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明治のスペシャリティチョコレート「明治 THE Chocolate」を探る

2017年04月03日 19:01 / 流通最前線トレンド&マーケティング

「スペックではなく、物語を売る」。明治のスペシャリティチョコレート「明治 THE Chocolate」は、高品質なカカオへのこだわりと産地から販売まで一貫したストーリーを描いた商品戦略で、発売時想定の2倍以上を売り上げている。

コモデティ化する菓子業界でいかに、専門性、先進性を持ちながら、価格とのバランスが取れた魅力的な商品を送り出すのか。同社スペシャリティチョコレート担当菓子商品開発部の宇都宮洋之氏に開発の経緯を伺った。

<スペシャリティチョコレート担当の菓子商品開発部、宇都宮洋之氏>

■ 失敗から生まれたヒット

--THE Chocolate、好調ですね。

宇都宮 おかげさまで、順調に伸ばしていますが、実は、2014年にも名前も同じ、「The Chocolate」を発売しました。CM、販促にも積極的に展開し、一時的にはよかったのですが、その後は期待ほど売り上げがなく、消えてしまいました。ですから、今回は再挑戦というわけです。

売れなかった理由を分析したところ、カカオというチョコレートの素材からこだわった商品だったので、カカオの産地(ベネズエラ、ブラジル)などを一生懸命アピールし、物質的価値の高さを強調していました。

ところが、お客様に、カカオの産地である国がどこにあるか、その味のイメージなどが伝わらず、メーカーが訴えたい価値がお客様に浸透しなかったというわけです。

また、「日常の中で味わう、ちょっとしたご褒美と贅沢な時間」をコンセプトにした「HAREL」というプレミアムチョコレートも商品化しました。こちらは情緒的価値を重視し、共感できる、共有したくなる感性に訴える世界観を目指したものの、ともに期待したような結果にいたりませんでした。

--どのように商品コンセプトを変えたのですか。

宇都宮 カカオの産地、品質といったハード面と、チョコレートを食べるシーン、情緒的価値というソフト面を両立した商品の開発を目指しました。

カカオなど素材が消費者に届くまでイメージがわき、チョコレートを食べるシーンまでも提案しないとだめだと気付きました。

実際の市場と自分たちの商品を分析したところ、日本のチョコレート市場をフレーバー別では(2015年SRI)、ミルクが57.7%、ビターは17.0%の割合で購入されていました。

当時の「The Chocolate」は、ビターテイストしかなく、購入層の薄いところに商品を訴求していたのです。新たなスペシャリティチョコレートを発売する際、ビター・ダーク系だけでなく、大人のためのミルクチョコレートとして新しい提案が必要だと考えたわけです。

■ 100円か1000円かの両極端から中間価格帯を設定

宇都宮 板チョコレートなどに代表される一般的なチョコレート菓子は100円前後の価格である一方、デパ地下、専門店では板チョコ1枚1000円前後でも売られており、100円か1000円かといった両極端な価格の製品が市場を形成しています。

「THE Chocolate」は、この中間の市場を狙い、2極化している市場を埋める価格帯で、高いクオリティを持つ商品がコンビニやスーパーで買える、そんなイメージを開発に当たり描きました。

■ 自社でのカカオ豆確保にこだわった

宇都宮 現在の日本では、カカオの産地にこだわったBean to barの専門店も増えていますが、世界的な流れからするとチョコレートメーカーは、カカオを豆からでなく、中間製品として製造されたカカオマスを買い付け、加工するというメーカーへの分業化が進んでいます。

2010年カカオ豆の世界総生産量は約400万トンでしたが、日本の輸入量は約4万トンです。

カカオ豆輸入量は、世界から見るとかなり少なく、世界のカカオ・チョコレートビジネスは、大手資本による寡占化が進んでいます。

明治は、世界の大手メーカーから見ると、小さなメーカーですが、この世界的潮流に逆行し、カカオ豆からしっかり自社で管理し、販売までつなげることにこだわっています。

「THE Chocolate」のダークチョコレートは一般的なミルクチョコに比べ、約3倍のカカオを使い、香料を使わないので、素材であるカカオが非常に重要で、自社の優位性、差別化を図るためにカカオ豆にこだわっているのです。

■ ホワイトカカオのみを栽培する契約農園も設置

宇都宮 カカオの産地まで実際に足を運び、ベネズエラ、ドミニカ、ブラジルなどの農園で、カカオ収穫後の豆の選別、豆の発酵に使う器具や方法、発酵時間などを指定して、明治独自の品質の高い、おいしいカカオを作ってもらっています。

農園管理、持続的カカオ生産のために専用の発酵箱を寄贈し、高品質なカカオが得られるような取り組みも行ない、メキシコに幻と言われた高品質なホワイトカカオのみを栽培する契約農園を設置することも進めています。

<幻と言われた高品質なホワイトカカオ>

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