経産省/キャッシュレス・コンビニなど業界動向を課長が解説

2019年08月26日 16:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング

「コンビニ問題」持続可能な成長につながる議論を期待

――人手不足に起因して、コンビニの24時間営業が課題になっていますね。

伊藤 さまざまな要因がありますが、コンビニの問題も大きな視点で見ると、人手不足が背景にあります。また、最低賃金が上昇するなど経営環境が変化しています。

――6月に開始した「新たなコンビニのあり方検討会」の目的を教えてください。

伊藤 オーナーアンケートもやる中で、さまざまな声を聞きながら、社会的な期待に応えつつ持続可能な成長を実現するための、新たなコンビニのあり方を検討したいと思っています。

コンビニという業態が出たことで、日本の小売業は近代化してきました。フランチャイズ形態の中で、パパ・ママショップが近代化・高度化していった。日本で育ったコンビニは、海外でも普及するようになっています。

さらに、災害の中で防災の拠点だとか、防犯の拠点とか、いろいろな小売業以外の要素、単なる物販以外のサービスも提供している。地方では、大規模小売店舗が撤退した後の買い物の場といった社会的な機能もクローズアップされています。

一方で、過去に実施したオーナーアンケートにもあったように、人手不足やオーナーの高齢化もある中で、どうやってサスティナブルな状況を構築していくのか。こういったことが背景にあります。

――フランチャイズ規制法的な議論も含まれていますか。

伊藤 国会でも、これまでにそういった指摘はでています。ただ、これまで民間同士の契約の中で処理をされています。まさに、これからオーナーのヒアリングをやる段階であり、現時点で明確にこういう方向性でやると決まっているという話ではありません。

<新たなコンビニのあり方検討会>
新たなコンビニのあり方検討会

――現時点での検討会の進捗を教えてください。

伊藤 ユーザー調査出口調査をやっています。立地や時間帯によってもニーズが違うので、さまざまな立地や時間帯で、いろんな種類の声を拾っています。従業員調査に関しては、最近、コンビニで働いた人を対象に調査を行います。

また、8月21日にから、オーナーヒアリングを実施しています。ヒアリングの参加者は、公平性が求められるので、基本的に希望者の中から無作為に抽出しました。

――オーナーヒアリングではどのような声がありましたか

伊藤 まだヒアリングは始まったばかりです。全国8カ所で、全体で120人のオーナーからしっかりとお話をお聞きしていきたいと考えています。これまでのヒアリングでは、例えば人件費の高騰や利益配分の問題など、経営上の課題について幅広く御意見をいただいたところです。

――加盟店主は労働者か否かが、争点の一つとなっていますが。

伊藤 労働組合法と独占禁止法を所管しているわけではないので、経済産業省としてはお答えしづらいのですが、ただ、今回の問題にこういった論点もあるのは事実です。そのため、労働法の専門家、独禁法の専門家の方も委員になっていただいていますが、経産省としては、「コンビニが社会的期待に応えつつ持続可能な成長を実現するためのあり方を検討する場」としてとらえています。

人口が減少し、お店だけでなく消費者も高齢化する中で、どうやってコンビニを通じて、実現してきた小売業の近代化・高度化を継続するのかという大きな課題があります。

オーナーの声や、労働法や独禁法の文脈での課題があることも踏まえた上で、こうした大きな課題についてどんな方向性があるかを考えていくイメージです。

<インタビューに応じる伊藤課長>
インタビューに応じる伊藤課長

――最後に、何か仕事で参考になった書籍はありますか。

伊藤 課長就任前は、キャッシュレス推進室にいました。その時にクレイトン・クリステンセン教授の『イノベーションのジレンマ』という書籍の理論が参考になりました。キャッシュレスの世界では、まさに破壊的なイノベーションが起きていて、決済手段が根本的に変わろうとしている。

決済というのは装置産業でもあるので、これまでやってきた事業者が直ちに新技術に乗り換えるのは難しい。既存の事業者は別途、新しいところに出資したり買収したりといった動きも有効になってくる。まさに、『イノベーションのジレンマ』に書かれていることが、いまキャッシュレスの世界で起きていると感じています。

――仕事に対するご自身の信条を教えてください。

伊藤 これまで経験したどの仕事もそれぞれに面白く、勉強になりました。その都度、取り組むプロジェクトが糧になっています。毎回、課題が違うので、過去にやった例が通用しない。プロジェクトに取り組む中で、毎回、「いまのやり方がいいのか」見直すことを心がけています。

アランの『幸福論』の中に、「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意思によるものである」という言葉があります。仕事の上で、これは大変だとか、これはきついタイミングだという時には、むしろ一歩、自分で前向きに踏み込んでやっていく方が、チャンスになると思っています。主体的に、こういう風にやっていこうと思うことによって、道が開けることがあると感じています。

■略歴
1977年:新潟県生まれ
2001年:東京大学法学部卒業、経済産業省入省
2017年:大臣官房総務課政策企画委員
2018年:商務・サービスグループキャッシュレス推進室長
2019年7月:同グループ消費・流通政策課長

経産省/7月の商業動態統計、小売業は2.6%増の14兆3090億円

<前へ 1 2

流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。

メルマガ無料登録はこちら

トレンド&マーケティング 最新記事

一覧

経営戦略に関する最新ニュース

一覧

経済産業省に関する最新ニュース

一覧

コンビニに関する最新ニュース

一覧

最新ニュース

一覧