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ヤオコー/川野社長「個店経営を強化、連続増収増益目指す」

2021年01月27日 15:40 / 流通最前線トップインタビュー

ヤオコー/川野社長「個店経営を強化、連続増収増益目指す」

2020年は、コロナ禍による外出自粛ですごもり需要が発生し、食品スーパー各社の業績は軒並み好調だった。特需ともいえる業績拡大を受け、2021年は厳しい業績を見込む企業が多い。一方で、ヤオコーは、来期も連続増収増益を意識した戦略を掲げる。今回、川野澄人社長にコロナ禍の消費動向と2021年の戦略を聞いた。

コロナ禍で高まる価格志向、EDLPとチラシのバランス再検討

――2020年の振り返りと反省点を教えてください。

川野 まず反省点ですが、コロナ対応を最優先にしたことで、当初考えた取り組みについて、計画通りには進捗しませんでした。継続的に取り組んだ商品開発、旗艦店づくりに向けた新しいMDへの取り組みが不十分であったと思います。一方で、昨年は特に上期ですが、いわゆる巣ごもり需要で大きく売上が伸長しました。

――コロナ禍での消費動向をどう分析していますか。

川野 コロナ禍では、まとめ買いという傾向が続きました。大きな流れとして、客数が落ちて、その代わり、買上点数が上がりました。このトレンドは来期も変わらないでしょう。一方で、「ヤオコーは、商品は信頼できるけど、でも、ちょっと高い」と感じている顧客もいます。そういった顧客にヤオコーをメインの買い物の場所として選んでもらうことが必要です。対策として、特にヤングファミリー層の好む商品群、アイスクリームやスナック菓子といった商品の価格対応を、引き続き強める必要があると思っています。

――消費者の価格志向が強まる中で、チラシはどうなりますか。

川野 どういう形にするかは、いま社内で検討しています。昨年は、密を避ける、特定の日に集中することを避けるため、EDLP(常時低価格販売)で売る商品を増やし、日替わり特売を減らしました。来期は、いまの定番価格、いわゆるEDLP政策を引き続き維持します。ここを変えてしまうと、顧客は値上がりしたと思われるでしょう。

一方で、昨年の9月後半から、10月、11月の前半に顕著になった動きですが、やはりチラシが強いところに動いて買い回りをする傾向が強く出ました。そのため、9月後半、10月は想定よりも苦戦しました。EDLPとハイアンドロー(チラシ)の組み合わせをどういうバランスにするのか、慎重に組み立てる必要があります。

――昨年は旗艦店「所沢北原店」を改装しましたが、その狙いは。

川野 「所沢北原店」は、KPIとして掲げる1km商圏シェアをどう高めるかがひとつのテーマです。シニア層の割合が高まっている中で、毎日の買い物で、マメに利用されることで、1kmシェアをいかに高めるかを考えました。特に、シニア層の個食対応や惣菜を充実させることで、日々、使っていただくことを意識しました。同時に、若い客層を広域から集めるため、価格を打ち出し、冷凍ミールキットや簡単に料理ができて保存性がいいというカテゴリーを充実させました。イタリアからの輸入商品など、安くて、味も良くて生活の彩になるようなカテゴリーも強化しました。

また、生産性をいかに向上させるかということで、「久喜菖蒲店」から行っている投げ込み什器を入れるなど、ハード面での工夫を取り入れました。安さと楽しさとオペレーションコストの低減を進めるのが、「所沢北原店」での取り組みです。

――ネットスーパーの黒字化の目途は。

川野 ネットスーパーの損益は、月によっても違いますが、店舗段階では、数店舗で黒字化しました。ただ、システム費用を含めた事業全体の損益でみると、ネットスーパーはまだ赤字です。店舗段階で黒字になって、それで本部費用やシステム費用をカバーできるかという段階です。店舗段階で黒字にして、その店数を増やすことが必要です。店舗段階での黒字化は見えてきたので、ネットスーパーがずっと赤字を垂れ流し続けることはないでしょう。ただ、収益的には厳しいのは間違いなく、収益を上げる、さまざまな取り組みが必要です。

ネットスーパーを利用する顧客の動向ですが、少なくとも分かっているのは、店舗との共食いがないことです。ネットスーパーを利用すると、店舗の利用が減って、需要を共食いすることはありません。ネットと併用することで、ネットスーパー利用者の買物金額の総額は上がっています。ネットスーパーが加わると、トータルの売上は上がると見込んでいます。

2022年3月期も33期連続の増収増益を意識

――今期の実績は高いハードルですが、来期も連続増収増益を目指しますか。

川野 社内的な目標ですが、増収増益を続ける中で、来期は上半期に、売上をどれだけ上げることに集中できるかが課題です。昨年は、特に上半期に非常に売上が伸長したので、前年比が高いハードルなっています。顧客の支持をいかに上げられるのか。そこに集中する年にしたいと思います。

