【連載】冷凍食品の現在と未来 第2回日本アクセス/チン!するレストランが大ヒット

2025年09月26日 10:30 / 経営

日本アクセスでは、生活者の潜在需要を顕在化し、冷凍食品市場を盛り上げる取り組みとして、「フローズンアワード」、「チン!するレストラン」といったイベント、オリジナル商品の開発を強化している。従来の卸売・物流機能の提供に加え、冷凍食品の魅力を直接生活者に届けるための新たなチャレンジとなる。冷凍食品になじみのない生活者や、定番品など決まった商品のみ購入するライトユーザーに、冷凍食品のカテゴリーの幅広さ、利便性、おいしさなどの魅力を伝えることを目指している。

小川みさと フローズン食品MS部長

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「フローズンアワード」で推し冷凍食品を応援

小川みさと フローズン食品MS部長は「冷凍食品の進化は目まぐるしく、おいしく便利な新商品がどんどん登場している。その上、ロングセラーもブラッシュアップしている。この冷凍食品のすばらしさを生活者に知ってほしい。冷凍食品をあまり買わない人、いいイメージがない人、冷凍野菜は買うがワンプレート商品は買わないなど買うものが限られている人にも、もっと冷凍食品の魅力を伝えたい」と意気込む。

2025年で13回目を迎える「フローズンアワード」は、冷凍食品・アイスクリームの人気No.1を一般消費者のWeb投票により決定するコンテスト。冷凍食品であればおかず、ワンプレート、おやつ・軽食、米飯、麺類、新商品、アイスクリームであればカップ、プレミアム、箱、新商品といったカテゴリーごとに、No.1と総合No.1を決める。今年は新設された「冷凍ペットフード・アイス」も登場し、多様な商品が一同に会する。2024年は過去最高の約378万票を集めた。

<卸とメーカーが一体となって市場を盛り上げる>
卸とメーカーが一体となって市場を盛り上げる
※24年冷凍食品部門は味の素冷凍食品「ギョーザ」、アイスクリーム部門は森永製菓「チョコモナカジャンボ」がグランプリを受賞

メーカー各社が作成した商品プロモーション動画をフローズンアワード公式サイト上で掲載し、投票を集めるほか、同社主体で昨年からフローズンアワードオリジナルショートドラマを制作しSNS上で配信。どちらもメーカー各社のトップから社員まで参加し、アワードを盛り上げた。

商品プロモーション動画は、サイト上でコメントが付けられるシステムにしている。視聴者からは「この商品がすごく食べたくなった」「久しぶりに食べてみようと思う」といったコメントがリアルタイムで寄せられ、投票を大いに盛り上げたという。

2025年は、ショートドラマ「推しアイス戦争~アイス部、爆誕!」が10月1日~30日に毎日2分、30話連続でYouTube・Tiktok・Instagramで配信予定だ。

新作のドラマでは、プロの役者に加え、オーディションで出演者を公募した。ドラマの主要キャストである高校生役を一般から募集し、生活者も巻き込んだ企画に進化させている。普段スーパーマーケットがリーチしにくい若年層が、友人や家族などに口コミするなど、話題にしてもらうことを期待。イベントのプロセスに生活者が感情移入できるような工夫を凝らした。

<25年も10月からドラマを配信>
25年も10月からドラマを配信

小川部長は「メーカーの商品開発にかける情熱はすばらしいが、売り場だけで商品開発のプロセスなど情報を届けるには限界がある。オンラインと店頭、生活者と双方向でコミュニケーションをとり、『推し商品』がどのようなプロセスで、順位を上げていくか。自分ごとのように楽しみながら、投票してもらえる仕組みを作っている。オーディションには、フローズン食品に対する熱い思いを語ってくれる10代が参加してくれ、とても盛り上がった」という。

