流通ニュースは、流通全般の最新ニュースを発信しています。





首都圏SM4社/「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み宣言」発表

2023年03月16日 15:50 / 経営

首都圏に店舗を展開する、サミット、マルエツ、ヤオコーライフコーポレーションの4社は3月16日、「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み宣言」を発表した。

「2024年問題」をはじめとする物流危機を回避し、地域の生活を支える社会インフラとしての責務を継続して果たすため、物流分野を各企業間の「競争領域」ではなく「協力領域」と捉えて、各社の協力による物流効率化を目指す取り組み。

具体的な取り組みでは、「加工食品における定番発注時間の見直し」「特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保」「納品期限の緩和(1/2ルールの採用)」「流通BMSによる業務効率化」を進める。

令和3年に閣議決定された「総合物流施策大綱」では、加工食品分野の物流標準化・商習慣改革を推進するとされている。また、国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省が令和2年に策定した「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン(加工食品、飲料・酒物流編)」や、製・配・販の各階層が参画する「フードサプライチェーン・サステナビリティプロジェクト(FSP)」の提案において、リードタイムの延長や3分の1ルールの見直しの徹底などが課題に対する具体的解決策として、示されている。

また、物流を取り巻く環境が変化していく中で、これまで行われてきた配送方法が維持できなくなっている。食料品の安定供給を維持するためには、製・配・販が連携して、リードタイムの見直しをはじめとするこれまでとは違った物流のあり方を追加し、トラックドライバーの労働負荷軽減など、現状の物流環境を改善する必要がある。

■加工食品における定番商品発注時間の見直し

各社はこれまで、適時・適品・適量の食料品供給を実現するための物流網を構築してきた。しかし、今後トラックドライバー不足が懸念されるなかで、車両手配が困難になることが予想されることから、従来通の発注から納品までの工程を維持することが難しくなってきている。

食料品の安定供給を維持するため、メーカー・卸売業間のリードタイムを1日延長し、小売業の定番発注時間を午前中に前倒しすることで、準備に必要な時間を確保し、夜間配送の削減や積載効率の高い配送を実現することが求められる。

そこで、定番商品における発注時間について調査したところ、4社すべてが前日に発注を締めて、翌日朝(午前5時~8時)までには、卸売側が発注データを受注していることが確認できた。FSPが提案する「加工食品の定番発注時間前倒し」に則した運用となっており、今後も継続して取り組みをすすめる。

<加工食品における定番商品発注時間の見直し>
加工食品における定番商品発注時間の見直し

■特売品・新商品の発注・納品リードタイムの確保

また、各社は、特売品や新商品を通じて、多様化するお客のニーズや季節に応じた食の提案など、地域のお客の豊かな食生活に向けた取り組みを実施してきた。しかし、食品物流を取り巻く環境が変化する中で、定番商品同様、特売品・新商品においても発注から納品までの従来の工程を見直しことが求められている。このため、リードタイムを十分に確保したうえで、特売品や新商品の発注を行うことで、商品や車両を効率的に準備できる環境を整え、積載効率の高い配送を実現する必要があった。

そのため、FSPでは「特売・新商品(追加を含む)の6営業日前計画発注化」が提案されている。そこで4社は、FSPに参画している日本加工食品卸協会の各企業と意見交換を行いた、このなかで、「6営業日前」に計画的に発注する必要があることを確認した。また、食品の安定供給に向けて、各社それぞれが抱える課題を解決していかなければならないと認識した。このようなことから、各社の専用センターにおいて、6営業日以上の発注・納品リードタイムを確保することに4社は合意した。

<特売品・新商品の発注・納品リードタイムの確保>
特売品・新商品の発注・納品リードタイムの確保

今後、特売品および新商品における精度の高い計画発注を実施するとともに、特売品の追加発注を抑制し、定番商品を除く新商品においては、追加発注をしない取り組みを進める。

■納品期限の緩和(1/2ルールの採用)

現在、製造日から賞味期限までの間に小売業への納品期限、販売期限が設定されている。しかし、企業ごとにルールが異なるため、メーカーや卸売業における出荷日調整作業をはじめとする商品管理業務の負担増加が発生している。このため、納品期限「1/2ルール」への統一が提案されている。

商慣習の一つとして、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例、いわゆる「1/3ルール」がある。これは例えば、賞味期限が6カ月間とすると、製造日から2カ月目までに小売店に納品、4カ月目までに消費者に販売する、というルール。「1/3ルール」のもとでは、賞味期間の1/3を超えて納品できなかったものは、賞味期限まで多くの日数を残すにも関わらず、行き場がなくなり廃棄となる可能性が高まっていた。

既に、ヤオコーとライフコーポレーションは先行して、1/2ルールを採用している。それに加えてマルエツは2023年3月、サミットは2023年4月から1/2ルールを順次採用する予定だ。

<1/2ルールへの変更例(賞味期限12カ月の場合)>
1/2ルールへの変更例(賞味期限12カ月の場合)

■流通BMSによる業務効率化

さらに、流通BMSによる業務効率化を進める。流通BMSは、流通業界におけるEDI標準仕様。インターネット回線による高速通信によって、データの送信時間が大幅に削減されるため、メーカー・卸売側の作業時間が確保され、物流コストの削減や発注から納品までのリードタイム短縮につながるとされている。4社は、すでに流通BMSを導入しており、これによって検品レス、伝票レスなどの業務効率化を進めている。

物流課題を解決するには、4社だけではなく、製・配・販三層による連携が必要となる。そのため、今回の取り組みを知ってもらい、スーパーマーケットをはじめとする他の小売企業、卸売業、製造業においても、持続可能な加工食品物流構築に向けた取り組みが進むきっかけとなることを目指す。製・配・販が連携し、持続可能な加工食品物流が構築されるよう、4社は、引き続き食品物流の課題解決について検討を続けるという。

首都圏SM物流研究会/サミット、マルエツ、ヤオコー、ライフが参加

関連記事

経営 最新記事

一覧

最新ニュース

一覧