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スーパーマーケット/「キャッシュレス決済」導入メリットも手数料に課題

2020年06月29日 17:10 / 経営

全国スーパーマーケット協会は6月29日、スーパーマーケットにおける「キャッシュレス決済に関する実態調査」を発表した。

6月末に経済産業省が実施しているキャッシュレス・ポイント還元事業が終了することに合わせて、今後のキャッシュレス決済の動向を調査したもの。

調査によると、キャッシュレス決済の取扱いによるメリットとして、レジ(会計)時間の短縮、現金管理の軽減のほか、新たな客層の発掘が上位に挙げられた。一方で、今後のキャッシュレス決済の推進に障害となる主な要因として、手数料率や、キャッシュフローに関する懸念が多くあがった。

6月12日~6月25日、2019年版「食品スーパーマーケット名鑑」掲載企業966社を対象に調査を実施。回収件数は301社(回収率31.2%)で、内訳は、キャッシュレス・ポイント還元事業対象・参加企業213社、キャッシュレス・ポイント還元事業非対象企業71社、キャッシュレス・ポイント還元事業対象・不参加企業15社、不明2社だった。

サーベイリサーチセンターが、FAXとwebを併用して調査を実施した。

<キャッシュレス決済比率の推移>
キャッシュレス決済比率の推移

2019年10月1日に、キャッシュレス・ポイント還元事業が開始されてからのキャッシュレス決済比率を訪ねたところ、決済比率は、元事業の開始前15.5%から6月時点36.7%へと大きく上昇しており、利用の普及が進んでいる。新型コロナウイルス感染拡大前2月から、拡大後6月にかけ、特にキャッシュレス決済比率が上昇した。

<導入しているキャッシュレス決済種類>
導入しているキャッシュレス決済種類

導入しているキャッシュレス決済種類を事業開始前後で比較したところ、すでに導入が進んでいるクレジットカードや電子マネーと比較し、キャッシュレス・消費者還元事業の期間中、QRコード決済(スマホ決済)の導入が進んだ。

<キャッシュレス決済のメリット>
キャッシュレス決済のメリット

導入企業が感じるキャッシュレス決済導入のメリットは、「会計時間の短縮」が最も多く、「現金管理の軽減」や「新たな客層の発掘」が続いた。「売上の増加」や「買上げ点数の増加」については、事業参加企業で事業非対象企業に比べやや回答割合が多かった。

「その他」として、コロナウイルス感染防止対策への効果を挙げる回答が多かった。

<事業終了後のキャッシュレス決済の導入意向>
事業終了後のキャッシュレス決済の導入意向

事業終了後のキャッシュレス決済の取り扱い意向を聞いたところ、事業終了後に、キャッシュレス決済の取り扱いを止める意向はほとんどなかった。

今後、キャッシュレス決済比率が「さらに上昇」した方がよいと考える企業と「現状維持」、「低下」したほうがよいと考える企業に回答が割れた。

12月調査と比べ、キャッシュレス比率が「さらに上昇」したほうがよいとの回答が増加し、「低下」したほうがよいとの回答は大きく減少した。

<事業終了後の決済手段の拡大意向>
事業終了後の決済手段の拡大意向

事業終了後のキャッシュレス決済の種類については「現状維持」が最も多い。事業非対象企業では「増加」させる意向も多かった。

<キャッシュレス決済導入に新型コロナウイルスが与えた影響>
キャッシュレス決済導入に新型コロナウイルスが与えた影響

新型コロナウイルスがキャッシュレス決済に関する経営判断に与えた影響を聞いたところ、キャッシュレス・消費者還元事業参加企業の約4割、非対象企業の5割で、新型コロナウイルスの感染拡大が今後のキャッシュレス決済取扱いの意向に影響を与えたと回答した。

<キャッシュレス決済を継続可能な手数料率>
キャッシュレス決済を継続可能な手数料率

維持・継続可能なキャッシュレス決済手数料率水準を尋ねたところ、平均は1.4%だったが、最も多かったのは1.0%~1.5%の間、次いで2.0%~2.5%の間が多かった。

増井徳太郎副会長は、「業界の営業利益率が1.0%~2.0%と言われている中で、キャッシュレス決済を導入可能な決済手数料水準が出ていると思う。経済産業省は、決済手数料を公開することをキャッシュレス決済事業者に求めているが、決済手数料の引き下げについてもリーダーシップをとって欲しい」と述べた。

<増井副会長>
増井副会長

今後のキャッシュレス決済に取扱いに関する不安や要望では、「キャッシュレス決済のコスト(決済手数料、システム使用料)を加盟店のみが負担する現状のビジネス構造を、国として見直すべき」「広域型の決済サービスは、手数料が高く、1%の利益率が命取りとなる小売業、スーパーにとっては、負担が大きい。レジ対応の効率化よりも、決済手数料の負担の方が、インパクトが大きいと感じる」といった声があった。

増井副会長は、「キャッシュレス決済を社会インフラとして考えるのか、各事業者が集客などのサービスとして実施するものなのか、日本では位置づけがはっきりしていない。キャッシュレス・ポイント還元事業によって、キャッシュレス決済機器を導入する企業は増え、入口はできたが、今後、どうするのかの絵ははっきりとはない。今後、消費税の総額表示の永久廃止を求めたように、他の業界団体とも連携して、キャッシュレス決済を導入する上での決済手数料問題などについて、行政に要望を出す可能性もある」と述べた。

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