――増収増益に向けた施策は。

川野 いま来期の予算編成をしていますが、新店は、例年よりも数を増やす予定です。そのため、新店での押上部分が、ここ数年に比べて大きくなる。もう一つ来期は、大型店の改装を増やしたので、そこも売上のアップに寄与すると考えています。残りは既存店の売上をどう伸ばすかです。大きな手立てとして、客層を広げるため、価格対応を昨年6月くらいから進めています。じわじわと認知されてきたので、客数アップに寄与すると見ています。

<ヤオコーの店舗>
ヤオコーの店舗

――店舗の強化策は、どんなことを考えていますか。

川野 当社は、チェーンとしての個店経営を掲げています。チェーンとしての仕組みを生かしながら、個店を強くする。店舗が自分たちの商圏を見ながら、商売をすることが、当社の特徴であり強みです。その意味で、チェーンの施策として、生鮮デリカセンター、物流センターを作り、チェーンとしてのインフラを整えてきました。

来期は、特に省力化、省人化につながる取り組みに力を入れ、ここ数年、人手不足もあり、注力できなかった個店の強さを磨きます。店舗で考えて、店舗が計画を立てて販売することに、いまより注力する、そんな年にしたい。鍵となるのは、店長の力をいかに引き上げられるかです。改めて店長教育に力を入れていきたいと思います。

――個店経営での成功事例を教えて下さい。

川野 それぞれ地域にあわせた商売で店ごとに成功事例は違います。「所沢北原店」のような旗艦店と位置付ける大型店と、より日常づかいに特化した小型店、商圏も狭く売上も小さい店舗で、それぞれ違う商売をしています。

大枠は一緒ですが、大型店は大型店の売り方・品ぞろえをします。店長を中心に、商品を変えています。例えば、浦和パルコに出店した「浦和パルコ店」では、客層がほかの店舗と比べても広い。もともと百貨店の大丸が入っていた場所に出店したので、いいもの、グレードの高いものに対するニーズが高い。そういう店舗は、店長が、バイヤーなどに依頼をしながら、質の高い魚など、グレードが上の品ぞろえにすることに、個別に対応しています。

また、エリアによってもニーズは違います。例えば、今の時期に、みかんを売りますが、群馬県の店舗では10kg箱が売れるので、10kg箱の品ぞろえをする。でも、ほかの店舗では、10kg箱は必要ないこともある。全店一律の品ぞろえ、チェーンとして単に商品を送り込むのではなく、自分たちのエリアでは、こういう商品、品ぞろえが必要なんだという店舗のニーズにきちんと応えていくべきでしょう。

細かく言えば、シニア層が多い地域では、少量パック、小さなパックを増やしています。例えば、「所沢有楽町店」では、近隣に住むシニア層を対象に、小容量の「ちょっとがいいね」というシリーズを増やすなど、それぞれ個店対応を強化しています。

<ヤオコーの総菜売場>
ヤオコーの総菜売場

――生鮮デリカセンターの活用は進んでいますか。

川野 生鮮デリカセンターの活用は試行錯誤しながら進めています。店内調理の方が明らかに味のいい商品、センターとは品質の違いが生まれる商品は、店内加工にこだわって継続します。当社の強みは、店内で加工する技術があることであり、その強みを失わないようにしたいです。一方で、店舗作業の省力化につながり、品質も維持できるものは、センターを活用します。例えば、ベーカリーでは、ピザなどの生地玉をセンターで作って、店舗では生地を伸ばすところから製造することで、作業を軽減しています。作業を軽減することで、売上・利益の改善を進めています。

一方で、冷凍技術が向上するなど技術革新もあります。例えば、とんかつです。当社は店舗でチルドの肉に、バッタ液につけて、パン粉をつけて揚げています。揚げたてを食べれば、他社と比べてもおいしさに関しては自信がある商品です。一方で、すでにパン粉付けされた冷凍商品も非常に品質が上がっています。さめた状態で食べ比べると、そんなに違いがないということもあります。店舗の技術を磨きながら、何をセンター化して、あるいは仕入れ商品にして、何を店内調理でやるのかは、これからも一品一品みながら、決めていきたいと思います。

――来期の出店計画を教えてください。

川野 来期は9店舗の出店を計画しています。居ぬき物件が増えてきたので、出店数が増えています。出店環境ですが、例えば、マンション業者との競合は緩やかになってきたと感じます。それでも同業他社を含めて限られた土地の取り合いの状況は変わっていません。ただ、以前よりはずいぶんと、リストラを含めた物件が増えました。ここ数年でみると、物件数が増えると期待しています。

■川野澄人(かわの すみと)氏のプロフィール
1975年10月生まれ
2001年3月:新生銀行退職
2001年4月:ヤオコー入社
2009年1月:グロッサリー部長
2009年6月:取締役
2009年12月:経営改革推進本部副本部長
2011年3月:経営改革推進本部副本部長兼営業統括本部副本部長
2011年6月:常務取締役
2012年2月:代表取締役副社長
2013年4月:代表取締役社長(現任)
2017年4月:エイヴイ代表取締役(現任)

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