イオンのベトナム戦略1/マルチフォーマットで店舗網強化、中部にSCを初出店

2024年10月04日 17:10 / 流通最前線トレンド&マーケティング

イオンベトナム

イオングループは、アジアシフトを加速している。中でも、人口ボーナス期にあり、生活者の消費意欲が高いベトナムを日本に次ぐ第2の重点国とし、出店を強化している。イオンの古澤康之 執行役 ベトナム担当は「ショッピングセンター、GMS、スーパーマーケット、コンビニ、専門店のマルチフォーマットで、ベトナムの生活者のニーズに対応。大都市に加え、地方中核都市にも積極的に出店する。加えて、ベトナムのグループ会社間のアプリ統合で、デジタルでも顧客接点を増やす」と意気込む。この連載では、現地取材したイオングループのベトナム戦略と各業態の店舗をリポートする。

<マルチフォーマットで出店強化と古澤執行役>
マルチフォーマットで出店強化と古澤執行役

同国において、イオングループは、GMSなどを運営するイオンベトナム、デベロッパー事業のイオンモールベトナム、商品輸入・輸出・開発のイオントップバリュベトナム、ファシリティー事業のイオンディライトベトナム、コンビニエンスストアのミニストップベトナム、金融のイオンフィナンシャルサービスベトナム、アミューズメント事業のイオンファンタジーベトナム、スーパーマーケットのCitimart(シティマート)の8社を展開している。現在、店舗・業態開発、デジタル・金融事業、商品開発・物流構築を3本柱に、事業拡大を図っている。

店舗は、イオンベトナム計46店舗(GMS8店舗、SSM3店舗、SM20店舗、その他15店舗)、イオンモール7店舗、ミニストップ183店舗、シティマート13店舗、イオンファンタジー38店舗を運営。ホーチミン・ハノイの両都市とその周辺でドミナントを形成している。

社名 店舗数
イオンベトナム GMS 8
SSM 3
SM 20
その他 15
46
イオンモールベトナム 7
Citimart 13
ミニストップベトナム 183
イオンファンタジーベトナム 38
287

※2024年9月末現在

2023年度はミニストップ32店舗、イオンファンタジー10店舗、マックスバリュ3店舗、シティマート2店舗、グラムビューティーク2店舗、イオン1店舗、ペテモ1店舗の計51店舗をオープンした。

デジタル施策では、EC、アプリを拡充している。2024年度イオンベトナムのEC化率は5%程度だが、急速に伸びるEC市場をにらみ、EC事業を強化している。

イオンモールが今年、ECライセンスをベトナム政府から取得し、2号店の「イオンモール ビンズンオンキャナリー」で、テナント参加のマーケットプレイス型ECを運営。各テナントではEC限定商品なども販売している。お得な価格の飲食店クーポンが、価格に敏感なベトナム人に人気だという。ECは、10月末から「イオンモール ビンタン」「イオンモール ハドン」「イオンモール ハイフォン レチャン」にも広げる予定だ。

アプリに関しても、古澤執行役は「ネットスーパーの集客をメインに、アプリの改善を進め、アプリを軸にグループ経済圏を構築したい。具体的にはイオンの会員約250万人、イオンモール会員約100万人のデータを順次統合する。グループ各社の顧客データID、ポイントを共通化し、将来的にベトナムにおける共通アプリ導入を目指す」と話している。

ベトナムでもイオンモールは集客力で勝負

<イオンモール タンフーセラドン>
イオンモール タンフーセラドン

店舗・業態開発のうちショッピングセンターでは、2014年1号店「イオンモール タンフーセラドン」(開業当時テナントは約100店舗、ホーチミン市中心部から車で約30分)を皮切りに、2024年9月21日「イオンモール フエ」をオープン、現在7モールを運営している。2023年度は、既存6モール計約7600万人が来館した。

欧米・中国の景気停滞の影響を受け、ベトナムのGDP成長率は停滞しているものの、イオンモール ベトナムの2025年2月期第1四半期のモール専門店売り上げは、前年同期比8.8%増と堅調に推移している。

「イオンモール フエ」は、イオングループとして中部エリア初出店となるSCで、9月21日グランドオープンした。大都市と地方都市を結ぶインフラ整備の進展に合わせ、中部への出店も本格開始した。

