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セブン&アイ/清水執行役員が語る、オムニ7「ネットとリアルの融合」(前編)

2018年02月27日 16:30 / 流通最前線トレンド&マーケティング

――オムニ7が目指す提案型のネット通販のイメージは。

清水 百貨店がやっているような提案型の対面販売をオムニ7でやってみたい。今回は、チョコレートだけで、まず、ネットの中にリアルを登場させるということで、ヴァーチャルな売場でネットとリアルを融合した。また、各社の商品を横に並べるということで、業態をまたがせた。

<VRショップでは、ロフトの雑貨も併売した>
VRショップでは、ロフトの雑貨も併売した

あと加える要素があるとすれば、接客みたいな要素で、接客の中でこちらから提案する機能だ。チョコレートがいっぱい並んでいるのではなく、テーマ性とかで、買える売場ができるようにしたい。

例えば、入学式というテーマで、ヴァーチャルでこういう店舗を開いても、並べる商品は、無限にある。新入学、新入園。お弁当箱から、手提げかばんとかもある。

――ネット通販で特別ページを立ち上げやすい企画は何か。

清水 バレンタイン、ホワイトデー、母の日、父の日みたいな企画や、利用シーンでくくる企画として、お花見、バーベキューなどもある。商品の幅も広がって、事業会社の各社がみんな出せるものに関しては、一月に一回でも、どんどんイベントは組んでいきたいと思う。

バレンタインとホワイトデーとか、当たり前の企画は当たり前にやる。お花見とかバーベキューとかは、ある程度、期間が長く持てる。そういったものは、こちらから提案していく。

例えば、お花見を取り上げるなら、食べ物もそうだし、敷物、弁当箱もあるし、お花見のファッションというのもある。家族とお花見だったら、子供と外で遊ぶシーンがあるし、お花見の名所という本を売ってもいいし、桜の写真集を売ってもいい。

バーベキューだって食材だけじゃなくて、同じようなことができる。バーベキューのメニューの紹介もあるし、バーベキューをやる道具の話もある。

――アマゾン、楽天、ヤフーなど他のネット通販と比べて、セブン&アイの強みは何か。

清水 セブン&アイは事業会社があり、プライベートブランドもある。リアルな事業があるから、打ち出す商品が明確になる。ヨーカドーや、そごう・西武など連想しやすいので、信用もある。

<イトーヨーカ堂のコーディネート陳列>
イトーヨーカ堂のコーディネート陳列

例えば、西武池袋本店に行った時も、オムニ7で見た商品をリアルな店舗でも違和感なく買えるし、逆もしかりで、西武池袋本店で気になるモノが、ヴァーチャルストアであたかも店があるように展開されていたら、違和感なく買える。

違和感というのが、ネットの世界のストレスになっている。だから、ストレスフリーで買い物をしてもらうというのが、しっかりコンセプトとしてある。

とにかく境目を無くしたい。これはリアルで、こっちはネットだとか、雰囲気も違うし、買い方も違うということではない。リアルで事業をやってるからこその延長線上で、ネットでも買ってもらえ、かつ、リアルではやりにくいことをネットではやっていきたい。

グーグルやヤフーは検索で、関連する事項を表示している。検索の世界そのものを売場に取り込んでしまおうというイメージだ。

セブン&アイグループとして、商品を利用シーンやテーマ別に販売するカルチャーはある。お客様の立場に立てば、絶対に必要な視点だと思う。例えば、ヨーカドーでも、お客様は、子供の誕生日で、ケーキも買って豪華な食事も作るけど、一緒にプレゼントを買ったりと、店内を回遊している。アマゾンや楽天ではできない、商品の総合提案力が強みになると思っている。

<西武渋谷店のコーディネートディスプレイ>
西武渋谷店のコーディネートディスプレイ

――リアル店舗で、部門を超えたテーマ別、シーン別の売場が作りにくい理由は何か。

清水 セブン-イレブンのような、小さなお店であれば、一つの棚にいろんな商品を並べることは簡単だが、ヨーカドーやそごう・西武のように、大きな店になると場所も広く、担当者も別にいて、商品部門別の縦割りの管理がある。そこを、横串で展開するのは、ちょっと難しいがある。

セブン-イレブンならば、テーマ別の売場は作りやすいが、結局、食品と一部の雑貨しかない。麺とめんつゆみたいな組み合わせはできても、例えば、夏というテーマで、そこで大々的に、浮き輪とか水着を売るまでには至らない。

ヨーカドーやそごう・西武では、部門別の組織がある。大きいが故に、通常の流れの中だと、それぞれの売場に責任者を配置して、その人が仕入れから販売までやるという流れが、あって然るべきだ。でも、組織があるが故に、組み合わせでいろいろやるのは難しい。

スペースの問題も、それぞれの部門別にスペースの管理者がいるし、店全体のスペースについても、当然、そこを利用するスケジュールは決まっている。

――店頭プロモーションの課題は何か。

清水 例えば、入学式のシーンをあるスペースで再現することはできる。でもプロモーションで使っているランドセルが欲しいという話になると、ランドセル売場に行って、いっぱい並んでいる中から選ぶし、洋服は洋服売場にいって選ぶ。シーンを見せている場所と買う場所は、やはり離れざるを得ない。

ところが、ネットだったら、出てきたものから、どんどんクリックして、色違い、サイズ違いを、すべて表示できる。

そうすると、ヨーカ堂の入口で、何となく入学式がディスプレイで再現されているけど、それって、それっきりだよねという話になる。ディスプレイからは直接は買えない。ディスプレイから、この商品の色違いが見れるとかになれば、話は別だが。

――逆に、ネット通販のデメリットは。

清水 リアルと違うのは、まずクレジットカードを登録しないといけない点だ。アマゾンのように知名度がある通販サイトだったら登録できるけど、よく聞いたことがないモールで、自分のカードを登録するのかという課題がある。

<オムニ7の支払い方法>
オムニ7の支払い方法

商品を探し続けてしまう課題もある。値段の比較ができるから、さらに安い商品を探してしまう。それに、買った後でさらに安い商品を見つけると悔やんでしまうこともある。いつでも買える故に、夜までずっとやってしまい、時間を無駄にしてしまう面もある。

リアル店舗は、現金で払おうと思えば、現金で払えばいいし、カードだって店から情報が流出すると思うこともないし、夜中もずっと店の中を歩き回ってしまうこともない。

お客様は、買い方が違うということを意識して購入している。リアルな商店街だと、ふらっと入って買い物ができるが、ネットだと、名前も知らない店舗でモノを買うことは、なかなかやらない。

地方の物産館みたいなネット通販ならば、まだ買う可能性はある。明らかに、このお店は1回しか利用しないなというお店だと、カード登録するのをためらってしまう。価格が高くなればなるほど、ここで買って大丈夫かなとなる。

■清水健(しみずけん)氏の略歴
1968年5月:生まれ
2002年10月:アイワイバンク銀行(現セブン銀行)入社
2013年10月:セブン&アイ・ホールディングス
事業推進部シニアオフィサー
2016年5月:セブン&アイ・ホールディングス
執行役員オムニチャネル管理部シニアオフィサー

■セブン&アイ/清水執行役員が語る、オムニ7「ネットとリアルの融合」(後編)
https://www.ryutsuu.biz/column/k022850.html

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