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東武鉄道/顧客多様化に対応した商業・住宅支えあう開発で沿線価値向上

2022年01月12日 15:40 / 流通最前線トップインタビュー

南栗橋駅・獨協大学前駅で商業施設など開発

――東武動物公園駅など郊外型の開発について教えてください。

<東武動物公園駅西口商業施設>
東武動物公園駅西口商業施設

木村 2021年9月、東武スカイツリーライン 東武動物公園駅西口に、地域の方々と来街者が交流する「お買い物とまちづくりの活動拠点」をコンセプトとした商業施設(埼玉県南埼玉郡宮代町)をオープンしました。東武ストアと無印良品が出店し、地域産品や生鮮食料品、生活雑貨の販売により地域の方々の日常生活を支えつつ、地域に開かれた交流広場「みんなの広場」を整備しました。飲食店営業などへの挑戦を後押しするシェアキッチンの設置、高齢化が進む地域のニーズを捉えた移動販売など地域課題解決や地域活性化につながるサービスを提供しています。

こういった大型開発では、駅利用者の利便性だけでなく、街づくりも重視しています。東武動物公園駅は館林や日光方面との乗り換えの駅でもありますが、周辺住民の方も多いですし、大学もあります。区画整理でできた広大な用地なので、どちらかというと、地域活性化に軸足を置いている開発です。この駅に住みたいと思われる一つのきっかけになるような開発になればいいと思っています。

――南栗橋駅でも大規模開発を行っていますね。

<埼玉県久喜市の南栗橋駅前エリアで大規模開発>
埼玉県久喜市の南栗橋駅前エリアで大規模開発

木村 南栗橋駅での開発計画「BRIDGE LIFE Platform(ブリッジライフプラットホーム)構想」は、2022年5月街びらき予定です。当社、埼玉県久喜市、トヨタホーム、イオンリテール、早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科 小野田弘士研究室による埼玉県久喜市の南栗橋駅前エリアを舞台に産官学連携による次世代の街づくりを推進するプロジェクトです(総面積約16.7ha)。南栗橋では、戸建て住宅を平成の頭から販売していました。今回久喜市による地域の液状化対策工事の進捗により東日本大震災により生じた地盤の問題もクリアされ、分譲を手掛ける準備が整いました。沿線や顧客ニーズの変化について他の地域と差別化し、共感して住み続けていただきたいという思いがあり、当社単体ではなく、5者で連携協定を結びました。トヨタホームと戸建て住宅を、早稲田大学の小野田研究室と住宅への個配など新たなモビリティーを、DXを強化した商業施設でイオンリテールと協力しています。商業街区(イオンリテール)は、街区面積約2.4haで、イオンリテールが食品棟・非食品棟からなる約4300m2の店舗を2022年5月オープンする予定です。

――イオンリテール参加の決め手は何だったのでしょうか。

木村 イオンリテールが、意欲的に店舗にDXを取り込んでいらっしゃるのが決め手になりました。新店舗は、顧客が自身のスマホもしくは貸出用スマホでスキャンしながら買物できるレジゴー、調理風景を配信するデジタルサイネージ、ネットスーパーなど最新のデジタル施策を採用する計画です。店舗DXのスピード、経験というところもあるということも踏まえるとイオンリテールはずばぬけていると思います。また、農場を保有し、オーガニック野菜など生鮮に注力し、高齢者など食べ物も含めて健康に関心の高い顧客に向けた商品戦略などで方向性が一致し、出店いただくことになりました。

早稲田大学の小野田先生にも入っていただいて、街づくりにSDGsなどの思想も取り込み、買物した荷物の配達、ゴミを無人で回収するなどモビリティーでも持続可能な開発を意識しました。イオンリテールも、モビリティーのトライアルについては非常に前向きに考えていただいているので、非常にいいメンバーが集まったと思います。

――2023年獨協大学前でも商業施設開発を予定していますね。

<草加松原団地近隣型商業施設街区に商業施設を開発>
草加松原団地近隣型商業施設街区に商業施設を開発

木村 東武スカイツリーライン 獨協大学前<草加松原>駅周辺エリアにおいて、独立行政法人都市再生機構が所有する「草加松原団地近隣型商業施設街区」の土地賃借事業者に選定されました。獨協大学前駅は、昔団地があり今は全部建て替えが終わってURが賃貸マンションも建てています。当社と住友不動産でも分譲マンションを開発しています。付近の松原団地も宅地開発が進み、駅付近には図書館、公園、小学校、中学校などが集まったエリアです。

子育てファミリーなどが集まる非常に可能性の高い場所であると思います。また、スーパーはいくつもあるのですが、住民の方のニーズには応えきっていないと考え、ここに今商業施設を開発しています。敷地面積約1万2242m2、延床面積約9385.60m2地上2階建ての予定です。当然スーパーのような店舗も考えていますが、周辺に飲食店、雑貨など物販が少ないので、誘致したいですね。医療施設も新越谷駅に獨協病院といった大きな病院はあるのですが、近隣には気軽にいけるクリニックが少ないようですので、こちらも誘致を検討しています。エリア全体を考え、住民の利便性や住みやすさを向上させる開発を推進しています。

――開発でさらに、エリアの価値を上げると。

木村 獨協大学前駅は、準急や急行が止まる草加の隣の駅なのですが、この先新田、蒲生と各駅停車の駅が続きます。獨協大学前駅付近に住む人が増え、活性化され、エリアの評価が高まると、当然ながらその近くの駅もエリアとして発展が期待されます。商業施設開発と住宅開発はお互いが支え合うような関係だと思います。

南栗橋駅前についても、この度の大規模開発計画の進捗により、他社がマンション開発を検討し、着手しており、街というのは何かが少し動き出すと、ほかの開発も進んで元気になるという事例だと思います。

――商業施設開発にさまざまな企業の協力が必要になってきますね。

木村 もちろん当社グループの力も結集していきますが、一方で出店者、取引先の力を借りることの重要性が今後高まると思います。今の時代は変化が早く、顧客ニーズに事業をカスタマイズし、変化し続けていく企業の協力があって成り立ちます。非常に世の中が大きく変わり、顧客ニーズも多様化すると、1社だけの力では対応がなかなか厳しいです。本当にそれぞれの企業や自治体、関係者の工夫、知恵、力が結集して開発を進める時代になるのではないでしょうか。

<開発にはさまざまな関係者の力が必要と木村氏>
東武鉄道木村吉延 執行役員

木村吉延氏略歴
1989年4月:東武鉄道入社、同社業平橋押上地区開発事業本部課長、SC事業部課長などを経て、
2013年6月:東武タウンソラマチ 代表取締役社長
2013年6月:東武タワースカイツリー 取締役
2015年5月:東武タウンソラマチ 取締役
2015年6月:生活サービス創造本部 SC事業部長
2018年7月:生活サービス創造本部(商業開発担当)部長
2019年6月:執行役員生活サービス創造本部沿線価値創造統括部長兼商業開発部長
2020年5月:東武ストア 取締役
2020年6月:執行役員生活サービス創造本部沿線価値創造統括部長

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