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ローソンフレッシュピック/10月中旬1200店に拡大、情報共有でサービス進化

2018年10月25日 18:00 / 流通最前線トレンド&マーケティング

ローソンは10月中旬、ローソンの店舗を活用した生鮮ネットスーパー「ローソンフレッシュピック」(ロピック)の対象店舗を東京都内と神奈川県の一部の1200店に拡大した。

ロピックは3月6日に、東京都世田谷区、渋谷区、神奈川県川崎市、横浜市の約200店から開始したサービスで、ローソンの店舗で販売しない生鮮食品やミールキットなどを販売する。

朝8時までに注文すれば、最短当日の14時以降に指定のローソン店舗に商品が届くサービスとなっている。

今回、ロピックを運営するローソン理事執行役員の中村雄一郎ラストワンマイル事業本部長兼ロピック商品部長に、ロピックの現状と今後の展開について語ってもらった。

<中村事業本部長>
中村事業本部長

――ロピックの概要を教えてください。

中村 ロピックは3月にサービスを開始し、8月21日には、サービス対象エリアを、東京都多摩地区、杉並区、中野区、世田谷区、渋谷区、目黒区、品川区、大田区、港区、神奈川県川崎市、横浜市の一部の約700店に拡大しました。

取扱い商品は当初の500種類から入れ替えを含めて、現在600種類に拡大しています。

現在、スーパーの代替となる生鮮で青果50種類・精肉12種類・鮮魚(塩干類含む)10種類、ミールキット約20種類、専門店グルメ約200種類を展開しています。

専門店グルメのうち約110種類は成城石井のこだわりのスイーツや調味料などです。500円以上の注文から利用できます。

<取り扱い商品の一例>
取り扱い商品の一例

――なぜ、自宅に配達しないビジネスモデルを採用したのですか。

中村 私が担当しているラストワンマイル事業本部には、ロピックのほかに、移動販売、オフィス型コンビニのプチローソンも入っています。

ラストワンマイルとは、お店とお客さま、お客さまの住宅、あるいはオフィス・工場などの勤務先、そこの間をいかに埋めるかという考え方で、必ずしもお客さまの玄関先まではありません。

よりお客さまが使い勝手がいい場所、あるいは利用シーンが多そうなところという切り口で考えています。

いくら商品配送の時間が細かく指定できるようになったとしても、自宅で待っている必要があり、お客さまは行動が制限されてしまう。

だったら、近くのローソンに自分で取りに来てもらった方が、お客さまの自由度が高まるよね、というのが、ロピックです。

8月に終了したネットスーパー「ローソンフレッシュ」とは全く違うサービスで、ローソンとして戦略転換をした取り組みです。

――配送コストの上昇などの問題も背景にありますか

中村 宅配クライシスという言葉が出てくるくらい、配送コストが上昇しているのは事実です。

一方で、本当に宅配がお客さまにとって利便性が高いのかを検討すると、世の中の多くの女性が働き、家の外に出るようになっています。

そうすると、家で受け取りをお願いするということ自体が、本当に利便性が高いのかと考え、店舗に商品を取りに行く仕組みを採用しました。これがローソン型ラストワンマイルです。

現時点では、店舗受け取りに特化した生鮮ECサービスはローソンだけだと思います。

<ロピックは店舗受け取りに特化したECサービス>

――基本的な商品配送の仕組みを教えてください。

中村 既存の店舗への物流システムをフル活用しています。ローソンのお弁当工場からお店までという物流に、ロピックの商品を組み込むことで対応しています。

ローソンフレッシュの施設を引き継ぐ形で、神奈川県座間市にEC物流センターを設けて、従来、ローソンで扱っていない商品群を在庫する場所としています。

そこでお客さまの注文に応じて、注文ごとにパッキングをして、ローソン チルド ディストリビューション センター(ローソンCDC)に集約し、店別・コース別に配送するお弁当などと組み合わせることで、各店舗への配送を行っています。

――EC物流センターは新設したのですか。

中村 EC物流センターは既存のローソンの物流センターの一角に作っています。チルド帯の商品のみを扱っているので、それほど多くの面積は必要なく、物流センターを新設するような大型投資はありません。

首都圏2000店体制に向けて、物流体制の整備も検討しています。ローソンのお弁当は11時30分ころにはローソンCDCを出発します。

お弁当の物流の流れとロピックの物流の流れを短い時間で合流させるため、チルドの配送センターに比較的近いところで在庫拠点を持つ必要があります。

座間だけでは首都圏はカバーできないので、東京・埼玉や湾岸エリアなどの既存物流センターの一角にいくつかのEC物流センターを検討しています。

――「ローソンフレッシュ」は約8000種類を展開していました。ロピックの取扱商品数はどこまで拡大するのですか。

中村 利用頻度が高い商材という視点で、品ぞろえを考えています。あまり動きがないロングテールの商品は、今回は対象にしていません。

どちらかというと、すぐ料理に使えるとか、ごはんを作るのに出現頻度が高い商品を選定しています。

在庫管理の観点もありますが、ロピックのキーワードとして「時短やすぐ買い物できる」というものがあります。

アプリの中で、たくさんの商品を選ぶというのは、買い物するだけで結構、時間がかかってしまうので、「パッパッと買い物できる品ぞろえ」を意識しています。今の600種類が適正なのかを、お客さまの声も聴きながら、検証しているところです。

