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ヤオコー/「チェーンとしての個店経営」を深堀、川野社長が語る成長戦略

2017年12月15日 20:25 / 流通最前線トップインタビュー

郊外ロードサイド立地で成長を続けてきたヤオコーが、新たな立地開発を加速している。11月7日に、東京・成城に初の都市型小型店「八百幸 成城店」を出店、11月22日にはJR浦和駅前の浦和パルコ地下1階に駅前ファッションビルに初出店となる「ヤオコー浦和パルコ」オープンした。

28期連続の増収増益を達成し、着実に成長を続けるヤオコーは2018年3月期で第8次中期計経営計画を終え、来年度から第9次中期経営計画を開始する。

川野澄人社長は、第8次中期経営計画を振り返り、改めて「チェーンとしての個店経営」を深堀し、第9次中期経営計画でさらなる成長を目指すことを表明した。

<川野社長>
川野社長

――第8次中期経営計画の評価は。

川野 「スーパーではなく、ヤオコーと呼ばれる存在へ」ということで、いかに独自化を進めていくということがこの3か年のテーマだった。この3年間はパートナーさんの採用というところで非常に苦戦をした。

雇用環境の厳しさはこれからも同様の環境が続くと思うが、いかに少ない人員と人時で、いい売場を作るのか、いい商品を提供するのかが今後の大きな課題となってくる。その対応について着手した年だった。

既存店売上高は3年間、前年超えを維持していて、ヤオコーカードのデータを見ても買い物金額に応じたSランク、Aランクというロイヤルカスタマーが着実に増加をしている。

働き方についても、パートナーさんの採用難がある中でも、業務の改善を進めて着実に、朝の業務の標準化・効率化ができてきた。

今期は、働き方、働く意識も変えていこうという中で、働き方のメリハリも随分ついてきた。以前のように時間をかけてというところから、時間の中でどう成果をあげるのかというふうに変わってきた。

一方での反省として、従来のヤオコーの強みである売場での工夫とか、単品量販のチャレンジとか、そういったことに十分な力をさけずに、まずは標準化・効率化というところに向かった。

そういう意味では、まだまだヤオコーの楽しさだったり、良さが多くの店で発揮できていないのが現状だ。

夜の売場作りも、できたての惣菜を作れば、まだ売れる環境でありながらも、人手不足の問題、あるいは働き方の改革の中で、なかなか、そこに手が付けられていないのが現状で、その点も次の課題として残してしまった。

<ヤオコー熊谷物流センター>
ヤオコー熊谷物流センター

――人手不足に対してどう対応したのか。

川野 働き方の改善を進めたということと同時に、省力化につながる大型の投資をした。ひとつはデリカ生鮮センターの2期事業がスタートして、そこで、差別化商品のほか、お店の作業軽減につながる商品づくり、商品供給をスタートした。

新しい物流センターが10月から稼働して、お店の作業軽減につながる機能を持たせて効率化につなげたいと思う。

インフラ投資に対しての、効果・見通しについては、まだ余地があると見ている。次の3年間は、投資に対していかに効果を上げていくかという年になる。

投資では情報システムの刷新をしていて、来期の夏ごろから稼働する予定になっていて、そのことも合わせて働き方、作業の効率化につなげていきたい。

――次期情報システムの特徴は。

川野 基幹システムの刷新が中心になっていて、一から作り変える。まず効果としては、我々の発注、在庫管理が大きく変わってくる。まずは、発注・在庫管理で効果を出す。

いまのシステムだと自動発注がうまくのらず、個店の単品在庫もシステム上把握できない状況なので、それを把握できる状態にした上で次の発注のシステムの高度化につなげたい。

――具体的な取り組みに対する評価は。

川野 個別のテーマでは、商品・販売戦略、運営戦略、育成戦略、成長戦略という4つの大きな柱をもって進めてきた。運営面、特にオペレーションの効率化に力を注いだ3年間だった。

運営戦略では、まだまだパートナーさんの採用、定着化を図っていくかについては不十分な点もあるが、改善の進捗、それから効率化について、合格点をあげられるような成果が出たと思っている。

一方で、商品・販売戦略については、人手不足もあり、なかなかヤオコー本来の提案・売り方に力を出し切れなかった。

商品開発では、PBの中でもプレミアムのカテゴリーの商品郡であったり、あるいは、その対局にあるライフさんとの協業による「スターセレクト」の開発は着実に進み、お客様の支持を得ている。

