三井不動産/商業施設売上高1兆700億円、商業施設事業の全容
2017年03月07日 17:20 / 流通最前線トレンド&マーケティング
2015年度商業施設売上高1兆700億円、出店テナント企業数約2300社。三井不動産は、「三井ショッピングパーク ららぽーと」、「三井アウトレットパーク」を筆頭に商業施設を全国に展開する。
だが、商業施設の高い知名度の一方で、その事業規模はあまり知られていない。商業施設の賃貸収益は2005年3月期の509億円から、2016年3月期は2034億円、2005年対比で約4倍に拡大している。
今回、商業施設本部の本部長を務める石神裕之常務執行役員に、三井不動産の商業施設事業の開始から転換点、直面する課題である少子高齢化、Eコマース、体験型消費への対応などを伺った。
施設種別ごとの売上構成比は、ららぽーと50%、アウトレットパーク30%
――商業施設事業のスタートを教えてください。
石神 最初は1981年の「ららぽーと船橋(現TOKYO-BAY)」の開業です。私が入社する前の話ですが、これは日本では先駆的な試みでした。
当時は、弊社自体が土地をあまり持っていなかったため、ディベロッパーとしてのトライアルをいくつも行いました。超高層の「霞が関ビル」であったり、ディズニーランドであったり、この「ららぽーと」であったり、過去になかったようなさまざまなトライをしていた時代です。
広大な敷地で、車での来場に重きをおいた米国型のショッピングセンター(リージョナル型ショッピングセンター)を日本に始めてオープンしたのが「ららぽーとTOKYO-BAY」です。「ららぽーとTOKYO-BAY」は、アメリカをはじめとする海外のさまざまな商業ディベロッパーやアメリカの商業者(テナント)の中でも相当有名な物件です。
いまでも日本進出の際には、まず「ららぽーとTOKYO-BAY」に出店したいというリクエストをいただくぐらい、レジェンド的な施設になっています。これが商業施設事業のスタートラインです。
――商業施設事業の転換点は。
石神 その後、さまざまな事業を行ってきましたけども、大きな転換点というのは、アウトレット事業のスタートです。1995年に大阪の鶴見からスタートして、マリンピア神戸、横浜ベイサイドと、このあたりから商業施設本部として、規模が拡大していく時代となります。アウトレットは、その後順調に施設数を増やしています。
次の転換点が、2006~2007年にオープンした「ラゾーナ川崎プラザ」、「アーバンドックららぽーと豊洲」、「ららぽーと横浜」、「ららぽーと柏の葉」の4施設で、リージョナル型ショッピングセンター事業を、一気に加速させた時代となります。
現在の商業施設本部自体の売上や利益は、大きくリージョナル型ショッピングセンターとアウトレットと都心型商業施設の3つで構成されています。
――都心型商業施設はいつから展開していますか。
石神 もう一つの転換点は、「コレド日本橋」(2004年開業)、「東京ミッドタウン」(2007年開業)、「コレド室町1」(2010年開業)といった都心型商業施設を展開する時代です。
弊社の街づくりの中で、”ミクストユース”と呼んでいますが、これまではオフィスビルだけだったところに、足元に商業やホテルなどの機能も入れ、街としてのにぎわいを持たせる、いわゆる複合型の街を作っていくという発想です。
「東京ミッドタウン」は、その代表例です。いまは、当たり前になりましたけど、各本部が協力して、ひとつのプロジェクトを作り上げていくことは、社内的には、非常に大きな転換でした。
これからは”ミクストユース”ができる会社にならなければならないと、横断的に施設づくりを行っていく時代になりました。
以降、この3つの柱を順調に伸ばし、2015年度の商業施設の総売上高が1兆円を突破しました。あわせて、弊社グループで取り扱う施設数も100を超え、これまで順調に事業を展開してこられたと考えています。
<商業施設総売上高の推移>
出典:三井不動産広報部提供資料から作成
――ご自身が印象に残っている事業は何ですか。
石神 私は、商業施設事業本部の前は、ビルディング本部の業務推進室というところに長く所属しており、ビル事業を12年ほどやっておりました。そこから、2005年にアーバン事業部長になったのです。この頃、まさに”ミクストユース”を進めていこうということで、各本部の人材をミックスしていった時代です。
その中で、「コレド室町1」や日本橋の再開発については、いまでも思い出に残っています。私が深く携わったのは、「コレド室町1」と「日本橋三井タワー」の開発です。
“ミクストユース”の視点では、ワーカーだけでなく、街を訪れた方にも満足いただける利便性と集客力を兼ね備えた施設づくりをしています。商業施設がエリア全体に賑わいを与え、オフィスビルの価値も上がる、そのような開発を、商業施設本部とビルディング本部と一緒になってやってきたのが印象に残っています。
――ビルディング本部の経験などが役に立ちましたか。
石神 そうですね。ただ、経験やノウハウがあったからだけでなく、会社として横断的に取り組む体制になっていたことは大きかったと思います。
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