし本当にカフェをやるなら、またちょっと違った立て付けみたいなことも考えないといけない。単純に作った新事業が、どんどん広がることも当然するべきです。一方で、新たにチャレンジしたことがスシローの業態に戻っていくみたいなことが、当然あってもいい。そういう意味でのスシローとF&LIの相乗効果も、あると思います。

――新業態の撤退の判断が早いのが、F&LIの業態開発の特徴ですね。

木下 まず考え方として、新規出店に関してはトライアンドエラーの繰り返しです。当然、絶対に成功させるという想いで立ち上げますが、それがうまくいかなかった場合は、修正したらいい。また、もし本当に立ち行かないんであれば、新しいチャレンジにリソースを投入すべきです。チャレンジしてみて、それをきちっと判断して、うまくいかなければ、次の動きに変える。これが基本で、当然、会社全体の取締役も含め、水留も含めて会社のマネジメント全員が共有している価値観です。なので、うまくいっていないものを長い間ずっとやり続ける必要はないと思っています。

また、新しい事業をやる中で、その事業が本当に成功するのかどうか、いくつかのパターンで試しています。立地を変えるとか、価格帯を変えるとか、同じコンテンツであってもお客様の体験価値や利用シーンを、いろいろなチャレンジをしながら探っています。例えば、3店舗を出して3勝0敗だったらいいですけど、2勝1敗、1勝2敗の中で何が見えてくるのかをちゃんと見ています。最終的には、経済合理性で、客観的にきちっと将来の収益性を見て、一つのタイミングできちっと判断するということは社内でもずっとやり続けています。当然一つの業態を作って運営するのは相当な労力がかかるので、その経済合理性をしっかり考えた上で判断をするということを繰り返しています。

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