セブンイレブン/阿久津社長「今足りないのは好感度とチャレンジ精神」
2025年07月11日 13:08 / 経営
セブン&アイ・ホールディンスの2026年2月期第1四半期の決算会見において、セブンーイレブン・ジャパンの阿久津知洋社長は、同社の課題は「好感度とチャレンジ精神の不足」との認識を示した。国内コンビニエンスストア事業の営業収益は2234億7400万円(0.7%減)、営業利益は545億3200万円(11.0%減)だった。主なやり取りは以下の通り。
26年2月期第1四半期は客数伸び悩みで減収減益
――第1四半期の国内コンビニ事業は減収減益だったが、その原因は
客数の伸び悩みが要因だ。(節約志向の高まりに対応し、手頃な価格で提供する)「うれしい値」商品の導入を進めていく中で、一定の客数改善は図れた。
しかし、原材料費の高騰もあり、(価格の安い)「うれしい値」の粗利の低さを高付加価値商品でカバーするに至らなかった。お客様を誘致する施策も十分でなかった。
粗利の改善のため、今期ファストフードの強化を掲げたが、セブンカフェベーカリーは主に下期に拡大するということに加え、従来の揚げ物カウンター商材についても新しい施策が不足していた。
――客数回復に必要なことは何か
客数に関わる根本的な部分を考えると、1番の要因はお客様に商品の価値が届いていない、お客様からの好感度が私たちに不足していて、それが客数の伸び悩みに影響していると思っている。
やはり商品の品質向上はもちろんだが、マーケテイング戦略を見直し、ブランド想起率を上げていく、これに尽きると思っている。
重要なのは価格が多少高くても、お客様が買いたいと思うような施策だ。マーケテイング全体の戦略の中で、お客様に価値が伝わる仕掛けを下期に向けて磨き上げたい。
課題は好感度とチャレンジ精神
――今一番の課題は
当社の今一番の課題は、新しいことにチャレンジしていくというカルチャーに変えていくことだと思っている。
今まで非常に強いトップに率いられて、やるべきことを徹底するという文化で成長してきた。これまではそれでよかったが、今の時代はそれだけでは成長できない。
人々の価値観が多様化し、複雑な社会になっていく中で、それだけではうまくいかなくなってきた。過去の成功体験から抜け出す必要があると認識している。
――過去の成功体験から抜け出すとは
当社はどこか真面目で、優等生的で、一歩抜け出したような面白みが商品や店舗に不足していると思っている。
社長就任から、2000人ぐらいの社員と直接会って、現場で悩んでいること、課題だと思っていることを聞き取りを進めている。その中でも挑戦する意識は足りていないと感じたが、同時にがんばっていこうという気持ちはある。
商品を作り出し、その情報を今まで十分に活用できていなかったSNSも利用して発信していく。過去の成功体験から一歩抜け出して、Error&Learnで失敗してもそこから学べばいいのだという精神で進めていきたい。
加盟店と膝詰めで前向きに挑戦
――実際の挑戦について教えてください
6月に「おにぎり・寿司スーパーセール」を開催した。さまざまなリスクのある中で、新経営陣として一つの挑戦だったが、6月のデイリー商品が伸び、既存店売上高は前年同月比2.0%増まで回復した。
セールの効果あってのことだが、根本的にお客様にセブンイレブンの価値を理解して、来ていただくきっかけになったと考えている。今後も、より魅力的な商品を作っていくこと、マーケティングの年間計画を見直して、より魅力的な販促に変えていく。
合わせてオペレーションの情報共有も強化し、これら含めて売り上げ・利益向上に向けて、このセールの時のように、加盟店と膝詰めで前向きに打ち合わせていくことをしっかり続けたい。
――今後の巻き返しのための戦略は
おにぎり、弁当に代表されるデイリー商品の利益改善が、鍵だと思っている。高付加価値商品を含めて注力していく。
また、カウンターで販売するファストフード商材も利益率の高い商品だ。第1四半期では、商品が変わり切らない中苦戦したが、セブンカフェベーカリーは下期拡大し、2025年度中に8000店舗で導入する。ファストフードの売り上げが拡大すれば、粗利の改善につながっていくと考えている。
取材・執筆 鹿野島智子
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