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日立/需要予測型自動発注で流通DX、在庫最適化・店舗負担を軽減

2021年06月04日 17:10 / 流通最前線テクノロジーズ

AI需要予測型自動発注サービスの導入事例

<需要予測と在庫最適化の両輪で価値を上げていくことが大切と音川氏>

「Hitachi Digital Solution for Retail / AI需要予測型自動発注サービス」の導入事例を紹介する。
一つめは大手スーパーマーケットチェーンの西友だ。「Hitachi Digital Solution for Retail / AI需要予測型自動発注サービス」を2019年10月から全国の店舗へ導入を開始している。

西友が販売する弁当・惣菜売場の商品のうち、自社工場で製造した商品等の自動発注からスタートし、2021年3月にはパッキングされた全惣菜商品を全店舗対象に展開、今年度中には店舗内調理品の発注提案数を提供する予定だ。

<AI需要予測型自動発注サービス事例1 西友>
西友

西友が店舗の弁当・惣菜売場における過去および発注日の各種データを日立に提供、そのデータを「Hitachi Digital Solution for Retail / AI需要予測型自動発注サービス」を用いて分析することで店舗別・アイテム別の推奨発注量を自動で算出して西友に提供する。その後、実績値と予測値を比較して自動補正することで需要予測精度を向上する仕組みだ。
弁当や惣菜は在庫として持つことが難しく、また棚に陳列できる期間も非常に短い。作りすぎても、また足りなくてもすぐに損害に繋がってしまうため、需要予測が非常に重要となる。AI需要予測型自動発注サービスはこうした商品の需要予測にも、(1)発注最適化による利益性の向上 、(2)自動発注による店舗への発注作業負荷の軽減といった効果創出を目指している。

「新型コロナの流行により弁当・惣菜の売れ行きや売れ筋は大きく変化しています。そうした変化にも対応しつつ、現在は店舗側でシステムの価値を享受するステージに入っており、提案対象の拡大に向けて進んでいます」と音川氏。

次に、作業服とアウトドアウェアの小売店を全国展開するワークマンの事例だ。ワークマンは、約10万品目の発注業務を自動化する新システムを2021年3月から2店舗に先行導入し、稼働を開始している。

「Hitachi Digital Solution for Retail / AI需要予測型自動発注サービス」をベースに、ワークマンの商品特性を考慮して、在庫回転率の低い定番商品に対応する自動補充型のアルゴリズムを組み合わせるとともに、在庫回転率に応じて自動補充型とAI需要予測型のアルゴリズムを動的に切り替える機能を追加している。

<AI需要予測型自動発注サービス事例2 ワークマン>
ワークマン

ワークマンはこれまでの作業服とアウトドアウェア関連製品に加え、「WORKMAN Plus」や「#ワークマン女子」など新たな商品展開にも積極的で、取り扱い商品数が多いだけでなく、定番品や季節品、新商品など商品特性が混在するため、全ての商品に対する発注業務の自動化が難しく、人手による作業がなくならないという課題があり、日立との協創によりそうした課題を解決することとした。

システム導入に際して検証を実施したところ、(1)店舗での1日あたり30分の発注業務を約2分に短縮、(2)欠品の抑制、(3)季節品の売り減らしによる在庫最適化といった効果をすでに確認しており、2021年11月までにワークマンの450店舗に導入、その後は順次国内全ての約900店舗へ展開する予定となっている。

「来店客層も大きく変化している中で、当システムを活用いただいた効果も現れ始めています。運用にあたってもパラメータのコントロールなども利用していただいており、そうした制御ができる仕組みにメリットを感じていただいていると思います」と音川氏は言う。

両社の事例について音川氏は、大事だと感じたというポイントを二つ挙げた。「一つは、当たり前かもしれませんが、実際に導入前に店舗へ行って実態を見せていただいています。店舗の雰囲気やバックストックの状況など、実際に行かなければ分からないことはたくさんあります。もう一つは協創です。お客様と一緒の目線で導入しなければ実現できません。お客様にも本気になっていただき、ともに導入を進める。これが重要です」と音川氏は強調する。

そして両事例で共通する注目点が、目指しているのは発注の自動化にとどまらないことだ。「発注の自動化というと、発注業務の負担がなくなるというイメージですが、それだけではなく、発注業務はその上位に商品企画やマーチャンダイジングが存在します。そうした部分にも還元できる新しいシステム、業務ビジョンを作っていきたいというお話をさせていただいています」と音川氏は力強く語った。

「日立リテールビジョン2030」の実現に向けて

発注、在庫の最適化とともにリテール業界の大きな課題の一つが「物流の最適化」だ。物流は発注や在庫とも密接に関係し、またその最適化がコストにも大きな影響を及ぼす。

<Hitachi Digital Solution for Retail成長ロードマップ>
成長ロードマップ

上の図はHitachi Digital Solution for Retailのロードマップだ。2021年現在は需要予測、自動発注が中心となっているが、物流・配送の最適化のソリューションと連携した物流連携プラットフォームへ進化し、2030年向けて「日立リテールビジョン2030」を実現していく。

日立リテールビジョン2030は、「需要と配送の“自律化”」「サプライチェーンの“つながり”」「生活者の“幸せ”」の3段階の取り組みを掲げる。「物流との連携はすでに視野に入っています。近年はコロナ禍もあり、宅配なども増えています。店舗は社会インフラの一つです。商品を届けるという行為の改革も進めていかなくてはならないと思います」と音川氏は語った。

<需要予測から物流との連携まで幅広く提案したいと音川氏>
日立製作所 産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 流通システム本部 第三システム部 主任技師 音川 芳賢氏

日立製作所
産業・流通ビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部
流通システム本部 第三システム部
主任技師
音川 芳賢氏
音川氏略歴:
2000年:日立製作所入社 流通業担当SE部門に配属
2018年:流通システム本部 第二システム部 主任技師
2020年:流通システム本部 第三システム部 主任技師(現在)
入社以来、流通業種へのシステム/ソリューションの設計・構築/導入・サポートに従事。
2016年より小売業に向けてのデジタルソリューションのサービス開発・導入に従事し、現在に至る。

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