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ソフトバンク/安価で高精度なAI需要予測・映像解析で流通DX支援

2022年09月09日 14:00 / 流通最前線テクノロジーズ

消費者の購買行動が多様化する中、これまでの経験や勘に頼ったオペレーションだけでは、最適な店舗運営は難しくなっている。積極的にさまざまな業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むソフトバンクは、リテール向けにも多様なソリューションを展開し、顧客の課題解決を支援している。ソフトバンクが提供するAI需要予測サービスとAI映像解析サービスの二つのAIを活用したリテール向けDXソリューションを紹介する。

「サステナブルなフードチェーンの実現」を目指して

AI需要予測サービス「サキミル」は、ソフトバンクと日本気象協会が2022年1月31日に、小売り・飲食業界向けに提供を開始したサービスだ。ソフトバンクが保有する携帯電話基地局から得る端末の位置情報をもとにした人流統計データと、日本気象協会が持つ気象データ、導入企業が保有する店舗ごとの売り上げや来店客数などの各種データを、ソフトバンクと日本気象協会が共同で開発したAIアルゴリズムで分析して、高精度な需要予測を提供する。

「日本気象協会と当社で、フードロスや脱炭素、労働人口不足といった社会課題を解決するべく、共同で開発したサービスです」と語るのは、ソフトバンク法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 第一ビジネスエンジニアリング統括部 需給最適化PF事業部 部長の藤本 康史氏だ。

<サキミルで小売り向け客数予測を提供と藤本氏>
サキミルで小売り向け客数予測を提供と藤本氏

「サキミル」で現在提供している機能は、店舗ごとの来店客数予測だが、将来的には製造や卸まで含んだ、「サステナブルなフードチェーンの実現」を目指す。「まずは飲食・小売業向けの客数予測ですが、将来的には製造・卸まで含むサプライチェーン全体の効率化、最適化ができるソリューションを目指しています」と藤本氏。

<AI需要予測「サキミル」概要>
AI需要予測「サキミル」概要

安価に精度の高い需要予測サービスを提供

飲食・小売業界の抱える課題は、IT投資が進まず、ノウハウの蓄積も属人的、さらに労働生産性が低く、フードロスなど多くの無駄が発生している点だ。「原価と人件費が大きく、収益構造が薄利ですし、属人化したアナログなオペレーションで非効率な点が経営課題となっています。それを解決するために、AIとソリューションを融合させて、データに基づいた意思決定、オペレーションを可能にし、省人化・自律化を実現するのがサキミルです」と藤本氏は言う。

売り上げや客数、販促、店舗情報などの店舗データ 、「サキミル」が提供する人流統計データおよび気象データ、カレンダー情報などのデータを活用して、アルゴリズムが来店客数予測をアウトプットする。「店舗データをいただくだけで来店客数予測のデータをお返しします。現在はAPIでのシステム連携が前提となっていますが、システム連携は難しいという顧客に向けて、Web上のダッシュボード機能の搭載を予定しており、それにより画面上でデータのアップロードやダウンロード、結果の可視化ができる予定です」と藤本氏。Webダッシュボードは2022年度中の実装を目指している。

「サキミル」の強みについて藤本氏は次の4つを挙げる。(1)データサイエンティストや高度なプログラミング知識は不要。店舗データをアップロードするだけで予測結果を提供。(2)行動変容を把握できる人流統計データを活用することで、最新の人流データ実態を基にした予測が可能。(3)人の行動へ影響を与える気象データを活用することで、過去の来店実績だけに頼らない予測が可能。(4)大胆なIT投資が進みにくい業界へ導入しやすい価格での展開。

特に(4)の「導入しやすい価格」はこのサービスの大きな特徴だ。通信キャリアとしてソフトバンクが保有している膨大な端末の位置情報に関する、個人が特定されない統計データを活用する上に、データの処理や機械学習、予測の部分を汎用(はんよう)化・自動化させることで効率化し、サイエンティストへの依存度を軽減することで、予測に関わる人員コストを圧縮している。

「人流・気象データを使い、比較的安価に精度の高いサービスを提供することを目指しました」と藤本氏。AI需要予測ソリューションは、店舗ごとに14日間分の来店客数を毎日予測する。価格は、店舗ごとに初期費用3300円(税込み)/月額費用5390円(税込み)だ。

AI需要予測ソリューションの導入事例

東海地方を拠点にスーパーマーケットやドラッグストア、ホームセンターなどを展開するバローホールディングスでは、発注最適化による欠品(機会ロス)の改善、廃棄(フードロス)の減少を目指し、AI需要予測ソリューション「サキミル」を導入した。

バローホールディングスは従来、商品により複数の在庫発注方法を採用してきた。今回はまずその中でPI値型(来店数1000人あたりの購買率=PI値を算出して来店客数予測との乗算により算出する方式)で発注している部分を「サキミルでの予測来店客数×PI値」を基に発注し、検証を実施した。

「検証の結果、サキミルの来店客数予測精度は約93%で、欠品・廃棄の削減に貢献できました。特に、気象データの有用性については顧客からも高い評価を得ました」と藤本氏。

検証はバローホールディングスが運営するドラッグストア「Vドラッグ」で実施され、好結果を受けて、スーパーマーケットやホームセンターなど含め、バローホールディングスの全1200店舗を対象に順次導入予定だという 。

「バローホールディングスは、脱炭素社会の実現や食品廃棄物の削減といった社会課題の解決に積極的に取り組まれています。サキミルを通してそうしたところもご支援できるように進めていきたいと思います」と藤本氏は言う。

また、ゴディバジャパンでも、需要予測を軸としたオペレーション改善と販促の最大化を目指して、約300店舗で「サキミル」を導入することが決定している。

>>>次ページ 神戸物産がAI映像解析「STAION」を実験導入

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