ローソンフレッシュピック/10月中旬1200店に拡大、情報共有でサービス進化
2018年10月25日 18:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング
――9月1日付でラストワンマイル事業本部を再編した狙いはなんですか
中村 運営、企画、商品の3つの部署で対応することで、よりスピード感をもってロピックの拡大と利用促進をしてもらうことを狙っています。
――事業を成長させるためのポイントは何ですか
中村 事業を成長させるためには、強いトップダウンと強いボトムアップが健全にぶつかりあうことが重要だと思っています。経営層と現場が同じデータを持つことで、現場からの提案も上がりやすくなります。
現場と同じデータを経営側が知ることで、確信をもって強いトップダウンができるようになります。
経営と現場が同じデータを共有し活用するためのツールとして、ビジネスインテリジェンスシステムのドーモを活用しています。ラストワンマイル事業本部内のロピックに関する業務に関わるメンバーで情報を共有しています。
――どんな情報を共有しているのですか。
中村 速報として、当日の注文件数、注文商品ランキング、日次での予約状況、週次での予約状況、初回利用者、リピーター(2回~5回以上)の利用状況など見ています。
ロピックは新しいサービスなので、どんなチャネルからお客さまがロピックに流入しているのかも分析しています。ウェブから直接なのか、チラシを見て注文しているのか、店舗での紹介なのかなどを見ています。
お店のヘビーユーザーほど、ロピックの受け取りが便利になっています。チラシにはQRコードが付いていますので、QRコードを読み込んだ注文はチラシからの注文だと分かります。
ロピックは、従来の購買体験とは違うことをお客さまにお願いしている。そうすると行動変異を起こしてもらわないといけないので、デジタルの中のユーザーだけではだめなんですよ。
そういった意味で、アナログとデジタルの媒体を使い分けながら、当然、お店というメディアも使って、流入経路を見ている。
――どんな情報に注目していますか
中村 購買履歴に着目しています。初めての利用なのか、何回目の利用なのか、リピーターの数がどう変化しているのかがドーモのシステムでは、簡単に作ることができます。
1回だけ利用するお客さまをリピーターに育成するための施策も打っています。そういった施策がリピーターにつながっているのかの変化も見ています。
――経営に生かせる情報にするために、どんな加工をしていますか
中村 ドーモのシステムでは、バズという機能を使って、具体的なグラフや表単位で、そのグラフに対してどんな分析をして欲しいかを直接、部内のメンバーに問いかけることができます。
従来型のメールのように、どのグラフを分析・加工すればよいのか分からないといったことがありません。
そのグラフに対して、こんな見方はできないのか、こんなことは読み取れないのか、あるいは、この数字はどんな意味を持っているのかを、みんなで考えようみたいなやり取りができます。
情報共有にあたっては、職位ごとに閲覧できる情報に制限かけることもできますが、ラストワンマイル事業本部では制限はかけていません。
経営層が見るテンプレートと現場担当者が見るテンプレートは違いますが、どちらも同じデータを見ることができます。
なので、私がこんなデータが欲しいとか、仮説を問いかけると誰かが対応してくれます。
現場も私が見る情報にアクセスできるし、私も現場が見る細かいデータにアクセスすることができます。「あっ」と思った瞬間に、知りたい情報にアクセスして仮説を作ることができます。
従来ですと、データ活用のために専属スタッフが必要で、そのためのコストがものすごくかかっていました。
データ加工を専門部署に頼むと、データが緻密すぎて、そもそも何のためにデータが必要だったのか分からなくなることもありました。
これまでは、情報を加工するのにかなり手間がかかっていましたが、ドーモのシステムは情報の加工機能があり、短時間で情報が加工できるため、気兼ねなく情報の加工を頼むことができます。
――実際に加工されたデータをどう活用していますか
中村 私は比較的ローデータに近いところも見ます。それは、お客さまがこの時間に何を考えて、こういう購買行動をとったのかということを想像する、逆算のためのデータなんですね。
お客さまが購買をした結果がデータなっているので、そこを読み解くためのツールとして見ています。
リアルタイムな購買データがあれば、我々が仕掛けている新しいサービスに対して、お客さまがどう反応しているのか。
あるいは、朝、昼、夜と使われる時間帯によっても、お客さまの購買商品も変わってきます。
今後、ロピックで取り組もうと思っているタイムマーチャンダイジングとかを考えることができます。例えば、夕食の時間を考える人がこの時間には多いとかが分かれば、それに対応することができます。
――ロピックの課題はなんですか
中村 体験者のリピート率は高いのですが、新しい買い物の仕方を提案するサービスのため、まだ新規顧客の増加が必要です。今後、ロピックの認知度拡大にも注力して、利用者数を拡大していきたいと思います。
――他のECサイトと比べてロピックの強みはなんですか
中村 例えば、大手のネット通販サイトはすべてを品ぞろえする中で、お客さまに選んでもらっています。我々は、販売するアイテムを絞る分、お客さまにレコメンドをタイムリーにできないといけません。
これがまさに小売業のマーチャンダイジングの神髄だと思っています。それをいかに実現するかが差別化のカギだと思います。
ロピックは、生鮮ネットスーパーですが、リアル店舗と同じようにタイムマーチャンダイジングに取り組みます。
経営は、PDCAを高速に回すことだとよく言われます。現場もPDCAを重視せよと言われます。
ただ実態は、計画(Plan)と実行(Do)がすごく強くて、評価(Check)は手間とコストがかかるため検証が弱かった。
だから、計画と実行が強くて評価がすごく弱くなっています。結果的に評価が弱いと、改善(Action)の部分は脆弱なものにしか仕上がらない。
強いボトムアップと強いボトムダウンを実現するには、評価をきちんとする必要がある。
現場と経営がデータを共有し評価をきちんとするから、階層の差がなく議論ができて、結果につながってくると思っています。
■プロフィール
中村雄一郎(なかむら ゆういちろう)
1967年:生まれ
1990年:三菱商事入社
2002年:ローソン出向
2004年:ナチュラルローソン代表取締役
2005年:三菱商事復社
2016年:ローソン出向ホームCVS事業本部本部長補佐
2017年:SGローソン代表取締役(現任)
2017年:ローソン ラストワンマイル事業本部長
2017年:ローソン酒販代表取締役(現任)
2018年:ローソン 理事執行役員ラストワンマイル事業本部長(現任)
■問い合せ
ドーモ
電話:03-6741-7020
info-jp@domo.com
■ローソンフレッシュピック
https://loppick.jp/
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