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消費税増税/8%に増税2014年をPOSで分析、駆け込み需要を予測

2019年06月04日 17:30 / POS分析

使えるPOS分析の第7回目は、10月1日に実施される消費税増税について、市場POSデータのRDS-POSを活用して分析します。消費税が5%から8%に引き上げられた2014年3月と4月について分析することで、10月の消費税増税に備えるためのヒントを探ります。

まず、前回の消費税増税と今回の大きな違いを確認します。今回は、軽減税率が導入され、アルコールを除く食品が軽減税率対象となります。

基本的な食料品は、ほとんどが8%の軽減税率が適用されますが、一部の商品では10%の税率となる商品もあります。

食品スーパーで販売する商品では、酒類、本みりん、ペットフード、栄養ドリンク(医薬品、医薬部外品)、日用雑貨などが軽減税率の対象外となるため、10%の税率が適用されます。

紛らわしい商品では、みりん風調味料、ノンアルコールビール、甘酒がありますが、これらの商品はいずれも、飲用アルコールには該当しないため、8%の税率となります。

いわゆる駆け込み需要は、増税によって価格が上がる商品に発生するので、分析の対象カテゴリーとして、酒類と日用雑貨を選定しました。

■駆け込み需要が発生するのは「酒類」?「日用雑貨」?

では、酒類と日用雑貨では、どちらの方が駆け込み需要が発生するのでしょうか。

前回消費税増税があったのは2014年4月1日(火曜日)でした。そこで、2014年4月1日を含む、2014年3月24日以降の食品スーパー全国のトレンドを分析してみます。

以下のグラフは2014年の食品スーパー全国合計による、JICFS分類によるアルコール飲料合計(みりんを含む)と、JICFS分類による日用品(大分類)からOTC医薬品とDIY用品を抜き、日用雑貨、化粧品、家庭用品、ペット用品、その他日用品を合計したもの(日雑カテゴリー合計)の52週販売個数トレンド(100店当り換算)を示したものです。

<2014年52週の販売個数トレンド>
2014年52週の販売個数トレンド
食品スーパー全国(100店当り)

食品スーパーを対象としているため、アルコール飲料合計と日雑カテゴリー合計の販売個数にさほど大きな差はなかったので、グラフも同じ軸で表しました。

ここで特筆すべきことは3月24日~3月30日の1週間から、増税となった4月1日が含まれる翌週にかけての落差に関し、両者に大きな違いがあることです。

グラフの落ち込み幅を見ると、日雑カテゴリー合計が1週間で約3分の1下落したのに対して、アルコール飲料の下落幅は年末や、お盆の翌週にも及ばないほど小さいものであったことが分かります。

前回は食品全体が増税の対象となっていたことを考えると、酒類は食品全体の中の一品目に過ぎず特需が限定的であった可能性もあります。

今回は、食品は8%で税率が据え置きとなり、10%に増税される酒類は、前回と異なる動きをする可能性もありますが、2014年の実績では、酒類は、駆け込み需要が小さかったことが分かります。

グラフからは、賞味期限の心配のない日雑カテゴリーに重点を置く方が効率がよいと考えられます。

■日用雑貨で売るべき商品は何か

では、日用雑貨の中で、駆け込み需要が発生するのは、どんな商品なのでしょうか。さらにカテゴリーを絞り込んで分析してみます。

ここで、日雑カテゴリーに絞り、JICFS細分類別で2014年3月最終週の販売個数降順で並べ、さらに、その時の前年比が100%以上であったもの15カテゴリーをグラフにしました。

増税前に販売個数が多かった商品は、ゴミ袋、衣料用合成洗剤、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、猫フード、ラッピングフィルム、柔軟剤、歯磨き、台所用洗剤、生理用品・用具、キッチンペーパー、犬フード、歯ブラシ、シャンプー、アルミホイル
でした。

上段の折れ線グラフが3月最終週の前年比、下段棒グラフが同週の販売個数を表します。

<2014年3月最終週上位15カテゴリー販売個数と前年比>
2014年3月最終週上位15カテゴリー販売個数と前年比
食品スーパー全国(100店当り)

全体的に言えることは、いずれも日常的に利用するカテゴリーであるため、買いだめしてもいずれ消費してしまうものばかりだということでしょうか。

また、柔軟剤までの上位7カテゴリーとそれ以下では販売個数の水準に大きな差がありました。

今回もこれら上位の顔ぶれに大きな変化はないのではないでしょうか。一つ想定すべき要素としては、今回は10月1日が法施行日であると考えた場合、冬場に季節指数が上がるようなカテゴリー、例えばマスク、ベビー紙オムツ、リップクリーム、ハンドクリーム、さらに鍋・釜類などもチャンスはあるかもしれません。

■駆け込み需要はいつから発生するのか

では、次に駆け込み需要はいつから発生するのか検証したいと思います。前出の15カテゴリー平均の前年比の推移を増税前から増税後前年並みに戻るところまで追いかけてみました。

<日雑上位15カテゴリー平均の前年比推移>
日雑上位15カテゴリー平均の前年比推移
食品スーパー全国(100店当り)

個々のカテゴリーではもちろん前後しますが、15カテゴリーの平均では約2カ月前に動き始め、1カ月前の3月1週目にもう一段階上がり、最終週に150%近い前年比を示した後、1週おいて80%まで下落しています。

またその後、前年比が100に戻るまでに約3カ月かかっていました。

なお、2014年の4月1日を含む週は月曜日が3月31日だったため、前年比の落ち込みは限定的でした。

ちなみに、本年10月1日も火曜日のため、本年も月曜日までのセールを組む必要が出ると思われます。

これらを本年に置き換えると、特需が動き始めるのは2カ月前の8月第1週、本格化するのが9月第1週の可能性が高く、この時期を意識した準備が必要となりそうです。

■RDSについて
http://www.mdingon.com/MdonWeb/service/newrds.html

本稿は、流通現場における製配販それぞれのマーチャンダイジング提案活動を、POSデータ分析を中心にいろいろな角度からサポートするマーチャンダイジング・オン(MDON)が、「POS分析」に関して色々な角度から紹介するコラムです。

マーチャンダイジング・オンが執筆した原稿を、流通ニュース編集部が編集しております。

注:マーチャンダイジング・オン社提供のRDS-POSデータ分析については、記事、写真、図表などを複写、転載などの方法で利用することはできません。

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