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三越伊勢丹HD/法人外商強化で顧客接点拡大、連邦戦略を推進

2022年10月24日 14:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング

フードデリバリーで飲食・ホテル業界を支援

――フードデリバリー事業について教えてください。

宇田川 日本デザインセンター社と、ビジネス構想力とデザイン・企画力の融合と高度化を通じ、さまざまな企業の課題解決をめざすことを目的に、2022年1月にスタートした協業事業「GOOD MIND PROJECT(グッドマインドプロジェクト)」を開始しており、その一環となります。

飲食業界・ホテル業界の支援と、宅配サービスを通じたギグワーカーの地位向上を目指して、8月下旬からプレミアムフードデリバリーサービス「QG DISH(キュージィ ディッシュ)」をスタートしました。

<デリバリー事業イメージ>
デリバリー事業イメージ

――既存のデリバリーサービスとの違いは何でしょうか。

宇田川 由緒あるホテルレストランや料亭など飲食店の料理を、環境に配慮した専用の車両を使い、百貨店クオリティーの丁寧な接客でお届けする点が、特長です。有名店や五つ星ホテルとのネットワークをもつ三越伊勢丹グループならではのビジネス構想力を生かし、日本デザインセンター社のデザイン・企画力と合わせて、提携店の契約、ブランディング、WEBサイトの制作、デリバリーカー・ユニホームのプロデュース、スタッフの教育など、総合的なサポートを行っています。

利用者は、店舗へ足を運ばずとも名店のような上質なメニューが楽しめます。そのメニューにふさわしいホスピタリティが隅々まで行き届いたデリバリーを提供できるのは、百貨店事業で培った強みだと思います。

――中計の高感度上質戦略が一貫していますね。

宇田川 有名店の料理や箱菓子などを、店頭とほぼ同価格で提供していますし、クオリティーの高いデリバリーが可能です。今後、ホテル、有名レストランの加盟店を増やしていきます。われわれ外商の強みである顧客とのつながりを生かし、また個人外商とも連携することでパーティー向けのデリバリーなども対応できるよう模索しているところです。

<百貨店で培った接客力を生かすと宇田川氏>
百貨店で培った接客力を生かすと宇田川氏

――百貨店で培った接客力が強みですね。

宇田川 三越は約350年、伊勢丹は約136年近い歴史があり、顧客をおもてなししてきた強みがあります。グループに人材派遣会社もありますし、人材派遣・教育研修なども提供できます。今後、われわれの顧客には学校もありますので、学校の場における対応研修など新しい研修も検討したいと思っています。デリバリー、シェアリングといった新たなサービス開発には営業個人のスキルだけではなく、チームで取り組むことも重要です。

グループ内外で連携強化、提案営業を推進

――グループ内外での連携強化について教えてください。

宇田川 商品の提案も専門的なものになると、提案には商品知識豊富な店頭バイヤーの協力も必要です。今までのような一人でクライアントのところに行き、提案して、納品するスタイルでは難しいですね。
また、地道な活動ですが、お中元・お歳暮の提案という以前からのつながりから、今挑戦しているような新しいサービスにつながることもあるので、顧客との接点強化は重要です。ギフト需要は、コロナ禍が落ち着いてきたこともあり、今年のお中元は予算を上回ることができました。お中元・お歳暮から始まるビジネスチャンスも、百貨店ならではの強みだと思います。

外商全体でも、2021年度は前年度売り上げの1割程度減少しましたが、2022年前半は前年同期比約30%増と、経済活動が回復するにつれ、徐々に企業の周年記念ですとか、ギフト需要が戻ってきている感じです。以前より、クライアントを訪問しやすくなっているので、地道な関係づくりを引き続き行っていきます。最近ではふるさと納税のチームとも連携して提案を行っています。

――どのような提案ですか。

宇田川 ふるさと納税は別途チームがあるのですが、法人外商のチームがお中元・お歳暮を提案する時に、クライアントに福利厚生として、ふるさと納税を活用することを同時に提案することも始めています。クライアントの総務・人事部門に、寄附が地域貢献につながるだけでなく、自治体によっては寄附者へ「お礼」という形でその土地の名産品や特産品が送られ、「確定申告」または「ワンストップ特例制度」を利用することによって、税金の控除・還付を受けることができることを案内しています。百貨店ならではの安心と信頼を生かし、企業の福利厚生としてこのような取り組みもあるということを紹介しています。ふるさと納税のチームだけではお伺いできない企業も、法人外商の顧客であればともに訪問が可能ですし、グループとして縦割りでなく、シームレスな組織営業を開始しています。

<三越伊勢丹ふるさと納税>

――社外との連携についてはいかがですか。

宇田川 取組先(協力会社)との連携も、今後ますます重要になります。法人外商では、例えばマスク、消毒液、防災服といった店頭では扱わない商品も調達することがありますし、顧客の要望に合わせた商品を用意するため、委託生産を行う場合もあります。クライアントの課題に求められる解決策と必要なアクションのためには、自社グループだけでは対応しきれないこともあります。顧客ニーズに迅速に対応するためにも、取組先との協力体制は引き続き強化していきます。

――今後の目標を教えてください。

宇田川 法人外商は、店頭での販売や個人外商のようにある程度店舗とつながりのあるビジネスと違い、企業・学校の需要に対応する業務ですので、今までグループでも、どういった仕事をしているか見えにくい部門だったのではないでしょうか。しかし、現在では、ホームページ、ECといった新しい窓口を作ったり、他部門とともに顧客開拓したり、社外の企業とも積極的に連携したりしています。「可能性は無限大」をスローガンに、今までになかったサービス、店頭にもない商品も提案・提供できる社内外の連係で、顧客の困りごと、課題解決を図り、グループの成長に貢献していきたいと思います。

<宇田川晃一氏>
宇田川晃一氏

■宇田川晃一氏略歴
1990年4月:伊勢丹入社 
2016年4月:伊勢丹新宿本店 婦人雑貨営業部 営業部長
2017年4月:伊勢丹新宿本店 販売推進担当 担当長
2018年4月:三越伊勢丹 法人外商事業部 第三営業部長
2022年4月:三越伊勢丹 外商統括部 法人外商グループ グループ長

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