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パルコ/コンセプト型医療モールで新たな来店動機を創出

2024年01月26日 17:00 / 店舗レポート

パルコは2月、さいたま市の浦和駅前の商業施設「浦和PARCO」にコンセプト型の医療モール「Welpa(ウェルパ)」を開業する。ウェルパは、パルコが手がける新規事業者の一環で、2021年11月に「心斎橋PARCO」に1号店をオープンした。

「医療モールを『病気になった時に行く場所』だけではなく『自分をケアするための場所』として提案する」をコンセプトとするウェルパは、なぜ生まれたのか。また、商業施設における医療モールの役割は何か。パルコ執行役員で、コンテンツ開発部、コラボレーションビジネス企画部デジタル推進部担当を務める森田幸介氏に聞いた。

<パルコ執行役員の森田氏>

――なぜ、ファッションビルを展開するパルコが医療モールを手掛けるのですか。

森田 当社は1969年の創業以来、物販だけでなく、映画館や劇場といったカルチャーも含めて体験的価値を提供してきました。ECが拡大するなど市場が変化するなかで、館全体で物だけでなく体験価値を増やすことが時代に求められていると捉えています。

実際、体験的価値を増やす施策として、飲食店やサービス系テナントが拡大しています。その延長線上で、お客様への新しいサービス提供価値としてウェルネスという領域を強めることが、お客様の心豊かな生活の提案につながると考えて、ウェルネス事業をスタートしました。

――商業施設内の医療モールにはどんな役割があるのか教えてください。

森田 商業施設の新しい可能性を探る中で、ショッピングに行くだけでなく、自分の身体のこと学んだり、より知っていただく体験を館として提供することで、お客様が来館するニーズが生まれると考えています。心斎橋PARCOでの取り組みを通じて、ショッピングセンターの中に、医療のニーズがあることが分かりました。

――医療モールを併設すると館の客数が増えるのですね。

森田 端的に、ショッピング目的以外のお客様が増えるのは事実です。医療モールに来たお客様が、帰りがけにパルコの中も見ていただける機会が増えます。館とすると、商売のチャンスが増える業態だと捉えています。

また、歯医者さんが分かりやすい例ですが、病院には定期的に通院される方が多い。治療や健診など定期的に行うことが多く、何回かは通院されます。定期的に来館されることで、リピーターを増やす面でも館への貢献があると思います。

――具体的に、商業施設にどんな波及効果がありますか。

森田 例えば、人間ドックを受ける日は、朝食をとりません。そうすると、人間ドックが終わった時に自分へのご褒美的な食事をしたいニーズがあります。浦和PARCOでは、ウェルパの下の階がレストラン街となっています。こんな時に、レストラン街を利用されることもあると思います。

<ウェルパ>

――ウェルパ1号店、2号店の出店立地はどのように決定されたのですか。

森田 心斎橋PARCOは、都市型で広域から集客する広域商圏型の店舗です。一方で、浦和PARCOは、少し郊外型での店舗で中距離の商圏です。異なる商圏を持つ館で、ウェルパの効果を見ながら、出店を広げて行こうと考えています。

特に、浦和駅周辺は再開発が進み、浦和エリアの人口が伸びています。浦和PARCOは、今年度、2019年度の過去最高売上高を超える射程が見えてきている状況があります。好調なエリアでもあるため、2号店の出店を決定しました。

――ウェルパのターゲット層を教えてください。

森田 全国のパルコの主要顧客層は20代から40代の女性となっています。そこで、20代から40代の女性が利用しやすいコンセプトで、この事業を進めています。そこを意識して、女性に利用いただきやすい環境を整えると共に、心地良い空間で定期的な予防や治療などを行うことにより、自分をケアすることを習慣化できるようサポートする施設を目指しました。

一方で、館ごとにお客様の客層が異なります。浦和PARCOは、若年層から年齢層が高い方まで利用いただいている館なので、男女問わず幅広い年齢層が利用できる施設を目指しました。

<イーストメディカルクリニック>

――これまでの医療モールとウェルパの違いはなんですか。

森田 施設コンセプトからも女性を意識して、ウェルパの外装は統一感のあるデザインを採用しました。また、いま未病という発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態の予防が注目されています。そこで、定期健診を強化している「イーストメディカルクリニック」さんに出店していただきました。ウェルパの事業背景には、女性に多い乳がんの検診率が40%台から約10年変化がないこともあります。そのため、未病の防止を打ち出しています。

また、薬をもらいに行くだけではない調剤薬局として「セルフケア薬局」さんを誘致しました。セルフケア薬局さんでは、薬剤師によるカウンセリングを行っております。「生理痛・PMSに悩んでいる」「更年期症状が気になる」などの悩みに対して薬だけではなく生活に取り入れられるハーブティーや漢方薬などのセルフケアもお客様に合わせて考え、提案しています。

――営業時間が商業施設とは大きく異なり、休日もある医療機関を誘致するポイントを教えてください。

森田 出店していただく医療機関の営業形態を尊重しています。そのため、休診日、診療時間は、医療機関の形態に合わせています。また、パルコのこれまでのテナントリーシングのノウハウでは、医療機関とのパイプがありません。そこで、事業パートナーとして、医療コンサルティングを展開するスマートメディカル、ドリコスとパルコで業務提携をして事業を展開しています。

<セルフケア薬局>

――医療モールの利用者からどんな反応がありますか。

森田 心斎橋PARCOの例をあげますと、商業施設内の医療機関は、診療時間が長かったり、診療日も多いこともあり、仕事帰りでも診療できる利便性が評価されています。また、PARCOという館の中にある医療機関ということで、安心感があるというお声をいただいております。

――ウェルパにはイベントスペースもありますね。

森田 ウェルパには、さまざまなヘルスケアアクションを実施するイベントスペースを設置しているのも特徴の一つです。出店していただいている医療機関の医師や薬剤師さん、ヘルスケア関連のメーカーさんとタイアップしたイベントを予定しています。

心斎橋PARCOでは、イベントを楽しんでいただくことが定着しています。美容まで含めて、ヘルスケア、ウェルネスに興味関心がある方は、若年層から年配の方、アクティブシニア層まで広がっています。こういった情報発信を強化していきたいと思います。

<イベントスペース>

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