主要スーパー業績ランキング/8社すべて増収も、利益は違いが鮮明に
2025年05月20日 10:30 / 決算
関東に店舗を持つ主要GMS・スーパーマーケット8社の2025年2月・3月期の決算が出そろった。ランクインした8社すべてが増収となった。そのうちイオンリテールなど3社は減益となった一方で、ライフコーポレーション、ヤオコー、サミットなど5社は増益を確保。人件費や物流費の増加、原料高など減益圧力が高まる中、利益面は各社で結果が分かれた。
イオンとセブン&アイのスーパー、増収もコスト増を吸収できず減益に
ランキングのトップはイオンリテールで、8社の中で唯一、営業収益で1兆円を越えた。ただ、営業利益は減益だった。
2024年度前半は売上高や客数アップのため値下げといった価格戦略を重視した結果、粗利が悪化。また、人件費や販売促進費といった経費の増加も響いた。第4四半期になって盛り返したものの、全体では営業利益4.2%減となった。
<そよら入曽駅前>
※イオンリテールがタイパ・簡便商品を充実させて3月にオープンした
同じくイオングループで4位にランクインしたユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)は、営業収益は2桁増収となった反面、営業利益は2桁減益だった。
事業会社のマルエツの既存店客数増やカスミの客数復調、昨年11月に経営統合したいなげやの数値が加わったことなどが増収に寄与。その一方、人件費や水道光熱費・物流費の上昇など販管費の増加によって利益面は苦戦した。
6位にランクインしたセブン&アイグループのヨークベニマルも、利益面は2桁減益となった。原材料価格の高騰などが利益を圧迫した。
<ヨークフーズ東小金井店>
※イトーヨーカ堂が東京都小金井市に4月にオープンした
このように、イオンとセブン&アイという大手流通2社のスーパーが、人件費や物流費、原材料の高騰といった状況下で、減益を計上する結果となった。
ただ、セブン&アイグループのイトーヨーカ堂は前回の赤字から黒字転換を果たすなど健闘した。
■セブン&アイ 決算/2月期営業利益21.2%減、海外コンビニが苦戦
■U.S.M.H 決算/2月期営業利益13.4%減に、販管費16.2%増が影響
ライフ、ヤオコー、サミット「らしさ」が顧客の支持集める
一方、コスト削減や独自戦略で経費増をカバーした5社は増収増益を計上している。
中でも、ライフコーポレーション、ヤオコー、サミットは消費の二極化に対応するとともに、各社「らしさ」を打ち出すことで、顧客の支持を集めていることがうかがえる。
ライフコーポレーションの2025年2月期は、営業収益、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新。営業利益、経常利益もコロナ禍で過去最高となった2020年度に次ぐ高水準となった。
品質と価格のバランスを追求した値ごろ商品の強化、ナチュラル志向の高品質プライベートブランド(以下:PB)「ビオラル」など独自商品の拡販により、業績を伸ばした。
物価の上昇により、生活者の消費の二極化が進む中、上期は粗利率を政策的に落としても価格を打ち出す戦略だったが、下期は見直した。
消費の二極化に対し、岩崎高治社長は「年金生活者など節約志向の方もいるので、品質と価格のバランスについて対応した。当社のPB『ビオラル』は健康や地球環境を意識したブランドの中では価格競争力があるので、ニーズは減らず、むしろ伸びていく」と見ている。
ただ、米価格の高騰により、「総菜部門で年間20億円ほどコストアップしている」という。
ヤオコーの2025年3月期決算は、せんどうが2024年4月1日付で連結子会社となったこともあり、大幅な増収増益を計上している。
川野澄人社長は「米価格の高騰により、総菜部門に数億円の影響が出ているが、各部の価格政策と生鮮の改善などにより、単体では36期連続の増収増益となった。(埼玉県など)北部では、特に年金生活の方は収入が増えないということで、生活防衛色が強くなっている。(神奈川県など)南では賃上げの恩恵を受ける共働き世帯が多く、地域特性を意識した南北政策が功を奏した」と分析している。
<南ではヤングファミリー向けにグミを強化>
※ヤオコー綾瀬店
サミットの2025年3月期決算は、人件費、電気代の増加を、総利益の増加と物流などコスト削減の取り組みで吸収。各利益段階ともに増益を確保した。
服部哲也社長は「お客様にとって地域最安値のスーパーではない中で、われわれの店に来ていただけている。サミットで買い物をするのは楽しくて、生活の一部というようなお客様との関係ができているのではないか」と見ている。
<おためし下さい>
※顧客が気になる商品を紹介し、実際に食べてみたい商品をリクエストできる(サミットストア エミテラス所沢店)
■サミット 決算/3月期増収増益、物流費などコストダウンが奏功
取材・執筆 鹿野島智子、比木暁
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