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日本ユニシス/ライフとのAI需要予測・発注自動化への取り組み

2021年08月04日 15:50 / 流通最前線テクノロジーズ

ライフコーポレーションと共同開発のAI需要予測自動発注サービス

そして、New Retail Trinity Modelの思想に基づいた取り組みとして今注目を集めているのが、AI需要予測自動発注サービス「AI-Order Foresight」だ。

「AI-Order Foresight」は、販売実績・気象情報・企画情報などの各種データをもとに、小売店舗における日々の商品発注数を自動算出するクラウドサービス。ライフコーポレーションとの共同開発により生まれたサービスで、一部店舗で2020年2月から利用開始、今では全282店舗(2021年4月末時点)で「AI-Order Foresight」を利用している。日配商品の発注作業年間40万時間の半減を目標としており、達成できそうだという。共同開発の経緯は以下の通りだ。

・ライフコーポレーションではドライグロサリー(冷蔵保存しない食品)を対象とした自動発注システムをすでに導入済みだったが、販売期間が短い牛乳などの日配品を対象にできる高精度な自動発注システムの導入には至っておらず、店舗、商品ごとに従業員が発注数を毎日算出する作業に多大な時間を要していた。
・発注業務の省力化により業務時間をより高度な店舗運営へ注力させるため、需要予測に基づく自動発注の技術を保有する日本ユニシスをパートナーに、日配品の発注自動化プロジェクトを2018年に開始。
・本格的なサービス利用開始に先立ち、2018年10月から2019年1月の約4か月間、「AI-Order Foresight」の店舗実証実験を実施。実証実験では、規模の異なるライフ3店舗で日配品全16分類約2000商品を対象アイテムとし、発注作業の削減効果および業務運用手法を確認した。

なお、コロナ禍の影響による需要供給変動においても、商品欠品や廃棄ロスの悪化を防ぎ、適切な発注量の計算が実施できていることを確認しているという。

<「AI-Order Foresight」をライフが採用>
「AI-Order Foresight」をライフが採用

「AI-Order Foresight」は、小売店舗の販売実績・気象情報・催事情報などの各種データから、適切な商品発注数を自動決定するサービス。作業負荷や難易度の高い発注業務を自動化することで、従業員の業務負担を軽減し、従業員の経験やスキルに依存しない店舗運営・機会ロス・廃棄ロス削減を実現する。

自動発注システムの利用においては、システムからの推奨発注数をそのまま発注とするパターンと、推奨発注数を確認した上で発注を掛けるパターンとで、削減できる工数にも差が出る。「AI-Order Foresight」では、新商品や新店舗など、過去のデータが少ないといったケースには推奨発注数にアラートを出して、個別に確認することが可能だ。推奨発注数が過去と比較して多すぎる、少なすぎるといった場合も同様だ。これにより確認すべき推奨発注数を絞ることが可能となっている。なお、日々サイクルを回し、データを蓄積することで推奨の精度は高まっていく。
「AI-Order Foresight」の主な特徴は以下の4つだ。

(1)全カテゴリでの自動発注

従来の自動発注システムでは困難だった日配品・生鮮品も分析可能。商品の欠品ロス・廃棄ロスの削減に繋げる。店員の経験やスキルに依存しない自動発注を実現する。
「なかなか予測精度の出しにくい生鮮品などにも対応しています。ライフコーポレーション様ではまずは日配品の需要予測自動発注からスタートしていますが、今後の展開として生鮮品や惣菜などについても適用を検討いただいております」と語るのは、日本ユニシス 流通第一事業部 営業一部 第一営業所 担当マネージャーの渡辺 卓氏。また各店舗の1SKUごとに予測していくところも「AI-Order Foresight」の一つの特徴だとも話す。

<予測精度の出しにくい生鮮品などにも対応できると渡辺氏>
予測精度の出しにくい生鮮品などにも対応できると日本ユニシス渡辺氏

(2)日々の運用メンテナンスから解放

AIがデータサイエンティストに代わって発注精度を維持・向上させるため、従来のようにアナリティクス専門組織やデータサイエンティストが不要。このメンテナンスフリーの特徴についてはとくにライフコーポレーションからの評価が高かったという。こうした自動発注システムはトレンドが変わると予測精度がさがってしまう問題があるが、「AI-Order Foresight」ではそうした部分をAIが担うことで精度の低下を防いでいる。