イオングループ初の中部エリア出店「イオンモール フエ」

<イオンモール フエ>
イオンモール フエ
※イオンモール広報グループ提供

フエ市最大規模となる総賃貸面積約5万1000m2の同モールには、中部エリア初出店となる総合スーパー「イオン」、ファッション、インテリア、家電、アミューズメント施設など140店舗が登場。全店舗の約7割(83店舗)がフエ市初出店となる。駐車場も車1500台、バイク7000台と広域からの集客にも対応できるキャパシティーとなっている。

<大勢の来館者でにぎわうイオンモール フエ>
イオンモール フエ
※イオンモール広報グループ提供

9月16日のソフトオープンでは開店前に約2000人が行列を作り、23日時点で累計40万人超が来店したという。

さらに中部では、ダナン市に「イオンモール ダナン タンケー」をオープンすることを決定している。ベトナムの老舗企業TTCグループが開発する商業、ホテル、オフィス、アパートメントの新規複合施設の低層階部分を賃借し、都市型商業施設(賃借面積約3万m2)として出店する。

<タンフーセラドンの共用部>
タンフーセラドンの共用部

なお、1号店「イオンモール タンフーセラドン」は、2019年5月に増床、テナントも約200店舗まで拡大した。車2000台、バイク1万台と駐車場も充実しており、年間約1500万人が来館している。飲食店、アミューズメント施設、若者に人気のカフェや韓国コスメ、アニメグッズ、猫カフェといった若年層や子ども連れファミリーなど中間層のニーズに応えた店舗がそろう。

<若者に人気の韓国コスメ>
若者に人気の韓国コスメ

<猫カフェも人気>
猫カフェも人気

また、ベトナムのイオンモールの特徴は、日本で培ったサービス力と、現地のニーズに合わせたイベントや設備の充実だ。

イオンモール ベトナムの中川哲以ゼネラルダイレクターは「デベロッパーは、集客力がなにより重要だと考えている。イオンモールに出店したいと思われるよう、さまざまな施策を展開している。当社のモールは、売り上げ歩合賃料を採用している。そのため、テナントと一緒になって売り上げをあげる施策を展開しているのが、小売業から出発したデベロッパーの強み。

<バレンタインデーのイベント>
イオンモール
※イオンモール広報グループ提供

具体的には、バレンタインデーや子どもの日、キャラクターイベント、夜間の外壁ライトアップなどを開催している。ベトナムではショッピングセンターの駐車場は有料なのが一般的だが、当社モールでは無料としている。ベビーカーの無料貸し出しも行い、長時間滞在しやすいよう共用部のベンチも多く設置している」と話す。

<子どもの日のイベント>
子どもの日
※イオンモール広報グループ提供

そのほか、ベトナムでも、人材育成に力を入れており、社員はもちろん、テナントのスタッフ育成も充実させている。各モールで、接客ロールプレーイングコンテストを行い、サービス向上に努めている。ユニークなところでは、ベトナム人は社員旅行を福利厚生として重視するため、イオンモール開業10周年記念旅行を実施した。

施設管理を担当するイオンディライトは、「イオンモール タンフーセラドン」内に、清掃のためのトレーニング設備を設け、各モールのスタッフの教育を行っている。成績優秀なスタッフは、日本のイオンディライトアカデミーながはま(滋賀県長浜市)にて開催される「イオンディライト技術コンテスト」にも出場できる。

<清掃のためのトレーニング設備>
清掃のためのトレーニング設備

イオンモールは、今後も日本で培ったサービスとテナント支援を武器に、大都市だけでなく地方中核都市でも店舗網を拡大していく考え。

第2回に続く

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ベトナム地図
  • ベトナム基礎知識(出典:外務省、JETRO HP)
  • 首都:ハノイ
  • 面積:32万9241平方キロメートル
  • 人口(2023年、越統計総局):約1億30万人
  • 平均年齢:約31歳(2021年)
  • 民族:キン族(越人)約86%、他に53の少数民族
  • 言語:ベトナム語
  • 宗教:仏教、カトリック、カオダイ教など
  • 主要産業:農林水産業(GDPに占める割合11.96%)、鉱工業・建築業(同37.12%)、サービス業(同42.54%)
  • GDP(2023年、越統計総局):約4300億米ドル(1京222兆ドン)
  • 一人当たりGDP(2023年、越統計総局):4285米ドル(1億190万ドン)
  • 経済成長率(2023年、年平均、越統計総局):5.05%
  • 物価上昇率(2023年、年平均、越統計総局):3.25%
  • 日本からの投資(2023年、越計画投資省):65.7億ドル(認可額、株式投資を含む)
  • 在留邦人数(外務省海外在留邦人数調査統計):1万8949人(2023年10月現在)

取材・執筆 鹿野島智子

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