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キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(マーケティング編)

2018年06月15日 16:30 / 流通最前線トレンド&マーケティング

■相対的な「おいしさ」でなく、絶対的な「おいしさ」を表現

<スーパーの店頭に並ぶ「本麒麟」>
スーパーの店頭に並ぶ「本麒麟」

――消費者に対して、どうやっておいしさを訴求したのですか。

木村 基本的に、「本麒麟」の特徴はビールらしいおいしさなので、あまり上品とかによらずに、直感的においしさというものを伝えるコミュニケーションを意識しました。

ボリュームの観点では、過去最高となる1万GRP以上の広告プロモーションをやります。いままで出てきた新商品の中でも最大級の広告プロモーションを計画した。3000GRPくらいの広告プロモーションの新商品もある中で、今期の新商品の中では、最大の広告プロモーションです。

※GRPとは、Gross Rating Pointの略語で、「延べ視聴率」を意味する。

TVCMでは、新ジャンルということを最初から言わない仕立てにしました。新ジャンルの中で相対的においしいではなくて、絶対的なものとして、おいしいをコミュニケーションとして伝えるのが特徴です。最初に新ジャンルですよって言ってしまうと、その中で、おいしいというコミュニケーションになってしまう。だから、絶対的においしいということだけを伝える。これでもかというくらい、コミュニケーションの中でおいしさを使っています。

お客さんの中には、いろんなお客さんがいらっしゃって、新しいから買ってみようというお客さんもいらっしゃれば、しばらく様子をみようというお客様もいらっしゃるのですが、徹底して、一貫して、おいしいというコミュニケーションを続けることによって、そこまでいうなら買ってみようか、というお客さんを作りたいなと思いました。

<TVCMのワンシーン>
TVCMのワンシーン
出典:キリンビールプレスリリース

――おいしさの表現で工夫した点はありますか

木村 表現として工夫したことは、共通したフォーマットとして、TVCMで「驚き」というところを表現の一環として意識しました。お客様に意識して残して頂くというためには、ある程度のインパクトは必要だったので、TVCM出演者の方には、おいしさを驚きで表現していただくということをやっていただきました。

当社だけでなく、おいしさのコミュニケーション・表現については、結構、出尽くしているなと思っていました。いろんな形で、ちょっと手を加えて、いろんなおいしさの表現を工夫してやっても、逆にお客さんに伝わりづらい。「一番、お客さんに短時間でダイレクトに伝わるコミュニケーション」って何かを、考えた時に「驚き」というのがあった。

――TVCMでは、どんな視点でタレントさんを起用したのですか

木村 メインで起用しているのは、俳優の江口洋介さん、タレントの井上真央さん、歌舞伎役者の松本幸四郎さんです。メインの3人を変えずにシチュエーションを変えてCMを作成しています。江口洋介さんが、ほかのタレントさんに本麒麟を飲ませにいくというCMを放映しています。タレントさんは、おいしいということを伝えたいので、おいしさを、きちんと表現していただける方を大前提に起用しました。

40代、50代がメインターゲットですが、タレントさんも40代、50代だけではなくて、この人がおいしいというのなら、試してみようという気持ちも起こしてみたかったので、タレントの井上真央さんを女性ということもあって起用しました。

■100万本サンプリングで消費者に「おいしさ」を伝える

――消費者向けの試飲はどう実施しましたか

木村 TVCMも大切ですが、お客さんに味を知ってもらうために、実際にお客さんにサンプル缶350mlを配布しています。直接的に飲んでいただいてファンを増やしていくことを下期もやっていきます。サンプルは上期と合わせて100万本を予定しています。

ただ、サンプル缶はどうしても常温の商品を配布することになるので、いかにおいしい状態で飲んでいただくかということもいま検討しています。体験できる人数に限りはありますが、試飲イベントみたいなものも十分に可能性はあると思います。

まだ、出たばかりの商品なので、より多くの人に知ってもらうことが、一番大事なところなので、サンプル缶の配布をメインとしてやっています。年間で100万人くらいには飲んでいただきたい。

主に量販店の店頭でサンプリングをしましたが、今回は、飲食店さんなどを回る業務用の営業部隊の力を借りて、例えば、ビジネスホテルとか通常は、お客さんとは合わないようなところでもサンプリングしています。

<YOSHIKIさんのスペシャルサイトも設置>
YOSHIKIさんのスペシャルサイトも設置
出典:キリンビールプレスリリース

――今後のコミュニケーション戦略は、どう展開しますか

木村 若い人は、TVへの接触頻度が少ないので、6月からはツイッターなどSNSを活用したキャンペーンも仕掛けていきます。SNS上では、長いTVCMを流しても食いつかないので、短いコミュニケーションをやっていきます。

また、ブランドアンバサダーとして、X JAPANのYOSHIKIさんを起用しています。YOSHIKIさんは、本物を知る男ということで評価が高いので、WEB上で活躍してもらっています。新規性と注目度だけで選ぶんじゃなくて、この人が言うなら「おいしさ」というのを信じられるなというところで、YOSHIKIさんを起用しました。

6月7日から立ち上げたYOSHIKIさんによるブランドサイトに先駆け、発売当初からYOSHIKIさんには登場していただいています。通常、新商品はTVCMが多いんですけど、WEBでしか展開していないのに、YOSHIKIさんが登場していることについての認知度は非常に高くて、かなりWEB上では話題になりました。

YOSHIKIさんには6月7日から、TVCMにも登場していただいています。

話題作りを含め、3年後には、のどごし<生>に続く、大型ブランドにしたいと思っています。

■プロフィール
木村正一
マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 本麒麟ブランドマネージャー
2004年4月:キリンビール入社
2004年10月:近畿圏統括本部京滋支社京都支店(エリア営業)
2010年10月:広域販売推進統括本部 広域販売推進第1支社営業1部(外食チェーン本部担当)
2016年10月:マーケティング部
2017年10月:マーケティング部ビール類カテゴリー戦略担当 本麒麟ブランドマネージャー

※ビール・発泡酒・新ジャンルの定義
出典:日本のビール・発泡酒・新ジャンルと税2016年=ビール酒造組合・発泡酒の税制を考える会

ビールは、麦芽・ホップ及び水を原料として発酵させたもの。麦芽・ホップ・水及び麦その他政令で定める物品を原料として発酵させたもの。ただし、その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の十分の五を超えないものに限る。

発泡酒は、麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有するもの。麦芽以外の原料の使用料が3分の1以上なら発泡酒となる。

新ジャンルは、その他の醸造酒(発泡性)は、糖類・ホップ・水及び大豆・えんどう・とうもろこし等を原料として発酵させたもの。リキュール(発泡性)は、麦芽比率50%未満の発泡酒にスピリッツを加えたものでエキス分が2%以上のもの。

■本麒麟
http://www.kirin.co.jp/products/beer/honkirin/

■キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(商品開発編)

キリンビール/3カ月で1億本突破「本麒麟」ヒットの秘密(商品開発編)

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