メルカリ/「AIによる不正監視・スコア化」「メルカリ鑑定センター」など導入
2025年05月21日 14:49 / IT・システム
メルカリは5月21日、新方針として不正利用者の「徹底的な排除」と顧客の「徹底的な救済」を掲げ、3つの取り組みを導入することを発表した。
新方針では、顧客間で解決が難しい問題に対して関与を強め、不正利用の未然防止に留まらず不正利用者を徹底的に排除する。具体的には、AI技術を活用した不正監視の強化と、新たに設立する「メルカリ鑑定センター」により、悪意のある利用者の撲滅を目指す。潜在的な問題を特定・排除することで、犯罪行為を許さない環境を構築していく。
併せて、顧客に対する「全額補償サポートプログラム」を開始。詐欺行為などの被害を受けた顧客をサポートすることで、正しくメルカリを利用している顧客が不利益を被らないようにするとともに、速やかにトラブルを解決するという。
迫俊亮 執行役員は「不正利用については、SNSで拡散されている事案に限らず、お客様から多くのお問い合わせを頂いている。利用者が2300万人規模のサービスに拡大する中で犯罪が多様化する場所になった。これまでと運営のスタンスを変え、トラブルに対し積極的に関与する必要がある。
テクノロジーと人を融合してサービスを運営することで、提供するサービスの品質を上げたい。メルカリを安心安全にご利用頂くことが全事業の基盤となる。しっかりと取り組みたい」と意気込みを語った。
国内での詐欺犯罪が増加する中、メルカリはこれまでも本人確認の徹底やアカウント監視、パスキーの導入などによる未然防止策を実施してきた。だが、顧客の認知誤認を誘って買い手が望まない商品を購入させる手口や、購入品にクレームをつけて返品する際に偽物を郵送する「すり替え詐欺」など、悪質な利用者による詐欺行為が頻発。各事案はSNS上でも物議を醸した。
そこでメルカリでは2024年11月、サポート体制の強化と補償方針の大幅な見直し、不正利用者対策の強化を行うことを発表。同発表を契機に、より安心安全な取引環境としてのマーケットプレイスのあり方、その実現に向けた具体的な取り組みについての議論を重ね、今回の新方針発表に至った。
まずはAI技術を活用して不正監視を強化する。不正手口の多様化・巧妙化に対応するため、AIに疑わしい行為を学習させて不正のリスクをスコア化。不正利用者を特定を図る。特定した不正利用者に対しては、アカウントの利用制限、刑事事件化、民事訴訟、その他手段による責任追及(損害賠償請求・不当利得返還請求等)などの対応を強化していく。
判断基準の強化に関する取り組みとして、商品状態の定義にも着手する。例えば、商品の開封状況や傷の有無、初期傷や劣化具合によって、新品・美品・使用済みであるかなど、人によって商品状態に対する認識が異なることが多々ある。
迫執行役員は「出品者と購入者の認識が異なることで発生する『期待値相違』の割合は、メルカリでのトラブルの原因としては割合が高い。出品したお客様にとっては新品だと思っている商品でも、購入者にとっては使用した形跡があるように感じることはトラブルの原因となる。こうした問題を未然に防ぐためにも、今まで以上に商品状態の定義を明確にする取り組みを強化していく」と述べた。
なお、スコアはメルカリ内部での指標となり、一般の利用者からは見えない。利用者にとっては、従来通り出品者レビューの項目が商品購入の判断軸となる。
次に、メルカリ内での偽ブランド品を撲滅するため、自社運営の「メルカリ鑑定センター」を新設する(9月稼働予定)。既にIVA社の真贋鑑定サービス「FAKEBUSTERS」と連携した鑑定サービスを提供しているが、これまでの取り組みで得たノウハウを活かして、自社での鑑定業務に取り組む。鑑定対象商品を拡大し、鑑定不備発生時の商品買取や、対象商品の鑑定義務化も検討するという。
そして詐欺行為の被害者を救済する「全額補償サポートプログラム」を7月に開始する。顧客がトラブルに遭った場合に、購入代金や販売利益の全額を補償することを明確化。補償を受けるためのガイドラインを公開し、トラブル発生から補償対応までを迅速に行う。手厚いサポートを通じて、速やかに顧客の不安を解消できるよう注力する。
今後、これらの取り組みを継続的に推進し、メルカリで発生している不正利用の状況や各種取り組みの効果を定量的に可視化した「透明性レポート」を8月に公開する。定期的に開示して、外部機関との連携を強化していく考えだ。
取材・執筆 古川勝平
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