「AI-Order Foresightは定期的に予測モデルを作り直します。精度が落ちにくい理由はそこにあります。周囲の状況やトレンドが変わってもそれに合わせた予測モデルに作り直すことで予測の精度を維持します」と強調するのは、日本ユニシス 流通第一事業部 営業一部 第一営業所 シニア・スペシャリストの野口 秀胤氏だ。

<定期的に予測モデルを作り直せるのが強みと野口氏>

(3)運用支援サポートの充実

導入効果を事前に測定できるアセスメント・店舗PoC(検証)サービスを準備。導入後も精度・予測モデルを再検証する分析サービスを提供する。日本ユニシスではMD基幹システムからアプリケーションまで、ソリューションをトータルで提供しているため、そうした周辺システムも含めまとめて支援を行っている。

(4)短期間で安価な導入

クラウドサービスで提供可能なため、既存の発注システムと連携するだけで利用開始可能。システム運用の負荷も最小限に抑える。「クラウドサービスですので、比較的小規模な店舗様でもご利用いただきやすくなっています。ぜひお問い合わせください」と渡邉氏。こうした自動発注システムは大規模な店舗チェーンでの導入が多いが、「AI-Order Foresight」はクラウドサービスのため10~20店規模の小売事業者でも導入しやすいサービスとなっている。実際にごく小規模の店舗からの問い合わせも受けているという。

「基幹システムはオンプレミスというお客様も多いと思いますが、クラウドサービスとの連携、いわゆるハイブリッドクラウドの構築や運用の部分は当社の得意とするところの一つです。安心してお任せください」と佐藤氏も語る。

変化を素早くキャッチアップしてリテール領域を支援

「AI-Order Foresight」で得られる効果については、ライフコーポレーションの事例とは異なるが、別の導入案件での試算において、導入後3か月で「人件費を約70%削減」「廃棄ロスを30~80%まで削減」「見切りロス、欠品ロスも20%程改善」といった例もあると渡邉氏は言う。「AI-Order Foresightはまだリリースして1年程ですが、非AI型の自動発注ソリューションを長年提供してきた実績も含めご評価いただいており、多くの企業様で導入例がございます。食品スーパーだけでなく、ホームセンターなどでもすでにご利用いただいています」と言う。

日本ユニシスではこれからも、「New Retail Trinity Model」に基づき、リテール領域での支援を続けていく。「これまでもお客様に寄り添ってご支援を提供してきましたが、これから先も変化する世の中を素早くキャッチアップしながら、お客様と一緒により良い世界を作り出せるように進んでまいりますのでぜひご期待ください」と佐藤氏は力強く語った。
(取材:2021年7月)

<野口氏、佐藤氏、村上氏、渡辺氏>
日本ユニシス野口氏、佐藤氏、村上氏、渡辺氏

日本ユニシス
執行役員
佐藤 秀彰氏
略歴
2013年:製造工業事業部 トヨタ営業部長
2016年:インダストリサービス第三事業部長
2017年:インダストリサービス第二事業部長
2018年:インダストリサービス第一事業部長
2021年:業務執行役員
製造業、流通小売業の顧客を担当する業務執行役員

流通第一事業部
営業一部長
村上 明伸氏
略歴
2017年:インダストリサービス第一事業部 リテール&サービス統括部 営業一部長
2019年:インダストリサービス第二事業部 営業一部
2021年:流通第一事業部営業一部長 営業一部長
食品SM、家電量販店、生活協同組合等を中心に、小売業の顧客へサービス開発・提供を推進。

流通第一事業部
営業一部 第一営業所
シニア・スペシャリスト
野口 秀胤氏
略歴
2004年まで:流通小売業専門にシステム構築および保守プロジェクト担当
2005年から:流通小売業専門に企画・マーケッティング・コンサルタント
基幹システムパッケージを初めとした多数の小売ソリューションの企画開発、および業務コンサルティング。

流通第一事業部
営業一部 第一営業所
担当マネージャー
渡辺 卓氏
略歴
2012年:テーマパーク業界 営業担当
2016年:通販業界 営業主任
2018年:流通小売業界 営業主任
2019年~:流通小売業界 営業担当マネージャー
AI自動発注サービスAI-Order Foresightの企画立ち上げ、およびサービス責任者。

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