【連載】冷凍食品の現在と未来 第4回ローソン/冷凍おにぎりとパンで社会課題解決へ

2025年10月10日 10:30 / 経営

ローソンでは中食メーカーの製造工場の隙間時間を活用し、おにぎり・調理パンなどの冷凍食品を作る試みを進めている。目指すのは冷食を通じた社会課題の解決。物流効率化や食品ロスに対して、冷食という切り口からアプローチを図っている。

冷凍おにぎり売場

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コンビニではスーパーとの差別化のために1食完結の商品を展開

ローソンでは数年前に日販を高める一環で冷凍食品を強化。店内に冷凍什器を増やし、SKUも拡充した。そんなタイミングでコロナ禍に突入。ステイホームにより家で食事をする機会が増えたことが追い風となり、冷食の売上が伸びた。

冷凍食品は基本的にプライベートブランド(PB)を展開。売れ筋商品は「炒飯」「海老ピラフ」(ともに税込192円)や、レンジだけで調理できる簡便性の高い「レンジで簡単!焼餃子」(171円)といった200円以下の小量目の商品のほかに、「とろ~りたこ焼」(354円)などが人気だ。直近では今年から販売を始めた「油そばにんにく酢付き」(322円)も好評だという。

<今川征治氏(左)と白鳥瑞穂氏>
今川征治氏(左)と白鳥瑞穂氏

商品ラインアップについて、ローソンの商品本部デイリー・FF部マーチャンダイザーの白鳥瑞穂氏は「コンビニは即食ですぐ食べるという世界。ストック需要ではスーパーにコスパの面でかなわない。コンビニではそれほどストックせず1食完結の商品を基本的に考えている」と説明する。

白鳥氏と同様にFF部マーチャンダイザーの今川征治氏は「多様化するニーズへの対応も必要。単身者や共働き世帯の増加に伴い、手軽に調理できる冷凍食品への需要が高まっている。その中でコンビニならではの商品が選ばれている」と述べる。

中食メーカーの余剰人員を活用、隙間時間で冷凍おにぎりを製造

そんなローソンでは新たに冷凍食品の新商品として「冷凍おにぎり」の販売を始めている。製造は冷凍食品メーカーではなく、弁当・寿司などを常温やチルド帯で作っている中食メーカーに依頼している。

<西川大樹氏>
西川大樹氏

その狙いについて商品本部製造管理部マネジャーの西川大樹氏は「中食メーカーは基本的に店舗からの発注があって生産数が確定する。メーカーからすると直前まで生産数が分からないため人を余分に確保しておく必要がある。ある程度の余剰人員を抱えているため、その人員を活用するという点に焦点を当て、隙間時間で冷凍食品を作れないかと考えた」と語る。

冷凍食品は賞味期限が約1年と長いため、事前に製造量を確定できる。その結果、原材料も廃棄が出ない。さらに隙間時間に大量生産することで価格は通常のおにぎりよりも1~2割抑えることができる。

<冷凍おにぎりの4種類>
冷凍おにぎりの4種類

商品は「焼さけおにぎり」(279円)、「鶏五目おにぎり」(157円)、「胡麻さけおにぎり」(140円)、「わかめごはんおにぎり」(140円)の4種類。売れ筋のおにぎりの中からレンジアップに適している具材を選んだ。

まずは2023年にニーズの確認のために実験販売を実施。1パックに複数個が入っているおこわや焼きおにぎりの冷凍はあったが「今までは個包装タイプのおにぎりを冷凍した商品はなかった。どういう反応があるかを見たかった」(西川氏)。福島と東京の21店舗で販売したところ、予想以上の売上だった。

2025年2月から東京都の約400店舗で本格販売を開始。5月には関東約1700店舗に、7月には関東・東海・北陸・近畿・中国・四国の約9800店舗(全店の約7割)に取扱店舗を拡大。今後も工場の供給体制が整い次第、店舗を増やしていく。

冷凍おにぎりのメリットは価格を抑えられるだけではない。通常のおにぎりは1日2回配送するのに対して、冷凍おにぎりは1日1回まとめて配送するため、物流効率の改善やCO2排出量の削減にもつながる。また、先述の通り賞味期限が約1年あることから店頭での食品ロス削減にも寄与するという。

さらに「お客様が深夜帯にお店に来られた際、常温の棚におにぎりがないことがあるが、その際の機会ロス削減も期待できる」と西川氏。

冷凍の調理パン3アイテムも発売、2026年度には4000店舗に展開へ

同様の狙いから、冷凍調理パンの本格展開を7月から始めた。おにぎりと同じように常温とチルド帯の商品を作っていた中食メーカーの工場を活用して作っている。

<冷凍の調理パン3アイテムを発売>
冷凍の調理パン3アイテムを発売

展開したのは「ソーセージ&エッグマフィン」「照焼チキン&エッグマフィン」「ハムチーズ&エッグマフィン」の3アイテム(いずれも397円)。おにぎりでは売れ筋を冷凍で売り出したが、調理パンでは「常温とチルド帯にない商品を模索し、冷凍ならでは商品を目指した」(西川氏)という。

食パンやフランスパンはレンジアップした際に固くなってしまう。そうした点を考慮してたどり着いたのがイングリッシュマフィン。サンドイッチやホットドッグなどはチルドで販売しているが、マフィンは扱っていなかったことも後押しした。調理パンの販売は2026年度末までに4000店舗に拡大する目標。

「物流効率化や食品ロスというのは今後どんどん大きな課題になっていく。そうした社会課題の解決を目指して進めている」(同)。

取材・執筆 比木暁

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