基本的に、ローソンの店頭にない商品を扱っています。商品分類として重なるものはありますが、単品が重なることはありません。例えば、バナナは店頭でも扱っていますが、ロピックのバナナとは違う商品です。

<ロピックの概要>
ロピックの概要

――ロピックで好調な商品は、どんな商品ですか。

中村 ミールキットが好調です。8月の段階で売上高の約35%がミールキットでした。ミールキットは生協さんやオイシックスさんなどが展開していますが、まだ、世の中ではあまり知られていない商品です。

マーケティングの中で、ミールキットに対する関心が高い割には、ミールキットの商品に対する認知度はまだ低いという結果がでています。

家事にかける時間を短くしたいという時短の流れからすると、ミールキットの商品内容をお知らせできれば、お客さまはもっとミールキットを利用するだろうと見ています。

ロピックの注文は税込500円以上からなので、ミールキットひとつであっても注文できます。

これまでの食品スーパーで販売しているミールキットは、肉と野菜をパッケージ化しレンジアップで作る商品が中心で、フライパンでちょっと炒めるだけというような商品が少ない。

ミールキットは、他の流通大手も注目している商品なので、ミールキットの認知度が拡大し、ロピックにとっても追い風になると見ています。

やっぱりひと手間、調理を加えた料理を家族に出したいという人に対して、ミールキットはマッチしています。

でき合いの惣菜では、味付けは変えられませんが、ミールキットであれば味つけを調整でき、我が家の味を作れるといったメリットもあります。

お客さまから「主人がミールキットに気づかず、最近、料理のバラエティーが増えたね、といってくれる」といった声も上がっています。

ミールキットは当初は2種類で展開し、8月に15種類に拡大しました。現在、ロピックオリジナルのミールキット「キッチント」とオイシックスの「キットオイシックス」の商品を合わせて約20種類のミールキットを展開しています。

<ミールキットの一例(旨みが効いた海鮮八宝菜キット)>
ミールキットの一例(旨みが効いた海鮮八宝菜キット)

――ロピックの利用者はどんな人ですか

中村 30代から50代の女性が利用者の半分以上を占めています。男女比率では、女性70%、男性30%となっています。男性は、単身の方もいますが、奥さんに頼まれて注文している人もいると思います。

推定ですが、働く女性だけでなく、子育てに忙しい人、趣味、習い事やスポーツクラブに通っている人など、仕事だけでない、やりたいことを実現する忙しさの中で、今日はちょっと、時短料理をしたいというニーズに対応していると思っています。

注文の時間帯では、土日は日中の注文もありますが、平日は夕方19時から24時の間がボリュームゾーンとなっています。翌日が雨の予報の時は、注文が増えており、晴れの日よりも10%から20%増えています。

家事の合間や家事を終えた後に、注文されている人が多いと思います。

ロピックの商品は、その日の夕食か、翌日の朝食に利用する人が多いようです。ロピックの商品開発でも、夕食や朝食を意識した取り組みを行っています。

元々コンビニの強いところは即食というところですが、これで全部のお客さまのニーズを捉えられているわけではないので、ミールキットで対応しています。

――時短ニーズに対してどんな対応をしていますか

中村 買い物にかける時間の短縮も時短の一部です。わざわざスーパーまで買い物に行かなくていい、近くのローソンで受け取ればいいということをお客さまがメリットとして感じていると思います。

スーパーは広いので、買いまわっている時間、レジ待ちの時間をトータルで見ると結構、時間がかかっている。お客さまによっては、わざわざ車でガソリン代を払っていっている人もいます。

取扱いアイテム数を絞り込むことで、注文時間を短縮し、かつミールキットで調理時間も短縮し、調理にともなうゴミも削減することで後片付けの時間も短縮しています。

料理時間だけでなく、買い物から調理、後処理までを含めて時短を実現しています。ロピックでは、商品はピックアップされているので、買いまわる必要がなく、店舗への往復時間だけです。

最近は、核家族化が進み、丸々一個の野菜を使いきれないといった声もあります。使いきれない野菜を捨てる罪悪感もなくなります。

<旨みが効いた海鮮八宝菜キットの調理例>
旨みが効いた海鮮八宝菜キットの調理例

――実店舗への波及効果はどうですか

中村 これまでのデータだと、商品を店舗に受け取りに来る一定数の人が、店舗で商品を購入しています。意外とファーストフードの商品が売れています。

ミールキットは意図的に、野菜が多めのメニューをそろえていますので、揚げ物を加えることで夕食を彩るみたいなお客様がいると思います。

店舗でも商品を購入してもらう取り組みは、これからの仕掛けも必要です。

ロピックの利用者は、既存のローソンの利用客のほか、これまでコンビニを利用しなかった人も結構います。

ロピックの利用者がコンビニに行くことで、ローソンにはあれもある、これもあると、品ぞろえを知ってもらう、きっかけになると思っています。

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