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小売業の倒産動向/2019年度上半期「飲食店」倒産が最多更新の勢い

2019年10月08日 16:20 / 経営

帝国データバンクは10月8日、2019年度上半期の小売業者の倒産動向調査を発表した。調査によると、2019年度上半期(2019年4~9月)の倒産件数は988件(前年同期比7.9%増)となった。

<小売業の倒産件数と負債総額推移>
小売業の倒産件数と負債総額推移
出典:帝国データバンクプレスリリース

前年同期(2018年4~9月、916件)を7.9%上回っており、東日本大震災の発生した翌年度となる2011年度以降、減少傾向で推移していたが、2016年度を底として増加傾向となった。このままのペースで倒産が発生すると、3年連続の前年度比増加となる。

2019年度上半期の負債総額は811億2200万円。前年度には、ケフィア事業振興会の倒産(2018年9月破産、負債約1001億9400万円、東京都)が発生したこともあり、大幅に前年同期を下回った。

■「飲食店」倒産375件、全体の約4割

業種別にみると、「飲食店」が375件で全体の約4割を占め最多となり、過去10年で最多となった2011年度の732件を更新する勢い。「飲食店」は、参入障壁が低い一方、流行や衛生・安全面での評判の影響を受けやすいとされ、個人消費の減退に加えて近時では人手不足も顕著で人件費の増大などが業績不振の一因ともなっている。

そのほか「織物・衣類・身のまわり品小売業」は122件、「飲食料品小売業」は167件、「家具・じゅう器・家庭用機械器具小売業」は55件となり、前年度の件数を上回るペースで推移している。一方、「自動車・自転車小売業」は58件と前年度(147件)を大幅に下回るペース。

■地域別では「関東」が304件、全体の約3割

地域別にみると、「関東」が304件で全体の約3割を占め最多となり、2013年以来600件を下回っていたが、6年ぶりに600件を上回る勢い。次点は「近畿」の261件。件数は前年度と同ペースだが、以前からその他の地域に比べ個人の飲食店経営業者が散見される。

そのほか「北海道」、「東北」、「中国」、「九州」は前年度を上回るペースで推移しており、特に「九州」は過去10年で最多であった2009年の165件を大幅に上回る勢いとなっている。一方、「北陸」は30件、「四国」は19件と前年度から下回る見込み。

■負債「1000万~5000万円未満」最多、全体の約7割

負債規模別にみると、負債「1000万~5000万円未満」が738件で全体の約7割を占め最多。負債「5000万~1億円未満」の94件と合わせ、負債1億円未満の小規模業者が全体の8割超を占めた。負債「1億~5億円未満」は131件で、年度上半期としては2014年度上半期以来5年ぶりに130件を超えた。

2019年度上半期は既に負債50億円以上の倒産が2件発生している。リファクトリィ(2019年5月、民事再生、東京都)とマザウェイズ・ジャパン(2019年6月、破産、大阪府)の2社で、ともに衣料品販売業者であった。

負債50億円以上の衣料品販売業者の倒産は2014年8月に民事再生法の適用を申請したオルケス(負債63億4500万円、東京都)以来となった。

業歴別にみると、「30年以上」が273社で最多となった。次いで、「20年~30年未満」が続き、業歴20年以上の企業が4割超を占めた。

天保3年(1832年)に創業した菓子製造業者の小松屋(9月破産、山形県)や明治5年(1872年)に創業した仏壇仏具販売業者の大平仏檀(8月破産、新潟県)など業歴100年を超えるような老舗企業の倒産も見受けられた。

一方、「3年未満」が62件で最少となった。内訳をみると、62件中36件が飲食店経営業者と6割弱を占め、参入障壁の低い飲食店経営業者は入れ替わりも激しく、市場からの早期撤退が多いことを示している。

次いで「3~5年未満」が86件と全体でみると少数だが、過去10年で最多となっている2011年度が139件であることを踏まえると、このままのペースで倒産が発生した際に最多となる可能性がある。

小売業者は近時、ECサイトを運営する業者との競争激化や、これまで売り上げを支えてきたインバウンド需要が中国経済の減速や日韓問題の過熱などから減少傾向にあり、厳しい状況が続く。

加えて、10月1日からは消費税率が10%になり、政府は対策として軽減税率やポイント還元などの施策を講じているが、増税を機に廃業を検討する業者が増加しており、その結果倒産に至るケースも聞こえてきている。

今年に入り、小売業を中心に中堅企業の長期間にわたる粉飾決算が発覚するケースが散見される。そのため、金融機関も警戒感を高めており、融資先への評価を見直す動きがあるとも聞かれ、企業からは融資姿勢の変化などを懸念する声があがっている。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、東京都では受動喫煙防止条例が全面施行される予定となっており、従業員を雇う飲食店では原則禁煙となるなど飲食店には条例に応じた対策を講じることが必須となっている。

インバウンド需要には期待感が高まっているが、その一方で同条例施行に伴う費用負担など未だ懸念材料が多くあり、引き続き注目度の高い業界であるという。

■小売業の倒産動向(2019年度上半期)
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p191002.html

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