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イオントップバリュ/土谷社長インタビュー、M・Z世代向け商品開発の秘策

2024年03月04日 10:00 / 経営

イオントップバリュ土谷美津子社長は2月28日、今後のトップバリュの商品戦略について、M・Z世代をターゲットとした商品開発に一層注力する方針を発表。次の50年に向けた商品開発について「顧客の声を聞き続けられる組織になる」と意気込みを語った。

<土谷社長>

――2023年の振り返りについてお聞かせください

土谷 メインストリームのトップバリュで売上が前年比8%増と、これまでにない伸びを見せています。一番手ごたえを感じたのはレディミール第1弾の「もぐもぐ味わうスープ」ですね。ごはんにかける第2弾も大変好評で、とにかく手軽でおいしいと言われたのと、たくさんの種類を出したことで飽きることなく購入頂いています。

1人暮らしの方に対応したのがヒットの要因だと思いますが、家族で別々の時間帯に食事をする方にも好まれています。

――売上増につながった要因は

土谷 やはり顧客に直接聞いて製品を作ったことです。私たちの世代の独りよがりでは駄目なんだと。若年層をターゲットとした商品開発時に一定年齢以上のメンバーも含めて、学生とディスカッションする新しいチャレンジをしています。最初はこちらが緊張しましたが、やりがいのある取り組みでした。

――NBと比較した時の強みは

<ナッツ・ドライフルーツ>

進化系スナック&スイーツ登場

土谷 店舗があるということですね。顧客の声が直接入ってくることに加え、その声を直接聞いている店頭の従業員が力強いです。また、22万人のグループ従業員の方々が複雑なアンケートにも答えてくれて、これを商品開発に活かせることは、なかなかないと思います。顧客・従業員の声を聞きながら開発できるのがトップバリュの圧倒的なメリットですね。

昨年発売したナッツは新しい味付けで大変でしたが、リピート率が非常に高く、(開発を経て)トップバリュも力がついてきたと思います。PBだからこそできる顧客目線の冒険があると思っていまして、NB大手メーカーですと、マンゴーボールやキャラメルマキアート味のナッツなどにチャレンジするのは、なかなか難しいのではないかと思います。

――24年度の新商品は何品目出す予定ですか

土谷 新商品・リニューアル品を合わせて2500品目は出したいです。現在5000品目を取り扱っていますが、そのままですと顧客が飽きてしまうので、半分は変えていきたいと思っています。24年度は、冷食やお菓子、簡単にすぐ食べられるタイパ需要に応える部分で、しかも本格的なものが軸になると思います。

――社内の風通しが良くなった印象を受けます

土谷 新商品のプロジェクト体制が効果的だったと思います。クラフテルシリーズの開発にあたり、まずプロジェクトを立ち上げまして、商品開発部だけではなく、品質管理から販促メンバー、人事の担当者まで全部集めてグループにし、ディスカッションする体制をとりました。各人が最後まで責任を持って参加するので、商品開発部ではない人も自由に発言しています。

プロジェクトの後半には、開発に本来関係なかった人が工場に行ったりするなど、そうした流れで風通しが良くなったと思います。今後も商品開発はこの流れで進めます。私のアイデアだけでは絶対、失敗しますから。

――今後の方針は

<トキメクおやつ部>

土谷 M・Z世代の方と議論するしかないと思います。例えば、我々にとって「おやつ」は「おやつ」でしかありませんが、Z世代にとっては「ごはん」と「おやつ」の境目がないことを知りませんでした。だからこそ、間食に少しずつ食べられる「トキメクおやつ部」のようなチャレンジをしました。健康的なものから味の濃いものまで、さまざまな需要に対応します。何が売れるかは正直分からないです。

また、会議でむやみに反対するのも駄目ですね。「これはおいしいのかな」と言ってもいけませんし、パッケージを見て「このデザインはどうなんだろう」と思っても意見を言わない。(仕上がったものを)学生さんが見て「良い」と言ったのならそうしましょうと。

<BAR-ish>

新商品の「BAR-ish」の場合、発表前にもう1つ別のデザインがあったのですが、若い方に見てもらった時に「これは平成ですね!」と言われてしまって。我々の感覚は古臭いのかな、などと思った経緯があって、今のデザインに変更しました。

――商品開発において、次の50年に必要なことは何だと思いますか

土谷 顧客に聞き続けることだと思いますね。顧客へのヒアリングは一見簡単そうで、すごく難しいと思っていまして、なかなか簡単には答えてくれないんですよね。質問する力もすごく必要だなと。とにかく皆が力を付けて、顧客の声を聞き続けられる組織にならないと駄目だと思います。

――販促はどのように行っていきますか

土谷 まずは渋谷109でM・Z世代に向けてポップアップを開催します。初めての取り組みで大変ですが、やってみましょうと決まりました。弊社で今までになかった新しいやり方になります。あとは店舗の従業員にもっとトップバリュを知ってもらうために、社内で新商品を早めに食べてもらい、情報を提供したりして、発売時に顧客にきちんと説明できるようにします。一見、地味ですけど大きな販促なのです。我々には、店舗従業員という22万人のすごい味方がいますから。

取材・執筆 古川勝平

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