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イトーヨーカドー、凸版など/家庭における食品ロス削減の実証実験

2021年01月20日 17:10 / IT・システム

イトーヨーカ堂、伊藤忠インタラクティブ、凸版印刷、日本総合研究所、三井化学は1月20日、SFC構想研究会の活動として、ネットスーパーと消費者の家庭における食品ロス削減に関する実証実験を実施すると発表した。

実証実験では、RFIDタグやセンシングデバイスなどのIoTを活用することでeコマースを活用したフードチェーン上の食品情報を個体別に追跡管理する。

食品の鮮度情報は指標化されることで可視化され、食品流通業から消費者の家庭内までの各過程で確認可能とすることによる食品ロス削減への効果を測定する。

実証実験は、経済産業省委託事業「令和2年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したスーパーマーケットにおける食品ロス削減事業)」に採択され、1月20日から2月9日まで東京都内で実施する。

全国約20産地が協力し、青果物・肉・魚などの生鮮品、その他日配品の約60品目、約3000点にRFIDタグを付与。食品の購入頻度・調理頻度の高い20~40代約10名を対象に実験を行う。

<実証実験の流れ>
実証実験の流れ

今回、食品が産地から出荷され、卸やネットスーパーの配送拠点などを経ながら流通し、消費者によって消費・廃棄されるまでの一連のフードチェーンを、食品情報追跡管理システム「foodinfo」が管理する。

特に、青果物については、foodinfoと連携する「鮮度予測・可視化システム」によって、鮮度が常に可視化されており、小売業者は、鮮度を基にしたダイナミックプライシングを実現する。

また、消費者は、新たな判断材料として「鮮度」を指標化して表示するeコマースサービス「eatmate store」を通じて食品を購入する。

eatmate storeから購入した食品は、食品在庫管理のスマートフォンアプリケーション「eatmate」に自動連携され、消費者は外出先からも家庭内の在庫と個体別の鮮度を確認することができる。

実証実験は、IoT技術を活用した食品消費最適化の実現を目指し、全国各地の産地協力者、流通業者、小売業者、消費者の協力を得て、5つのテーマを設定した。

「産地から消費者までのフードチェーン上での食品情報の個体別の追跡管理」は、産地での出荷から消費者が消費するまでのフードチェーン上において、食品情報の個体別の追跡管理(トレーサビリティ)が可能か実験する。

また、「青果物流通におけるRFIDタグの活用」では、青果物は、流通時に商品形態が変化するという特有の課題のためにRFIDタグの適用(実証実験など)が、ほかの食品に比べて遅れていることに対応。

実証実験は、上記のフードチェーン上において、青果物にもRFIDタグを利用し、個体別の追跡管理が可能か調査を行う。

「鮮度の見える化によるeコマースの売り上げ向上と食品ロス削減効果」もテーマの1つで、食品の「鮮度」を指標化することによって可視化させ、その鮮度情報が消費者の購買行動に影響を与えるか検証する。

さらに、「ダイナミックプライシングによるeコマースの売り上げ向上と食品ロス削減効果」では、食品の販売価格について、可視化された鮮度に応じた変動を行う。食品の鮮度の状態に連動した適切な価格で販売することで、消費者の購買行動に影響を与えるかについても実験する。

そのほか、「家庭内における食品ロスの削減」では、消費者自身が家庭内の食品在庫を日々管理できるようにすることが、食品ロスの削減をもたらすかを調べる。

■各システムの概要

「foodinfo」とは、RFIDタグを活用し、産地から消費者の家庭までにおける、食品の流通過程を追跡管理するプラットフォーム。

特に、これまでは管理が難しかった青果物の鮮度情報や入出荷・在庫情報を管理する機能を備え、青果物が流通過程で商品形態を変化(段ボール箱から個別包装など)させることにも対応する。

さらに、流通過程で記録した温度・湿度情報の履歴を、「鮮度予測・可視化システム」に連携する。

ユーザーである産地協力者と流通業者、小売業者は、フードチェーン上の食品について、流通履歴のほか、消費・廃棄履歴まで、個体別に確認することができる。

例えば、産地は効率的に販売できる流通業者や販売業者への販売量を増やすといった戦略をとることが可能となり、結果として、フードチェーンにおける食品ロスの削減が期待できるという。

