【連載】冷凍食品の現在と未来 第1回イオンリテール/専門店「@フローズン」が好調

2025年09月24日 10:00 / 経営

冷凍食品が生活者から熱い注目を集めている。日本冷凍食品協会の調査によると、2024年の冷凍食品の消費量は金額ベースで1兆3018 億円(前年比4.4%増)と増加。背景には、技術革新によるおいしさの向上、ライフスタイルの変化によるタイパ・コスパ意識の高まりなどがあるようだ。盛り上がる冷凍食品マーケットを支える小売、卸、メーカーなどの取り組みを追った。

青木郁雄 デイリーフーズ商品部長

冷凍食品専門店「@フローズン」10月で18店舗体制に

最近の冷凍食品は、保存食、お弁当のおかずや足りない時の1品という役割に加え、おいしさを追求した高価格帯の冷凍グルメ、ごほうびスイーツを楽しめる主役級の商品として、存在感を増している。

ぐるなびの「冷凍グルメ」調査(2022年12月)では、購入したい場所は「スーパー」と「ネット通販」が50%台で同程度だった。近くに店舗がなくても、注目の外食メニューを試してみたい生活者のニーズに応えた商品がそろうスーパーマーケットは、冷凍食品にとって重要な販売拠点だ。

この傾向に対応し、最近のスーパーマーケットでは、新規出店、既存店の改装では必ずといっていいほど、冷凍食品売り場を強化している。生活者のニーズに応え、ワンプレート商品、総菜、スイーツ、韓国食品など豊富なラインアップの冷凍食品が身近なスーパーマーケットで購入できるようになっている。

中でも、イオンリテールでは既存店の冷凍食品売り場の拡大と共に、2022年から冷凍食品専門店「@フローズン」を立ち上げ、冷凍食品市場を盛り上げている。

現在「@フローズン」は、都市部を中心に16店舗展開。10月までに京都・仙台にも進出し、より魅力的な商品を紹介していく計画だ。

<イオンスタイルレイクタウン内の@フローズン>
@フローズン

食品本部の青木郁雄 デイリーフーズ商品部長は「10年前、冷凍食品は当社の食品売り上げの構成比は3%程度でしたが、現在では5%を超えています。@フローズンには、宝探しのように新しい商品を探しに来てくださる方が多いですね。既存の売り場に定番の冷凍食品を買いに行くのと違い、お客様の買い物のモードが変わるようです」と話す。

個性的な商品の魅力を生活者に伝えるため、デジタルサイネージを使った販促を強化。商品の作り手の思い、商品に関するストーリーを紹介している。

従業員教育にも力を入れており、月1回メーカーの担当者を講師に招き、新商品などの勉強会を行っている。商品のおいしさ、作り手の工夫などを学び、顧客からの質問に答えられるような研修を実施しているという。

ごほうびスイーツも冷凍食品で

「@フローズン」の店内は、「Heat」(専門店メニュー)、「Eat」(銘店スイーツなど)、「Cook」(冷凍食材)のコーナーで展開。特に「Heat」「Eat」が好調で、取り扱いを増やしている。

また、「@フローズン」の魅力は、大手食品メーカーの商品にとどまらず、海外や全国各地の個性的な商品、外食チェーンの人気メニューを購入できる点にある。

既存の冷凍食品売り場に比べ、新商品やこだわり商品を強化。MD構成比は定番商品3割、こだわり商品7割となっており、生活者に、より多彩な冷凍食品を楽しめる選択肢を提供している。

中でも、通常の冷凍食品売り場では導入してこなかった、サンザシアメやオーストラリアのミートパイ「FOUR’N TWENTY(フォーン トゥウェンティー)」などがヒット商品に育っている。

そのほか、若い世代では、ワンハンドで食べられる冷凍スイーツが売れ筋となっている。

博報堂生活総合研究所の生活定点によると、パソコンや携帯電話、スマートフォンを見ながら食事をすることが多い」と答えた人の割合は、2024年は25.4%だった。年代別に見ると、20代が48.6%で全体より約23ポイント高くなっている。冷凍食品でも、「ながら食べ」のできるワンハンドスイーツ人気につながっているようだ。

