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イオン、ヤオコー、ライフ等/「物流2024年問題」で配送改革、DXが急務

2023年06月06日 13:09 / 経営

流通業界では、現在、働き方改革関連法によって、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることにより生じるトラックドライバー不足など「物流2024年問題」が大きな課題となっている。

<トラックドライバー不足などが大きな課題に>
トラックドライバー不足
※4月4日流通ニュース撮影

物流はわが国の国民生活、経済活動を支える重要な社会インフラだが、この「2024年問題」により、トラックドライバーの労働時間が短くなることが想定され、従来通りの店舗配送などが成立しなくなる恐れがある。

内閣府が6月2日発表した「物流革新に向けた政策パッケージ案」によると、このままでは、輸送力が2024年度には14%(トラックドライバー14万人相当)、2030年度には34%(トラックドライバー34万人相当)不足し、従来通り運べなくなる可能性があると推計されている。

今春、流通各社で開催された戦略発表会、決算説明会などでは経営陣の「2024年問題」への危機感、対策を急ぐ各社の動きが見えてきた。

首都圏に店舗を展開する、サミット、マルエツ、ヤオコーライフコーポレーションの4社は3月16日、「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み宣言」を発表した。

「2024年問題」をはじめとする物流危機を回避し、地域の生活を支える社会インフラとしての責務を継続して果たすため、物流を各企業間の「競争領域」ではなく「協力領域」と捉えて、各社の協力による効率化を目指す。

具体的には、「加工食品における定番発注時間の見直し」「特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保」「納品期限の緩和(1/2ルールの採用)」「流通BMSによる業務効率化」を進める。

ライフコーポレーション単体でも、従来、店舗のオペレーションを優先していた配送体制を改革。4月10日開催した決算会見で、岩崎高治社長は「センターから、店舗までの配送は、当社の店によってはトラックが1日5~6便来ている。店舗の都合を優先し、積載効率が良くないこともあった。日配のあるカテゴリーの商品は朝の1便ではなく、2便でも可能だろうと首都圏で実験し、日配物流の改善を5月16日から全店に拡大する。首都圏、近畿圏でプロジェクトチームを作り、物流改革を進めている」と説明した。

また、イオングループでは、子会社イオンネクストが運営する今夏スタート予定の新ネットスーパーで物流を合弁会社により内製化。イオンモールは、テナントに向け、近畿・東海において、自社施設以外の配送先も回る共同配送を提供するなど、対策を強化している。

4月4日に行われたイオンネクスト 新サービス内容発表会でイオンの吉田昭夫社長は、「顧客との接点はドライバーだ。2024年問題の対策もあり、オンラインマーケットの新ブランド『グリーンビーンズ』では、合弁で物流を内製化している。AIを使った合理的な配送ルート設計など、デジタル化で極力生産性を高める」と危機感をにじませた。

<女性、異業種からも採用しやすい体制に>
女性、異業種からも採用しやすい体制
※4月4日流通ニュース撮影

イオンネクストでは配送計画、管理、分析、情報、教育をデジタル化し、女性、異業種からも採用しやすい体制作りを進めている。

ローソンは3月24日、弁当や麺類・総菜・サンドイッチなどのチルド・定温商品の店舗への配送回数を12月から全店で3回から2回に切り替えると発表しており、コンビニ業界の物流改革も進んでいる。

<チルド・定温商品の配送改革>
チルド・定温商品の配送改革
※ローソン広報部提供

「物流革新に向けた政策パッケージ案」では、具体的な施策として「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」を示した。2024年通常国会への法案提出を視野に、具体化される予定だ。

「荷主・消費者の行動変容」として、経営者層の意識改革により、荷主企業における全社的な物流改善を促進するため、荷主企業の役員クラスに物流管理の責任者を配置することを義務づけるなどの規制的措置導入も検討している。

政府は、年内に2024年度に向けた業界・分野別の自主行動計画の作成・公表も見込む。物流の適正化・生産性向上に関する自主行動計画の作成を前提として、早急に、物流の適正化・生産性向上に向けて荷主企業・物流事業者が取り組むべき事項をガイドラインとして策定。その上で、荷主企業・物流事業者に対し、これを広く周知するとともに、業種・分野別の「自主行動計画」を年内めどに作成・公表することを要請するとしており、流通各社には一層の物流効率化、構造改革が求められる。

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