今期から取り組んでいる青果の支持向上策。野菜でお客様に支持されようということについては、まだ着手したばかりの状況で、具体的な成果はこれからだ。

育成戦略は、働く意識が変わり、総労働時間についても着実に減ってきたので、さらに効率化を進めながら、いかに遊びの時間というか、「自分達で考えて、売場に反映できる」という時間を作れるかが次の課題になっている。

出店・成長戦略では、新店のオープンもしたが、お店によっては計画を上回るお店、不振なお店が出ている。当初の売上に達しないというお店も増えてきているので、不振店の対策ということは、これからの課題になっている。

この3か年では、「ららぽーと富士見店」や「浦和パルコ」など、新しいお店にチャレンジした。また、都市型小型店「成城店」の実験もスタートした。

特に「成城店」については、まだまだ認知度が低いということもあり、苦戦をしているところだが、これから都心部で戦っていく形を作っていきたいと考えている。

この3年で種をまいたので、次の3年でそれを形にして、それを急に広げるということではくて、まず型をきちっと作って次の展開に進めたい。

<八百幸成城店>
八百幸成城店

――成城店の課題は何か。

川野 客数が思ったように伸びていない。ご来店いただいた方には評価を頂いているが、客数が伸びていない。これは、当初から想定していたが、駐車場の台数が非常に限られている。何度か来られて、駐車場が満車で入れないという方もいる。ここは物理的になかなかできない部分だ。

いま、徒歩と自転車でお見えになる近隣のお客様、店から500m圏内のお客様の来店を上げれるかということで、品そろえについても、見直しをして対応を進めている。

――成城店では店休日を設けているが、他店でも店休日を導入するのか

川野 店休日を増やすことも検討しているが、来期はまだ、踏み込めていない。生活者のライフスタイルも変わっているので、働き方を考えると、休みを多くした方がいいという一方で、休みを増やすことではなくて、働き方を変えて、週休3日などもあり得る。そこはどいういう制度がいいのかいま検討している。選択肢の一つとしては店休日はあり得る。

――成城店のテコ入れ策は。

川野 急激に上げるというのは、非常に難しい。チラシに頼らないと言いながらも、やはり、カンフル剤的な一時的な客数アップということでは、チラシも使う。あとはお店の方で地道にお客様のファンを増やしていくということをお店では取り組んでいる。

それこそ口コミで広がる、あるいは、お客様に広めてもらうことが一番大事なことだと思っている。ここは我慢しながら、売場の状態を維持しながら、少しずつ、認知度を高めていく。

ご来店いただいているお客様には、高い評価をいただいていて、当社の調査では青果の部門は高い支持率があるし、精肉の和牛などについても、値ごろでいいというお褒めの言葉を頂いているので、そういったことが拡がってくれば、まだまだ、伸びてくる。それほど、焦ってはいない。

<八百幸成城店の店内>
八百幸成城店の店内

――都市型小型店の2店舗目は。

川野 まずは成城店で型を作るというのを、最優先しているので、2店舗目以降については、全く考えてないわけではないが、積極的に物件を取りにいっている状況ではない。

東京オリンピック以降、しっかりとその形で勝負できるという形を考えながら、やっている。都市型小型店はより長い期間で考えている。

首都圏に4000万の人口がいる中で、20km圏内に1500万がいる。現在の我々の主な商圏は、20km~40kmで、約1500万人の人口がいるわけでそこのシェアを上げていく。

将来的には、内側の1500万人についても、我々として商品・サービスを提供できるようにしたい。そのための店が成城店だ。

そこから先、3年後、5年後、10年後を考えた時には、都市型小型店は重要な位置づけになってくる。

<浦和パルコ店>
浦和パルコ店

――浦和パルコ店の評価と今後の駅前出店の計画は。

川野 浦和パルコ店は非常に好調で、当初の想定を超える売上で推移している。やはり駅前の集客の強さとパルコの商業施設としての魅了に加え、我々の力を発揮できるような売場面積を確保できた。

コンセプトに掲げたように、「駅前で、普段使いできるちょっといいお店」を提案できたということがお客様から評価をいただいている。

今後、同様の立地についても恐れることなく、出店ができると考えている。

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