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東武鉄道/顧客多様化に対応した商業・住宅支えあう開発で沿線価値向上

2022年01月12日 15:40 / 流通最前線トップインタビュー

――東京スカイツリータウンの現状について教えてください。

<東京スカイツリータウン外観>
東京スカイツリータウン外観

木村 東京スカイツリータウンは、東武スカイツリーライン(伊勢崎線)、京成押上線、東京メトロ半蔵門線、都営浅草線の鉄道4線が交わる交通結節点に位置しています。中心となるフロアとしては、1階は下町の商店街をイメージ、2階は押上駅ととうきょうスカイツリー駅に直結した駅ビルの機能を持たせ、食品専門店、ZARA、ユナイテッドアローズ、ビームスなどが出店しています。3階はファミリー向けのユニクロ、フードコート、4階は東京スカイツリー展望台への入口でもあるので、どちらかというと観光客向けの店舗を集めた4層となります。

2021年、テナントの定期賃貸借契約の終了などもあり、1割程度の店舗が入れ替わっています。コロナで出店を控える企業もありますが、逆にわれわれとしてはその空いたところに新しい企業に出店いただいて、顧客に新たな提案をすることで施設の鮮度を保ち、新しいテーマに編成していくのが課題です。

――東京スカイツリータウンの新しいテーマとは何でしょうか。

木村 観光客向けのハレの商業施設でありつつ、地域密着型のショッピングセンターでもあるという両立を狙っています。スカイツリータウンは2022年に開業10周年になります。開業時はインバウンド需要を見込んでいたのですが、東日本大震災もあり、当初は計画通りとはいきませんでした。そこで、(50~60代位の)アクティブシニアをターゲットにした浅草との回遊など日本人観光客を誘客しているうちに、インバウンドも増えてきて、ディズニーランド、ユニバーサルスタジオジャパンに次ぐ規模の集客施設として盛りあがっていきました。

現在のコロナ禍などで鉄道の利用客が減ってしまっている中では、駅利用者向けの2階の駅ビル需要や浅草からの観光客も減りますので、観光客向けのビジネスが難しくなっているのが実情です。コロナ禍の2年間、国内の観光客もインバウンド需要も減る中、やはり地域密着型のショッピングセンターとして使われるように、かじを切らねばならないだろうと考えています。ただ、コロナが収束して観光客も増えてくれば、観光客も取り込みたいので、観光客ニーズを維持しつつ、地元や地域のショッピングセンターとして挑戦していかなければならないと思っています。

――どのような客層をターゲットにしていくのでしょうか。

木村 客層は、東京スカイツリータウン開業時はファミリーに加え50~60才代のアクティブシニアを意識していました。休日、平日も含めて、浅草と回遊したり、都心を回ったり、アーバンツーリストとして都心を散歩したりとアクティブに活動するシニアの顧客に東京スカイツリータウンに来ていただくことを想定し、実際シニア層にたくさん来場いただきました。

2021年12月現在ですと、このアクティブシニアがまだ戻っておらず、逆に20代のカップルといった若年層の来場が増えています。売上も集客も2019年度比で90%くらいまで回復してきています。若い方々が来て施設を支えてくださいますが、やっぱりこのアクティブシニアにも来ていただくということは今後大切だと思っているので、その年代に向けた施策も重要だと思っています。

ただ、やみくもに客数を集めるのではなく、顧客に東京スカイツリータウンのファンになっていただき、コミュニティーのような施設になって、安定的に顧客に買物をしていただける店舗を目指しています。

<東京スカイツリータウン内観>
東京スカイツリータウン内観
(C)TOKYO-SKYTREE

――施設のファンづくりとは具体的にはどのような施策ですか。

木村 趣味などのコミュニティーがハブになり、顧客に楽しんで、来場していただけることが重要だと思っています。多額の費用をかけて、大型の販促施策を仕掛け、力業で顧客に来ていただくという戦略はもう古いのではないかとも感じています。外出する人としない人が2極化するかもしれないと感じていますが、外出する人、活動する人というのは目的を持って、動きたいと思って動くわけなので、その動きたい層に向け、フックやきっかけなどを用意することが、これからの東京スカイツリータウンのリピーターになっていただくのに重要ではないかと思っています。

徐々に修学旅行の顧客、地方からの顧客も戻ってきていただいているので、観光客向けも重視しつつ、観光客向けではない情報発信、頻繁に訪れたくなる店舗構成などを考えていきたいです。

<ファンづくりがカギと木村氏>
東武鉄道木村吉延 執行役員インタビューの様子

――クリエーティブな施設作りが求められるということでしょうか。

木村 どれだけ顧客にファンになっていただいて、売上のブレを少なくするか、ファンづくりをしていくかというのは、とても大事なことだと思います。開業からずっとよくきてくださる方が、「スカイツリータウンに来るのが楽しい」といっていただく理由は、普通のショッピングセンターと違ってちょっとハレ気分が感じられるなど、観光の雰囲気もあるからだと思っています。他のショッピングセンターにはないような、単に生活利便性を追求しているというよりも、少しハレ感の要素や、ニッチなもの扱う店舗をうまく散りばめて施設内を回遊してもらうという仕掛けを取っているからだと思います。ソラマチ商店街や立ち喰い梅干し屋といった専門性の高い人気店などがその例ですね。そのニッチなところが、「初めての店との出会い」ということで顧客には喜んでいただいたこともあるので、そういった顧客の笑顔や喜びみたいなところは、無くしてはいけないと思っています。

そうは言っても、トレンドの店も入れないと飽きられてしまうし、利便性という意味で毎日来ても買物して充足されるような店も必要ですし、本当に施設構成のバランスというものは難しいところです。今後、鉄道高架化に伴う東京スカイツリータウンの増床計画があるのですが、より顧客ニーズに対応できる店舗構成は何かと頭を悩ませているところです。

増床で地域のニーズに応える店舗を拡充

――東京スカイツリータウンの増床計画について教えてください。

木村 2017~2024年度でとうきょうスカイツリー駅付近連続立体交差事業に取り組んでいるところで、2021年度は上り線の高架橋躯体工事・仮設駅舎工事を進めています。もともと押上・錦糸町周辺の他の商業施設との差別化を図るため、広域に顧客を集めることを意識してきましたが、コロナ禍以後地元の顧客を意識したテナント構成も必要で、今後鉄道の高架化で創出されるエリア、生活利便性を高める物販やサービスの誘致も検討しています。

地域密着型大型ショッピングセンターには、なんでもそろうワンストップショッピングを顧客は期待されると思います。東京スカイツリータウンにはまだまだ出店いただけていない店舗がありますので、そういった店舗を誘致していければと思っています。

東京スカイツリータウンは観光客向けだけの施設ではない、とコロナ禍で気づいてくださった方々も多く、これからその方々のニーズもしっかりキャッチしていかないといけないと思っています。リピーターになられる方々にとって不足している要素を高架化で創出されるエリアに盛り込みたいですね。

東京スカイツリータウンのファンになっていただくには、物販だけでなく、フィットネスクラブのようなサービス機能も必要かもしれないですし、習い事など毎日のように通っていただけるコンテンツも必要かもしれないので、高架化で創出されるエリアには、より顧客ニーズの多様化へ対応していきます。コロナ後の世界でより深まるであろう顧客の多様化への対応は、東京スカイツリータウンだけでなく、郊外の商業施設開発でも重要なテーマだと思っています。

>>>次ページ イオンリテールなどと協力し南栗橋駅前で大規模開発

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