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グローサラント/スーパーマーケットとレストランの運営手法の違いが課題

2017年12月13日 18:17 / 流通最前線トレンド&マーケティング

三菱食品は12月13日、2017年の総括と2018年の展望について発表した。

2018年は、食を楽しむ幅を拡大する施策として、食材を購入でき、店舗で食事も楽しむことができる「グローサラント」型のスーパーマーケットが増えるものの、まだ本格展開には至らないとの見通しを示した。

<2018年はグローサラントも注目>
2018年はグローサラントも注目
出典:三菱食品発表資料

マーケティング本部長兼戦略研究所所長で執行役員の原正浩氏は、「2017年は当社としてもグローサラントの提案を行い、経営者層から非常に高い関心があった。一方で、スーパーマーケットの運営とレストランの運営手法は大きく異なるため、慎重な姿勢を見せる企業が多かった。来年はグローサラントを導入する店舗は増えるが、一気に拡大するとは思えない」と語る。

グローサラントとは、食品スーパーを意味するグロサリーとレストランをかけ合わせた欧米で使われている造語で、レストランに負けないクオリティの食事をスーパーの店舗敷地内で提供する業態を指す。店内で本格的な味を楽しめるグローサラントは、今、欧米で注目を集めている。

三菱食品が発表した資料によると、スーパーマーケットのイートインの市場規模の推計は、2014年916億1900万円から、2016年は1064億4000万円に拡大している(出典:エヌピーディー・ジャパンCRESTデータ)。

一方で、食品スーパーが販売する惣菜は、計画生産で製造した商品を売場に並べ、売れたら追加補充をするという運営なのに対して、レストランはお客の注文に応じて、受注生産で単品単位で商品をその都度、提供するという運営手法の違いがある。

惣菜は家で再加熱することを前提に商品開発するが、レストランのメニューはその場でできたてを食べておいしいことを前提に商品開発するといった違いもある。

<イオンが展開するペルグラーノ>
イオンが展開するペルグラーノ

イオンは7月28日に、JR新浦安駅前の商業施設「新浦安MONA」1階に、売場の30%をイートインスペースにした「イオンスタイル新浦安MONA」をオープンしている。

従来型の持ち帰り型惣菜ではなく、店内のイートインスペースで食べることを重視したパスタ専門店「PERGANO(ペルグラーノ)」、セミセルフ型の惣菜専門店「リワードキッチンプラス」、手作りサンドイッチ専門店「Sandwich shop」をイートインスペースに併設した。

2月19日に閉店した食品スーパー「ピーコックストア新浦安店」を、イートインと食品スーパーが融合した新業態としてリニューアルしたもので、新しい小型フードマーケットと位置付けた。

店舗面積は約1147m2、売場面積は約845m2、売場の30%をイートインスペースにしたのが特長で、84席のイートインスペースを設置した。売上目標は、旧ピーコックストア対比で20%増とした。

<イータリーグランスタ丸の内店>
イータリーグランスタ丸の内店

イータリー・アジア・パシフィックは8月30日、東京駅構内の商業施設「グランスタ丸の内」に、「EATALY(イータリー)グランスタ丸の内店」をオープンした。

イータリーは、「食べる、買う、学ぶ」が体験できる食物販とレストランが融合した店舗が特長で、店舗面積約450m2に、レストラン座席数80席、カフェ座席数30席を配置した国内最大規模店舗を出店した。

グランスタ丸の内店の、店舗面積構成比は食物販60%、レストラン40%、売上構成比は食物販50%、レストラン50%を想定する。

<SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE>
SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE

9月29日には、成城石井が京王線調布駅直結の商業施設「トリエ京王調布A館」1階に旗艦店「成城石井トリエ京王調布」と併設する形で、レストラン「SEIJO ISHII STYLE DELI&CAFE」をオープンさせた。