鮮度予測・可視化システムは、foodinfoが流通過程で収集する温度・湿度履歴を活用し、独自のアルゴリズムによって、青果物の鮮度状態を予測し可視化するシステムとなっている。

<eatmatestoreの概要>
eatmatestoreの概要

「eatmatestore」は、小売業者と消費者が利用するeコマースサイト。販売されている食品の鮮度は「採れたて度」という新たな指標に変換して可視化されており、採れたて度に応じて価格が変動するダイナミックプライシング機能を持っている。

必ずしも「採れたて度が高い食品=よい食品」ではなく、消費者は採れたて度と価格を組み合わせて検討することで、「自分に最適な採れたて度」の商品を選ぶことができる。

小売業者は、ダイナミックプライシングを利用することで食品を効率的に販売することができ、食品ロスの削減が期待される。

消費者は、自分に最適な採れたて度の商品を選ぶことで、鮮度が高い食品から低い食品まで幅広い食品を購入の候補とすることが可能となり、無意識に食品ロスの削減に貢献できる可能性がある。

「eatmate」は、消費者が利用する家庭の食生活全体を管理することができるスマートフォン用アプリケーション。eatmatestoreと連動し、「食品在庫の可視化」、「採れたて度の可視化」「消費/廃棄量の可視化」の三つの機能を備える。

食品在庫を可視化することによって食品ロス削減効果が期待できるほか、採れたて度の低い食品の消費をプッシュ通知で促す機能や、採れたて度に応じた最適なレシピを提供することで、家庭における食品ロスの削減を目指す。

<eatmateの概要>
eatmateの概要

eatmatestoreとeatmateの開発には、経済産業省「流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したスーパーマーケットにおける食品ロス削減事業)」が活用されている。

また、eatmateで活用しているレシピ情報は、エブリーが同社の料理レシピ動画サイト・アプリケーション「DELISHKITCHEN」で提供しているものとなっている。

SFC構想研究会とは、一般家庭における食品消費の最適化を実現するためのサービスのあり方やビジネスモデル、技術的な実現可能性など、フードチェーン全体の効率化の方策を検討するために日本総研が2019年に設立した、民間事業者による研究会。

フードチェーンの最川下である消費者を起点として検討している点が研究会の特徴で「消費の最適化を起点とし、サプライチェーン全体を最適化し、食品ロスを消滅する」をビジョンとして掲げている。

SFC構想研究会の役割分担として、伊藤忠インタラクティブは、消費者向けのアプリケーション企画・構築と事務局を担当する。

イトーヨーカ堂は、実証実験の実施場所の提供や実証実験の運用を担い、凸版印刷はRFIDタグアプリケーション構築を実施、日本総合研究所は、構想立案、実証実験推進、事業化検討と事務局を担当する。

三井化学は、青果物の鮮度予測・可視化アプリケーション構築を担う。このほか、大手SIerが参画し、食品情報追跡管理システムを構築する。

SFC構想研究会では、食品ロスゼロ社会の実現に向けて、実証実験の結果を踏まえたサービスの事業化に取り組む。

食品流通業では、食品ロスの削減が大きな課題となっている。食品ロスの削減は、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲットの1つとして掲げられ、国内でも食品ロス削減推進法が2019年10月1日に施行されるなど、関連する取り組みは国内外で活発化している。

食品流通業のサプライチェーンでは、返品やロスの問題に常に悩まされているが、これらはAI、IoT、ビッグデータなどの新たな技術の活用によって、サプライチェーン上のデータを可視化することによる削減が研究されるようになった。

また、ポストコロナの時代における消費者の食品消費では、eコマースの役割がますます大きくなり、各社のサービスは利便性や簡便性以外の面も含め急速に発展するものと予想される。

食品ロスの削減には、食品流通業だけではなく、食品ロスの多くを発生させている消費者の行動変容が不可欠であり、消費者が普段の生活の中で容易に食品ロスの削減に取り組めるサービスは、消費者の意識が向上するなかで、非常に高い価値を持つようになると考えられるという。

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