飲料市場/「生茶」「爽健美茶」などロングセラー一新、市場は5兆円を突破

2017年12月19日 12:30 / 商品

矢野経済研究所は12月18日、飲料市場に関する調査結果を発表した。調査によると、2016年度の国内飲料市場規模(牛乳・乳飲料を含む)はメーカー出荷金額ベースで、前年度比2.2%増の5兆800億円と拡大した。

<スーパーの飲料売場(イメージカット)>
スーパーの飲料売場(イメージカット)

比較的好天に恵まれたことで上期は堅調な推移を見せ、最盛期の夏場においても東日本は台風が例年よりも多く上陸したことや週末の天候不順などで苦戦した一方で、西日本は猛暑となったことで販売を押し上げた。

9月に関しては好調とは言い難いものの、2015年度も残暑がなかったため、前年実績を維持できた。秋冬にはコーヒー飲料において、ボトル缶を中心に好調な推移を見せたことや、ホット飲料も堅調だったことで、飲料市場全体で年間を通じて順調な動きを見せた。

一方で、2017年度の市場規模は、0.5%増の5兆1050億円と微増を予測する。

7月までは猛暑の後押しもありプラスで推移していたが、8月に入ると様相が一転し、東日本を中心とした記録的な長雨などの影響を受けたことで飲料販売も低迷した。

行楽シーズンの10月にも、長雨や記録的な低温日を記録するなど再び悪天候の影響を受けたことは大きなマイナス要因であり、このままでは通年でマイナス成長になる可能性もあるものと考える。

こうしたなか、秋冬商戦では、ボトル缶を中心に伸長傾向にあるコーヒー飲料需要に対する期待がかかる。

<飲料市場規模推移と予測>
飲料市場規模推移と予測
出典:矢野経済研究所

2016年度の市場は2.2%増と好調であった一方で、商品面で大きなインパクトを残した商品は少なく、また新商品の発売が前年より減少していることもあり、新商品に関してはヒット作に恵まれない年であったと言える。

この背景にはメーカー各社が既存ブランドを重視する戦略があるが、これは各社の販売数量確保といった薄利多売から、収益重視への本格的な転換と見ることができる。

こうしたなか、2016年度は大規模リニューアルによるロングセラーブランドの復活が見られ、コカ・コーラシステム「爽健美茶」やキリンビバレッジ「生茶」が近年の不調を脱して拡大に転じた。

「生茶」に関しては、年初販売目標を二度上方修正するヒットとなった。スタイリッシュな「パッケージ」はトライアル需要につながり、まろやかで飲みやすい風味が消費者の高い評価を得たことでリピート需要を獲得した。

カテゴリー別では引き続き緑茶や麦茶を中心とする日本茶飲料が好調を維持している。緑茶については主要ブランドの多くが伸長するなか、低迷が続いたブレンド茶についても拡大に転じた。

麦茶においても引き続き熱中症対策やカフェインゼロといった機能性が支持され好調を持続するなど、2016 年度は日本茶の各カテゴリーが伸長した。

親和性の高さから、機能性表示食品制度を利用した商品も引き続き増加傾向にある。

ミネラルウォーターでは、国産ミネラルウォーターの伸長が続いている一方で、輸入ミネラルウォーターは苦戦が続き、原点に戻ったマーケティング※を実施することで改めて若年層への訴求を図っている。

フレーバーウォーター、スパークリングウォーターのヒットはミネラルウォーターブランドだけでなく、周辺カテゴリーにも影響を及ぼしており、透明な液色にフレーバーを付けた商品が増えてきている。

コーヒー飲料は、ボトル缶を中心としたリシーラブル(再栓可能)容器が引き続き拡大傾向にあり、SOT
(Stay-On-Tab)缶の縮小をカバーしている。

ボトル缶は従来の主流であったブラック(無糖)だけでなく、微糖やカフェオレタイプなどの商品も増えている。SOT缶については、基幹ブランドを補完する形で、もう一段品質にこだわった商品が一定の支持を得ている。

コーヒー需要の裾野が広がる中、既存の主力ブランドで従来のヘビーユーザーを囲い込む一方で、上述した品質にこだわった商品なども含め、新規ユーザーを取り込む2方向での戦略が図られている。

消費者の自動販売機(以下、自販機)離れを食い止める為、自販機独自の商品設計やサービスなど、自販機でしか体験できない価値を提供するための取り組みを各社が模索している。

自販機が収益源として重要な位置づけであることから、各社の自販機の活性化に向けた本格的な取り組みが注目される。

昨今の各社の収益重視の経営姿勢を考慮すると、価格で他の販売チャネルに対抗するのは得策ではなく、価格以外で消費者を惹きつける施策が必要である。こうしたなか、自販機専用商品など自販機でしか買えない魅力ある商品開発が今後さらに進んでくるものと考える。

2015年頃からスマートフォンなど利用し、自販機をネットワーク化する取り組みが行われるようになり、2016年度はさらに本格化してきている。

本格的な普及はこれからであり、その効果には不透明な部分もあるが、各社とも一定の手ごたえを掴んでいるようである。自販機を有効活用し、さらに消費者に楽しみやお得感を提供しながら、消費者離れを食い止める取り組みは、今後、さらに加速していくことが予想される。

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