「チン!するレストラン」が大ヒット企画に

フローズンアワードから派生して、「チン!するレストラン」という新たなヒットコンテンツも生まれている。フローズンアワード10周年特別企画として2022年10月、東京・秋葉原で開催された。冷凍食品・アイスクリームの中から好きな商品をセルフレンジアップ式で、楽しめる食べ放題イベント。コロナ禍で店頭での試食販売が難しかった時期でもあり、新商品のアピールも兼ねていた。

<22年東京での第1回開催>
22年東京での第1回開催

東京開催の翌年以降、名古屋、大阪の大型会場でポップアップイベントとして開催し、多くの来場者を集めた。2024年9月にはアルビスと連携し、スーパーマーケットの実店舗で初めて実施。2025年も静鉄ストア、遠鉄ストアなどで展開している。

小川部長は「この企画は、スーパーなど実店舗で行いたかった。冷凍食品の魅力を伝え、食べ放題を楽しんでいただくエンターテインメント性はもちろんだが、そもそも冷凍食品をあまり買わない人は、売り場の場所や商品をよく知らない。スーパーでの開催は、アプリ会員といったリピーターのロイヤリティーがさらに増すと好評だ」と話す。

イベントの特別感だけでなく、スーパーマーケットの店舗そのもの、企業が取り組む環境・地域への貢献といった商品以外にも関心を持ってもらえるきっかけとなっているようだ。

ロジスティクス機能も日本アクセスの強み

「チン!するレストラン」の盛り上がりを見て、社員の福利厚生として冷凍食品を取り入れる企業も出てきた。小川部長は「ランチ難民という言葉もあるくらい、オフィス周辺に手ごろな飲食店がなかったり、社員食堂がなかったりとオフィスワーカーの困りごとになっている。企業から福利厚生の一環として、冷凍食品をオフィスに用意したいという声をもらい、対応している。冷凍食品はセルフで簡単に準備でき、人手も手間もかからない。全国に冷凍冷蔵物流センターを持つ当社のロジスティクス機能を生かし、商品供給まで一貫してサポートできるのも強み」と説明している。

さらに、冷凍食品は新商品の発売はあるものの、ロングセラー商品が強く、季節感を出しにくい商品のため、生活者の興味をひく商品の投入で、催事の代わりに売り場を盛り上げる戦略を取っている。

具体的には、吉本興業とのコラボレーション商品といったエントリー層の取り込みを図る商品開発を推進している。あまり冷凍食品売り場に足を運ばない生活者に「吉本興業・お笑い」というフックで、期待感を持って商品にチャレンジしてもらう試みだ。

4月から冷凍たこ焼き「吉たこ 塩こんぶ&マヨネーズ風ソース」を販売開始したが、POSデータを見ると、冷凍食品を今まで購入していなかった層、冷凍食品は購入していてもたこ焼きは買ったことがなかった層にリーチできているというデータが集まった。エントリー層に商品が届いている手ごたえを感じているという。好評を受け、9月からコラボ第2弾「吉たこ 白だしとろろ」を販売開始した。

<吉たこ 白だしとろろ>
吉たこ 白だしとろろ

そのほかにも、高校生が開発した冷凍食品も発売した。同社は全国の高校生がご当地の食材を使ったオリジナルレシピで競い合う「ご当地!絶品うまいもん甲子園」にパートナー企業として参加している。

準優勝3校には、「商品開発の権利」を贈り、高校生が考案したおにぎりメニューをそれぞれ同社の冷凍食品として商品化し、全国販売している。沖縄県立首里高等学校、茨城県立鹿島高等学校、和歌山県立神島高等学校が、それぞれ地元のなじみのある食材を生かした個性的なメニューを開発した。

魅力的な新商品、おいしさを磨き上げ続けるロングセラー商品などメーカー各社が開発する冷凍食品は、卸売業のさまざまな努力もあって売り場に、食卓に届いている。同社の新たな展開は、これからも注目を集めそうだ。

取材・執筆 鹿野島智子

第3回味の素冷凍食品に続く

【連載】冷凍食品の現在と未来 第1回イオンリテール/専門店「@フローズン」が好調

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