<イオン相模原ショッピングセンター内の冷凍食品売り場>
イオン相模原ショッピングセンター

「資さんうどん」など注目の外食も楽しめる「冷凍グルメ」充実

また、「@フローズン」では、利便性と特別感を兼ね備えた「冷凍グルメ」の人気も目立つ。外食大手チェーンの商品も充実しており、吉野家の牛丼は常に冷凍食品売り上げランキングの1桁順位をキープしているという。

最近では、すかいらーくグループ入りした北九州発「資さんうどん」の「肉ごぼ天うどん」、「ぼたもち」も購入できる。

タイパ・節約・フードロス対策も冷凍食品におまかせ

2025年4月に日本冷凍食品協会が発表した、冷凍食品の利用状況調査(全国の25歳以上男女1250人が回答)では、女性の利用頻度増加理由は、「野菜など生鮮品の価格が上がったから」が、昨年より大幅に増加した(前回 24.1%→今回 33.6%)。

利用頻度が増えた冷凍食品も、女性では「冷凍野菜」が昨年より大きく伸び(28.0%→33.9%)、物価が上昇する中、節約のため、冷凍野菜など素材系の冷凍食品を購入する頻度がアップしていることがわかる。

イオングループのプライベートブランド(以下:PB)の素材系冷凍食品の中でも、ブロッコリー人気が継続。ブルーベリーの売り上げも好調で、前年に比べ2倍になっている。特に、1kgの大容量パックの販売が伸びている。

そのほか、2025年春から販売開始した自然解凍で使える「スライスきゅうり」は、想定以上の売れ行きとなっている。使いたいときに適量欲しい、フードロスも減らしたいという生活者のニーズにマッチした格好だ。

冷凍食品に見える生活者の買い物行動の変化

冷凍食品の売れ方をみていくと、生活者の生活様式・買い物行動の変化もみてとれる。

青木部長は「従来、冷凍食品は夕方によく売れ、午前中にはあまり売れなかったのですが、最近は午前中、冷凍食品が売れるようになりました。午前中に買い物に来るシニアの冷凍食品消費量が増えていることや、夏場ですと、暑くなる前に買い物に来るのかもしれません」。

また、「夏も冷房のきいた部屋にいることから、夏にかき氷タイプのアイスが売れることが減りました。冬アイスのブームもあり、アイスは季節感がなくなってきていますね」と説明している。

PBの冷凍食品では、今後ワンプレート商品を強化する。2025年春は、トップバリュの中で低価格帯ブランド「ベストプライス」から、「五目ごはんと鶏肉の黒酢あん」「チーズカレーとハンバーグ」など3品のワンプレートを298円(税抜)で発売した。

<コスパ重視の冷凍ワンプレート>
コスパ重視の冷凍ワンプレート

サラダやデザートなど「トップバリュ」の他の商品と組み合わせても、ワンコイン(500円)以下でセットメニューにアレンジでき、節約志向に対応した買いやすい価格に設定した。

青木部長は「ワントレ―商品は10年以上前から開発していますが、ここ2~3年で人気に火が付きました。外食の値上げの影響や、いろいろおかずを作ったときのように食材のムダを気にせずすみます。シニアから、がっつり食べたい若者向けまで、全世代にニーズがありますので、298円、370円、498円と価格帯・量・ターゲットを分けて、さまざまな商品を開発しています。今後は栄養食や、調理時間を短縮した商品も挑戦したいですね」と話している。

メーカーに加え、小売業も競うにように魅力的な新商品を投入し、売り場を強化している冷凍食品。毎日の食事から、自分へのごほうび、節約したい時などさまざまに生活者の選択肢が広がっており、ますます市場が盛り上がっていきそうだ。

取材・執筆 鹿野島智子

第2回日本アクセス/「チン!するレストラン」大ヒット に続く

イオンリテール/「イオン相模原ショッピングセンター」7/18全館リニューアル

流通ニュースでは小売・流通業界に特化した
B2B専門のニュースを平日毎朝メール配信しています。

メルマガ無料登録はこちら

イオン株式会社に関する最新ニュース

一覧

経営 最新記事

一覧

イオンに関する最新ニュース

一覧

イオンリテールに関する最新ニュース

一覧

冷凍食品に関する最新ニュース

一覧

最新ニュース

一覧