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ヤオコー/「チェーンとしての個店経営」を深堀、川野社長が語る成長戦略

2017年12月15日 20:25 / 流通最前線トップインタビュー

――第9次中期経営計画を実施する3か年はどんな年となるのか。

川野 まず経営の環境を見ると、消費税の増税が2019年にある。そして2020年に東京オリンピックがある、この2つがビックイベントになるだろう。全体的な景況感でいうと、ゆるやかな回復を期待してもいい、一方で、増税を機に二極化がさらに進むと見ている。全体的にも節約志向が強まるという見方をしている。

労働環境でみると、人手不足、人件費の継続的な上昇は続いていく。最低時給も3%ずつ上がっているし、時給の上昇は止まらないと見ている。その中で、いかに生産性を上げていくか、少ない人手で、どれだか大きな効果を上げるのか、ということが大きな課題となる。いかに魅力ある職場で、働きたいと思ってもらえる方を増やせるかが大きなポイントになってくる。

この3か年は、新たな競争のステージの移行期と捉えている。米国をみると、アマゾンを中心とするネットでの販売が急速に伸びている。この3か年で、そこが逆転するほどの大転換があるかというと、そこまでの変化はないが、着実にEC、ネットでの販売に移行していく。

これは避けられないという認識にもとに、そこに対してどう対抗していくのか、いままで以上に強い来店動機を作らなくてはいけない。そこでしか買えない、そこでしか味わえないというものを、作り上げながら、お客様にいかにお届けするのかということについても、これから検討していかなければいけない3か年になると見ている。

その中でヤオコーとして、取り組むべき課題は、従来から当社の運営の方針としている「チェーンとしての個店経営」ということを、ほかでは真似できない、他社では真似できないというレベルまで、きちんと深める、強くするということが次の3か年の大きなテーマになると思う。

――なぜ、「チェーンとしての個店経営」にこだわるのか。

川野 我々の強みは個店経営で、それぞれのお店が、自分達の商圏のお客様を見ながら、品ぞろえを考える、自分達が買い物をしたいと思えるようなお店を自分達で作っていく。

地域のニーズをきちんと拾って、例えば、「小容量の商品をきちんと品ぞろえしよう」とか「こんな提案が受けるんじゃないか」とか、「小さいお子さんがいる若いご家族向けに、こんな商品化してみよう、こんな提案をしてみよう」という、個店、個店での対応・工夫。また、お客様への適切な接客・対応というのが、我々の大きな強みだと思っている。

だから、個店経営ということの強みをいかにこの3年間で磨いていくのか、自分達で考えて、自分達で売るとということを強くするというのは、この3か年、大きな課題であると思う。

同時に、それをやるためには、なかなかお店に人がかけられないという状況の中で、「チェーンとしての個店経営」の中のチェーン部分、システムだったり、仕組み、あるいは教育のツールであったり、そこを充実させながら、物流の仕組み、情報システムといった仕組みを使いながら、無理、無駄をなくしていくかが大きな課題となってくる。

まずはチェーンの部分を強くする、売り方を変える、いままでのインフラの投資とあわせて、仕組みをきちんとつくって、それを効果につなげていくということが、重要な取り組み課題だ。

<ヤオコー川越本社>
ヤオコー川越本社

――第9時中期経営計画の方向性は。

川野 第8次中期経営計画を踏まえて、やることをあまり増やさずに、いま取り組んでいることをしっかりと深めていくことを重点にする。引き続き商品で支持される商品開発は、重要なテーマのひとつとなる。

ネットの対応を考えても、やはりヤオコーでしか買えないという商品を、いかに充実させるかということにおいては、PB商品をはじめとしたオリジナルの商品の位置づけがますます大事になってくる。

PBへの信頼をより高めていく、あるいは、NBの商品を含めて独自の商品の開発をさらに進めていく。また、デリカ・生鮮センターを使って、デリカの商品づくりをさらに進めていくことが、次の3か年でも非常に重要なテーマになってくる。

運営戦略では、いかに仕組みとして対応できるか、まずは、あれをやる、これをやるではなくて、店舗の業務量を絶対的に減らすということが優先の対応になってくる。業務をきちっと見える化した上で、無くす、減らすということを優先的にやる。

ひとつは、新しいシステムを使って業務を変えていく、同時に、発注の精度を上げていく、そのことで無駄な在庫を削減していく。

デリカ・生鮮センターはまだ物理的な余裕もあるので、デリカ・生鮮センターを活用しながら、お店の省力化にさらにつながるような、商品提供ができるように考えている。

出店・成長戦略では、新規出店はいまは、まだまだ建築費が高い、物件についても取得コストが高い中で、ある程度、採算を重視しながら、物件を見極めていく。なので、出店数はこの3年と同程度を考えている。

