三井不動産/お取り寄せグルメサービス「mitaseru」急成長、売上は前期比3倍超に
2025年11月20日 17:04 / 経営
三井不動産が子会社を通じて展開しているお取り寄せグルメサービス「mitaseru(ミタセル)」が急成長している。2025年度の売上は前期比3倍超になる見込み。2030年の売上目標50億円に向け、拠点拡充やサイト刷新など事業基盤の強化を進めている。
「mitaseru」は、名店のメニューをレシピ通り、専門の料理人が手作りで調理し、食材の仕入れから製造、販売まで一括で行うサービス。三井不動産の事業提案制度から立ち上がり、2023年4月に事業を開始。その後2024年4月に新会社「mitaseru JAPAN」を設立した。
そのmitaseru JAPANが11月20日に事業戦略説明会を開催。松本大輝社長が飲食業界を取り巻く状況を説明した。それによると、コロナ禍以降、人手不足を背景に経営難に陥る飲食店が増え、倒産件数は2025年上期に過去最多を更新したという。
そうした中で「mitaseru」は製造から販売まですべて請け負うことで飲食店に負荷をかけないビジネスモデルを構築。監修ではなく、店舗と同じクオリティの商品を共同開発することを強みとする。店側には「のれん代」を支払い、新たな収益源を提供する。
サービス開始時は21店舗・35商品をラインアップしていたが、2025年11月時点では50店舗・97商品に拡大。2030年に100店舗の参画を目指す。
ただ、昨年6月の段階では、100店舗参画は2026年に達成する方針だった。今回、計画を変更し2030年まで延長した。その理由について松本社長は取引する店舗を厳選しているためと説明する。
「焦ってお店を増やすのではなく、お客様の声を聞きながら本当にいいお店をセレクトしたいという思いで、目標を2030年に改めた。実際のところ、お断りをさせていただくケースもある。我々としては厳選したものをお客様に届けたい」
そうした方針のもと、今回新たにミシュランガイド東京2026の星付きレストランを含む新商品7品を提供する。スペイン料理のZURRIOLA(スリオラ)の「海の恵みのイカ墨リゾット」(税込2970円)や、アロマフレスカ銀座(現Shin Harada)の「ポルチーニ茸のクリームペンネ」(1890円)、相撲茶屋 佐賀昇の「復刻・特製柚子胡椒と味わう塩ちゃんこ鍋(1.5~2人前)」(3996円)など。
さらに飲食店向けのビジネスモデルを拡充する。専属シェフが手作りするこれまでの「商品開発モデル」に加え、新たに「商品仕入れモデル」を開始。商品を飲食店から買い取り、発送や顧客対応などはmitaseru側が行う。仕入れモデルでは水たき玄海の「伝統仕込みの白いとり鍋(2人前)」(6966円)など10商品をラインアップする。
事業成長に合わせ、新たな商品製造・発送拠点も立ち上げる。11月に、三井不動産が千葉県船橋市で展開する物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク船橋(MFLP船橋)」内に商品製造・発送拠点を着工。来夏の稼働を目指しており、既存の大阪拠点との2拠点体制となる。
新拠点は、大阪拠点に比べて約2.5倍の広さ。セントラルキッチン機能に加え、商品在庫保管が可能な冷凍倉庫スペースを備える。商品製造から保管、配送まで一貫したサプライチェーンを構築する。「mitaseru」の顧客の6割が首都圏在住のため、配送のリードタイムを短縮し、サービス品質向上につなげる。
事業は好調に成長を遂げており、今期(2025年12月期)は前期比で3倍超の成長を見込む。2030年までに50億円の売上実現に向け、進捗状況も順調のようだ。
「売上は初年度予算を達成し、順調に伸びている。さらなる成長が重要になるということで、今回サイトのリニューアルを実施した」(松本社長)
10月3日の「mitaseruオンラインストア」リニューアルでは、三井不動産が資本業務提携を結ぶSUPER STUDIOのECプラットフォーム「ecforce」を採用。サブスクリプションサービス「名店ごちそう便」を始めたほか、メンバーシッププログラム「mitaseru CLUB」の実装、決済手段の拡充を行った。
取材・執筆 比木暁
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