富士通、三菱食品/「買掛照合AIサービス」共同開発、約800時間の工数削減
2022年12月01日 14:50 / IT・システム
富士通は12月1日、食品卸売業界における買掛金の照合業務をクラウドで効率化するSaaS型AIサービス「Fujitsu買掛照合AIサービス」の提供を開始した。
新サービスは、取引先から受領する請求電子データと自社が持つ買掛電子データを照合する買掛照合業務において、AIが過去の照合実績データを学習し、自動で照合結果を提示するもの。
現在、買掛照合業務では、両データを伝票番号などの一意な情報で結び付けられない場合があり、手作業で膨大な工数をかけて行われているが、新サービスにより、買掛照合業務の大幅な効率化と平準化を実現する。また、照合誤りなどの人的ミスの削減にもつながり、買掛照合スタッフの心理的負担の軽減にも貢献する。
食品卸売業界は、多数の取引先と膨大な数の取引データをやり取りしているが、その取引データは取引先ごとに異なり標準化されていないため、伝票番号などの一意な情報で結び付けられない場合がある。そのため、長年の間、手作業での照合による人的ミスの解消や買掛照合スタッフの心理的負担の軽減が求められていた。
そこで富士通は、今回のサービス提供に先立ち、2019年から三菱食品と複雑な商習慣や明細照合ルールに基づく買掛照合スタッフの暗黙知を抽出し、過去の照合実績データを学習することで「Fujitsu買掛照合AIサービス」を開発し、2020年からパイロット運用を実施してきた。その結果、三菱食品において、手作業で行っていた買掛照合業務における約800時間/月の工数削減を実現した。
これまでの買掛照合業務は、伝票番号や金額、入出荷日をキーに、取引先からの請求電子データと自社の買掛電子データを照合しており、それらが不一致、または欠落した場合には、商品名などを目検で確認するなど、多くの人手を掛けて照合を実施してきた。
新サービスでは、自然言語処理技術を用いたAIにより商品名や届先名を識別し、漢字とカタカナや、正式名称と略称といった違い、また、同一商品が取引先と異なる名称で登録された場合も認識することができるため、照合率が大幅に向上する。
また、複数のAIモデルとロジックを組み合わせたAIハイブリッドモデルで疎結合を実現していることで、どのような過程を経て取引先請求電子データと自社買掛電子データを照合しているのかといった説明性の担保や、精度が下がった場合に照合過程のどこに問題があるのかといった原因調査が容易であり、保守性に優れているという。
さらに、サービス運用実績のある買掛照合スタッフがサポートする体制を整えた。富士通によるサービス提供に加えて、先行導入している三菱食品様と連携し、買掛照合スタッフによるQ&A対応など導入サポートを実施する。
グローバルカスタマーサクセスビジネスグループの小田英正Consumer Products&Service事業本部商社・卸事業部シニアマネージャーは、「システムは1年以上をかけて三菱食品の実務担当者の中に、当社の技術者が入り込み丁寧なヒヤリングを行った上で開発した。その中で、取引社数6500社、約80万件の買掛照合業務を改善してきた。現在、食品卸売市場は48兆円あり、上位9社でその15%のシェアを持っている。3年以内に食品卸売業の上位の半数以上の会社での導入を目指す。将来的には、食品卸売業界の共通システム基盤を目指したい」と述べている。
また、新サービスは順次、他の財務経理業務への適用や他の業界への展開も予定している。今後も、デジタル技術と業務ノウハウを駆使し、非競争領域業務を中心とした業界共通サービスを開発・提供することで、食品卸売業界をはじめとするあらゆる業界のさらなる持続性と発展性に貢献したいという。
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