STYLE DELI&CAFEでは、食材や商品をお薦めの方法で調理したハンバーガーやステーキ、パスタなどをできたてで提供する。

実際に、食べてみて、気に入った食材や調味料があれば、すぐ隣の成城石井で購入できる仕組みとした。

<イトーヨーカドーの新しい食品売場>
イトーヨーカドーの新しい食品売場
出典:セブン&アイ・ホールディングス決算説明資料

10月12日には、セブン&アイ・ホールディングスが2018年2月期第2四半期決算説明会で、イトーヨーカドーにデリカ売場構成比をこれまでの24%から40%に拡大した、売場面積3000m2~3300m2の新食品売場を導入することを発表している。

井阪隆一社長は、「イトーヨーカ堂は上期に19億円の赤字となったが、これは本来強化する部門であった食品部門が減収となったことが大きい。食の外部化に対応した新しい売場フォーマットを導入することで、食品売場をテコ入れし、イトーヨーカ堂を再生する」と述べた。

「単身者世帯が増え、食の外部化が進む中で、中食の需要が拡大している。米国視察をよくするヨークベニマルの社長とも話をしたが、日本にはアメリカにあるようなグローサラント型(購入した商品を店内でレストランのように食べることができる業態)のスーパーがない。日本のスーパーができていない部分に挑戦し、ネット通販にないライブ感と鮮度感のある売場を作る」と語っている。

<カスミのイートインコーナー>
カスミのイートインコーナー

一方で、茨城県を中心にスーパーマーケットを展開するカスミは、グローサラントに対して慎重な姿勢を見せる。

石井俊樹社長は、「グローサラントは単に、食品スーパーの惣菜をイートインで食べさせるものではない。カスミはかつてファミリーレストランのココスを運営していたが、レストランで求めれるサービスはスーパーとは全く違う。注文した料理がすぐに出てくるなど、きちんとしたサービスを伴わなければ、失敗する。実質的な新規事業ともいえるもので、グローサラントについては慎重に検討している」と述べる。

カスミでも、新規出店店舗ではイートインスペースを拡大しているが、地域のコミュニティースペースやイベントスペースとしての役割を期待している。

12月8日に、茨城県龍ヶ崎市にオープンした「フードスクエアカスミ龍ケ崎中里店」では、イートインスペース内に、キッチンコーナーを設置。

メーカーと協力しながら、店舗で販売する素材や調味料を活用した、調理の実演や試食を行い、販売に結び付ける取り組みをしている。

<茅乃舎東京駅店>
茅乃舎東京駅店

8月30日に、JR東京駅構内地下1階の「グランスタ丸の内」に「茅乃舎東京駅店」と和食レストラン「汁や東京駅店」を出店した食品メーカー久原本店も、物販店とレストランの併設店舗には慎重な姿勢を見せる。

久原本家グループ本社社長の川邉哲司氏は、「物販とレストランの運営は大きく異なり、人件費構造も違う。東京駅という情報発信力のある立地だからこそ、レストランを併設し、実際に商品をゆっくりと味わってもらう場を設けたが、レストランそのものを事業の柱にしようと思わない」と述べている。

同店では、試食を重視しており、レストランとは別に常設の試食コーナーを設置し、お客が味を確かめた上で商品を購入できる工夫をしている。

<イオンはグローサラントを導入した小型GMSを検討>
イオンはグローサラントを導入した小型GMSを検討
出典:イオン発表資料

人件費や個別メニューの粗利率の違いなど、グローサラントに関してさまざまな課題があるが、イオンは12月12日に発表した中期経営計画で、グローサラントを含む新しい小型GMSを開発する方針を発表している。

「グローサラント」型スーパーマーケットへの関心は間違いなく高まっており、2018年は「グローサラント」に挑戦した新規出店が増える見込みだ。

■関連記事
イオンスタイル新浦安MONA/売場の3割がイートイン、店で食べる惣菜を提案
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イータリー/グランスタ丸の内に、レストラン併設の日本最大規模店舗オープン
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成城石井/食物販と連動したレストラン併設の旗艦店
https://www.ryutsuu.biz/report/j092804.html

イトーヨーカ堂/デリカ売場構成比40%、3300m2の新売場フォーマット導入
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