今期を含めて、この3か年間で、新たな種まきをしてきた。農業事業、ネットスーパー、都市型小型店、種まきについては、次の3か年でしっかりと事業化できる形を整え、企業としてそれを本格的に展開するのを、2020年度以降考えたい。まずは、既存店を強くし、「チェーンとしての個店経営」を深堀する。

<ヤオコーのプライベートブランド>
ヤオコーのプライベートブランド

――構造改革はどう進めるのか。

川野 まだまだ具体的になってるところはない。とにかく店舗の業務量を大きく減らさないと、いまの我々の業態はできないと考えている。そういう意味でいうと、デリカ・生鮮センターの活用を含めて、さらに踏み込んで、プロセスセンターの機能をそこに持たせることも考えている。

同時に商品開発の面でも、いままでの延長の中の商品開発ではなくて、原料まできちんと踏み込んで、我々としてリスクを取って商品開発する。熊谷の新センターは、我々のPB商品、輸入商品を在庫する機能を持っているので、在庫のリスクも持ちながら、商品の仕入れ・開発をやる。

価格政策は、「価格コンシャス」という考えに基づいて、我々はハイ・アンド・ローをとりながら、主力品については、自社なりのEDLPという形で定番価格を下げてきた。この価格対応についても、3年間で形になるとは言えないが、より踏み込んだEDLP対応をする。

いま、成城店でチラシを減らした、あるいは、これからはチラシをほとんど入れないということで実験している。成城店での実験の成果を見ながら、お客様にチラシで来てもらうのではなく、生鮮だったりデリカの魅力、あるいは売場の日々の変化でお客さんに来てもらう。

そういった商品面・店舗の運営面、物流、情報システムの変更を含めて、個別、個別ではなくすべてつながっているので、魅力のあるヤオコーとしての形を作る。

<八百幸の鮮魚売場>
八百幸の鮮魚売場

――従業員のモチベーションをどうあげるのか。

川野 この3か年で改善を進めてきたが一方で、決められたことを決められたようにやるという傾向も強まっていて、お店の知恵と工夫、あるいはやる気が、正直、高め切れていないことが大きな課題だ。

いくつかやり方があると思っているが、やはりまだ人員的に十分ではない状況の中で、手をかけたいけど、手をかけられないというもどかしさがある。いかに店舗の作業を減らして、遊びの時間を作るかということが第一だと思っている。

その上で、いままでよりも店舗数は増えているので、なかなか目が届かない面もあるので、各部門のSVが、それぞれのお店をキチンとフォローできる体制を整えていきたい。

3つ目はいかにみんながやっていることを見ながら、それを認める、褒めるということを、やっていくかということだと思う。いまでも、パートナーさんが事例発表をする、感動と笑顔の祭典を続けている。

それ以外にも、いま成功事例でいい事例については、全店で、共有して、全店事例になった場合には表彰をする。

あるいは、お客様からのお褒めの言葉を2倍にしようとことで、ここ数年、取り組んでいる。お褒めの言葉のフィードバックをキチンとするということを含めて、我々の仕事がお客様にどう喜ばれているのかということについて、もっともっと共有していきたい。

これから考えなければいけないのは、SNSを含めて、いかに社員全員がつながりをもって仕事ができるのか、誰が何をやっているのかが見えることも大事だと思う。その点については、これからの研究になるが、社内広報のような社内向けの情報供給、情報発信による力を発揮していきたい。

いま、広報室に社内広報について宿題を出しているので、来期以降は、変わってくると思う。

<従業員の処遇を改善>
従業員の処遇を改善

――賃上げは検討しているのか。

川野 賃上げについてもこれからだ。最低時給は間違いなく上がっていくし、正社員についても給与の処遇については、改善を考えていきたい。

――政府は3%の賃上げといっているが。

川野 3%を約束するのは難しい。ただ、いま社員の残業に頼ってしまっているところがあるので、その残業は業務改善を重ねていけば減らせていけるものだと思う。ただ、そうすると社員にとっては手取りが減るということになるので、それについては、賞与なのか、なんらかの対応をしないと、一生懸命やって手取りが減るということになる。

一方で、仕事が遅くて時間かかっている人が残業になるという制度上の問題もあるので、なかなか残業の問題は難しい。ただ、全体的には残業を減らして、従業員の処遇改善というのは、何らかの形で考えている。

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